22/07/19
2023年終了予定の3つの「贈与の特例」 活用したいのはこんな人
贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。贈与税は通常、年間にもらった財産が110万円を超えると発生します。しかし、「贈与の特例」を利用すれば、110万円を超える財産をもらっても税金がかかりません。
今回は、3つの贈与の特例について詳しく説明します。いずれも現状、2023年終了見込みですので、これから贈与を考えている方は早めに手続きするといいでしょう。
年110万円を超える贈与でも税金がかからない「贈与の特例」
贈与税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に、贈与で受取った財産にかかる税金です。贈与税は、1年間で受取った財産の合計額から110万円を差し引いた後の金額に、贈与税の税率を乗じることで計算できます。このため、贈与した金額が110万円までであれば、贈与税はかかりません。この110万円のことを「贈与税の非課税枠」ともいいます。
贈与税の非課税枠を超える財産を受取った場合は、贈与税がかかります。しかし、子や孫が「教育資金」「結婚・出産・育児資金」「住宅取得資金」の資金をもらう場合には、一定額までであれば贈与税がかからない特例制度があります。
贈与の特例1:教育資金の一括贈与の非課税制度(2023年3月31日まで)
教育資金を、直系尊属である父母や祖父母などから子や孫に贈与した場合、一定額まで贈与税がかかりません。
教育資金の一括贈与の非課税制度で非課税になる贈与額は、
・学校等に支払われる資金は1500万円まで
・学校等以外のもの(学習塾や習い事など)に支払われる資金は500万円まで
となっています。
教育資金の一括贈与の非課税制度の対象となるのは、「2013年(平成25年)4月1日から2023年(令和5年)3月31日」の間に行われた贈与です。
●教育資金の一括贈与の非課税制度を利用するための要件
教育資金の一括贈与の非課税制度を利用するには、次の要件を満たす必要があります。
①贈与を受けた人(子または孫)が金融機関に「教育資金非課税申告書」を提出し、教育資金専用口座を開設すること
②贈与を受けた人(子または孫)の年齢が30歳未満であること
③贈与を受けた前年、贈与を受けた人(子または孫)の所得が1000万円以下であること
④教育資金専用口座からお金を引き出すとき、教育費であることを証明する領収書など
を銀行に提出すること
教育資金専用口座から教育資金を引き出す際、領収書などを提出するのは、結構な手間と思うかもしれません。とはいえ、教育資金の一括贈与の非課税制度を利用すれば、本来の非課税枠となる110万円の何倍もの大きなお金が非課税となります。手順をしっかり踏まえ、贈与の特例を受けるために必要な手続きを行いましょう。
贈与の特例2:結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度(2023年3月31日まで)
結婚・子育て資金に充てる資金を、直系尊属である父母や祖父母などから子や孫に贈与した場合、一定額まで贈与税がかかりません。
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度で非課税になる贈与額は、
・結婚に関する資金は300万円まで
・子育てに関する資金は1000万円まで
となっています。
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度の対象となるのは、「2015年(平成27年)4月1日から2023年(令和5年)3月31日」の間に行われた贈与です。
●結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度を利用するための要件
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度を利用するには、次の要件を満たす必要があります。
①贈与を受けた人(子または孫)が金融機関に「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出し、専用の口座を開設すること
②贈与を受けた人(子または孫)の年齢が18歳以上50歳未満であること
③贈与を受けた前年、贈与を受けた人(子または孫)の所得が1000万円以下であること
④結婚や子育て資金専用口座からお金を引き出すとき、結婚や子育てに関する支出であることがわかる領収書などを提出すること
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度は、先述の教育資金の一括贈与の非課税制度と同じ手順で手続きを行います。どちらの贈与の特例も条件を満たすのであれば、両方利用することで相当な節税が可能なのではないでしょうか。教育資金、結婚・子育て資金というように、贈与したお金が使える範囲は限定的ですが、贈与する父母・祖父母にとってみれば、渡したお金が本来の目的に利用される点で、安心感があるでしょう。
贈与の特例3:住宅取得等資金の贈与の非課税制度(2023年12月31日まで)
住宅を新築・取得、または増改築等するための資金を、直系尊属である父母や祖父母などから子や孫に贈与した場合、一定額までは贈与税がかかりません。
住宅取得等資金の贈与の非課税制度で非課税になる贈与額は、
・省エネ等の住宅であれば1000万円まで
・省エネ等以外の住宅であれば500万円まで
となっています。
ちなみに、省エネ住宅とは、断熱性、耐震性・免震性などに優れた住宅で、一定基準を満たしているものをいいます。
住宅取得等資金の贈与の非課税制度の対象となるのは、「2022年(令和4年)1月1日から2023年(令和5年)12月31日」の間に行われた贈与です。
●住宅取得等資金の贈与の非課税制度を利用するための要件
住宅取得等資金の贈与の非課税制度を利用するためには、主に次の要件を満たす必要があります。
①贈与を受けた人(子または孫)の年齢が18歳以上であること
②贈与を受けた人(子または孫)のその年における所得が2000万円以下(新築等をした住宅用の家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1000万円以下)であること
③2009年(平成21年)から2021年(令和3年)までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の贈与の非課税制度」を利用していないこと
④配偶者や親族など、特別の関係がある人から取得した住宅ではないこと
⑤住宅の贈与を受けた翌年3月15日までにその住宅に住むこと(または、同日後に住むことが確実であること)
人生の三大資金は「教育費・住宅費・老後資金」です。もし、贈与の特例を受けて、特に住宅費、教育費の負担を減らすことができれば、残りの老後資金を早めに準備することができます。ですから、親や祖父母から贈与が受けられそうな方、あるいは子や孫に贈与をしようと考えている方は、贈与の特例が使えるうちに積極的に活用したほうがいいでしょう。
まとめ
今回紹介した贈与の特例は、いずれも現状は2023年に相次いで終了する見込みです。しかし、贈与の特例の期限は、これまで延長されてきました。そのことを考えると、今後ももしかしたら再度贈与の特例の期限の見直しがあるかもしれません。
贈与の特例は、節税効果の高い制度です。もし贈与の特例の利用を検討しているのであれば、早々に手続きをするようにしましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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