21/09/06
意外な盲点?年金から天引きされる5つのお金
老後といえば、現役時代とは異なり年金が生活の基盤になります。しかし、その年金も年金支給額がそっくり金融機関の口座に振り込まれてくるわけではありません。いざ年金をもらうようになってから、こんなはずじゃなかったと後悔しないように、年金から天引きされるお金について学んでおきましょう。
知らなかったでは済まされない老後のお金
いきなり老後をイメージしようと思っても、実感がわかないのではないでしょうか。総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2019年」によれば、高齢夫婦無職世帯では平均毎月27万929円の支出がありますが、そのうち3万982円が非消費支出です。つまり、税金と社会保険料などが支出の1割強を占めているのです。
年金生活になっても、税金や健康保険料、介護保険料を納付しなくてはなりません。一定の年金収入がある場合には、税金や保険料をきちんと納入してもらうために、年金から天引きされるしくみになっています。年金からあらかじめ差し引かれて支払う方法を「特別徴収」といいます。これに対して、納税通知書をもとに支払う方法を「普通徴収」といい、納付書や口座振替などで納付します。
年金から天引きされるお金には、次の5つがあります。天引きされる時期は、人により異なりますが、おおよそ以下のとおりです。
●年金から天引きされるお金
筆者作成
年金から天引きされるお金1:年金にかかる所得税
公的年金等にかかる所得税は、65歳未満と65歳以上で取り扱いが異なります。公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1000万円以下の場合には、65歳未満では108万円(公的年金控除60万円+基礎控除48万円)を超える人、65歳以上では158万円(公的年金控除110万円+基礎控除48万円)を超える人は、所得税や復興特別所得税が年金から天引きされます。合計所得金額によっては、公的年金控除の額が異なるので注意しましょう。なお、年金をもらいながら給与をもらっている場合には、年金以外の所得にかかる税額は、年金から天引きされません。
年金から天引きされるお金2:年金にかかる住民税
4月1日現在で65歳以上、年額18万円以上の老齢年金が支給されていて、前年中の公的年金等所得に住民税が課税されている場合には、年金から住民税が天引きされます。控除対象配偶者や扶養親族がいない場合、公的年金の収入が155万円以下ならば住民税はかかりません。控除対象配偶者や扶養親族がいる場合は、155万円を超えても非課税になることもあります。住民税については、国民健康保険料のように年金をもらっている人の意思で、公的年金からの天引きを中止することはできません。
年金から天引きされるお金3:国民健康保険料
国民健康保険は、75歳未満の退職者や自営業者などが加入する公的健康保険で、お住まいの地域の自治体が保険者として運営しています。保険料は市区町村で異なります。国民健康保険では、世帯主だけではなく、妻や子どもも被保険者になるので、それぞれ計算したものを世帯単位で合算し、世帯主が納付します。
世帯主の公的年金の受給額が年額18万円以上で、国民健康保険の加入者全員が65歳以上75歳未満の世帯では、原則世帯主に支給される公的年金から国民健康保険料が天引きされます。ただし、介護保険料と国民健康保険料の合算額が、天引きの対象となる年金受給額の2分の1を超えない場合に限ります。
お住まいの自治体によっては、年金天引き(特別徴収)ではなく、口座振替によって年4回に分けて納付する普通徴収を選ぶことできる場合があります。年金天引きでは、受給者以外の社会保険料控除とすることはできませんが、納付書や口座振替の場合、実際に負担した人の社会保険料控除とすることができます。国民健康保険料の納付を社会保険料控除として年末調整や確定申告に利用したい場合などは、取り扱いが異なるので、注意しましょう。
年金から天引きされるお金4:後期高齢者医療保険料
後期高齢者医療制度は、75歳以上のすべての後期高齢者が対象の公的医療制度で、都道府県単位の後期高齢者医療広域連合が運営しています。保険料は、都道府県ごとに条例によって定められています。保険料の計算は個人単位でされます。
年間の年金支給額が18万円以上の場合には、年金から天引きされます。後期高齢者医療保険料は、原則年金天引きで納めるのですが、年度の途中で75歳になった場合には、条件が整い次第、年金天引きになります。誕生日に応じて年2回、天引きの開始月を設けている自治体もあります。また、年金担保による融資を受けている場合や所得更正で保険料が減額になる場合などは、年度の途中でも年金天引きが中止されることがあります。
年金から天引きされるお金5:介護保険料
公的介護保険は、原則として市区町村に住所を有する40歳以上のすべての人を被保険者とし、市区町村が保険者となって運営します。会社員などの保険料は労使折半ですが、退職後は全額自己負担になります。介護保険料は市区町村で異なっています。保険料は、住民税の課税状況と収入金額で決まり、所得区分は原則9段階とされていますが、保険料率を含め、自治体が条例で独自に定めることができます。
65歳以上で年金額が年18万円以上の人は、年金から介護保険料が天引きされます。だたし、年度の途中で65歳になった場合、他の自治体から転入してきた場合、保険料が変更になった場合などは、納付書や口座振替で介護保険料を納めることになります。
まとめ
年金から天引きされる税金や保険料は、特別徴収でも普通徴収でも納める金額は変わりません。所得税以外の住民税、国民年金保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料は、年金の支給額が年額18万円以上であれば、原則年金から天引きされます。
しかし年金から天引きされるどうかは、それぞれにおいて細かな要件があり、全ての要件にあてはまらないと年金天引きされないことになっています。また、年度の途中で納付方法が変更になる場合もあります。高齢になると本人の理解や管理が不十分なことも多いので、支払い漏れを防ぐためには、周囲の方が手続きに気を配る必要があるでしょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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