22/09/11
年金月20万円もらうには、年収はどれくらい必要? 年収400万円の人が月20万円もらうには
将来受け取れる年金の額は、誰もが心配していることの1つです。年金の受給額には、私たちの年収が大きく関わっています。年収が少ないと、老齢年金を月20万円受け取ることはできないのでしょうか? そこで今回は、年収400万円の人を例に、年金の加入期間を延ばしたり、繰り下げ受給をしたりして、年金を月20万円受け取れるかどうかを調べてみました。
年金を月20万円受け取れる人の年収はいくら?
「老後は生活費がいくら必要になるの?」「年金はいくらもらえる? 足りるの?」生活費や年金は多くの人が気になっているのではないでしょうか。厚生労働省が公表している「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2020年度での老齢年金の受給権者平均年金月額は、14万4366円(老齢厚生年金+老齢基礎年金)という結果が出ています。また、生命保険文化センターが実施した「生活保障に関する調査/2019年度」によると、夫婦で老後生活を送るうえで最低日常生活費として必要な額は平均22.1万円(月額)という調査結果も出ています。夫婦で年金を合わせれば最低日常生活費の額は満たせるかもしれません。しかし、ゆとりのある老後生活を望むなら、年金だけでなく別途貯蓄などで備えておいたほうがよいかもしれません。
そこで、月20万円の年金を受け取るには、年収がいくら必要なのかを調べてみました。
<月20万円の年金・年収計算の基本的な条件>
・対象者は会社員、配偶者なし、扶養家族なし
・2003年4月以降に就職
・厚生年金保険の加入期間は37年になる見込みとして試算(月数444月)
(20歳から3年間は国民年金に加入。通算加入期間は40年)
・満額の老齢基礎年金を年額77万7800円とする→月額:6万4816円とする
・年金を月20万円もらう場合に必要な老齢厚生年金額:月額13万5200円→年額162万2400円
●老齢厚生年金の報酬比例部分の年金額を試算
平均標準報酬額(X)×5.481/1000×2003年4月以後の被保険者期間の月数444月=162万円
X×0.005481×444月=162万円
X≒66万5690円
ただし、厚生年金保険における標準報酬月額の上限は65万円。
65万円で報酬比例部分を計算すると、158万1817円⇒月額13万1818円
老齢基礎年金の月額6万4816円+老齢厚生年金の月額13万1818円=19万6634円
この場合、約19.7万円の年金を受け取れることになります。
・年金を月20万円受け取れる年収
標準報酬月額65万円の場合、標準月額は63万5000円~66万5000円となるので、
63万5000円×12=762万円
試算の結果、年金を月20万円受け取る場合の年収は、【約762万円】になることがわかりました。国税庁が公表している「民間給与実態統計調査(2020年分)」によると、平均給与(年収)は433万円(男性532万円・女性293万円)という結果が出ています。また同調査によると、年収700万円超の人は全体の13.6%(男女計)という結果も出ています。年金が月20万円以上になる人は、会社員の2割弱に限られるということですね。
年収が低いと、年金月20万円は不可能なのか?
先ほどの試算で、年金を月額20万円受け取るには、約762万円の年収が必要になることがわかりました。この年収を超えるのは会社員の約2割弱といわれますが、年収が低い人は、月額20万円の年金を受給するのは不可能なのでしょうか?
実は、年金の受給額を増やせる方法はあります。その方法は、「厚生年金の加入期間を増やすこと」と「年金を繰り下げ受給すること」です。
ではここで、年収400万円の人が厚生年金の加入期間を増やし、年金の繰り下げ受給を併用することで、受給できる年金額がどれくらい変わるのか試算してみましょう。
●年収400万円の人が厚生年金の加入期間を増やす場合
<設定する条件>
・23歳で就職
・学生の期間(20歳~22歳)は国民年金に加入(国民年金には40年間加入)
・老齢基礎年金の満額は77万7800円(月額6万4816円)とする。(※2022年度の満額)
・平均標準報酬額を34万円とする
○60歳まで働く場合 ※厚生年金加入期間は37年(444月)
・受給できる老齢厚生年金
34万円×0.005481×444月=82万7412円
・老齢厚生年金+老齢基礎年金
82万7412円+77万7800円=160万5212円 【月額:13万3767円】
○65歳まで働く場合 ※厚生年金加入期間は42年(504月)
・受給できる老齢厚生年金
34万円×0.005481×504月=93万9224円
・老齢厚生年金+老齢基礎年金
93万9224円+77万7800円=171万7024円 【月額:14万3085円】
○70歳まで働く場合 ※厚生年金加入期間は47年(564月)
・受給できる老齢厚生年金
34万円×0.005481×564月=105万1037円
・老齢厚生年金+老齢基礎年金
105万1037円+77万7800円=182万8837円 【月額:15万2403円】
上記の試算では、年収400万円では厚生年金に加入して働く期間を延ばしても、受給できる年金額は20万円に満たないことがわかりました。
では、さらに年金額を増やす方法「繰り下げ受給」を併用したら、受給額はどのように変わるのか見ていきます。
●年収400万円の人が厚生年金の加入期間を増やし、繰り下げ受給を併用する場合
上記で試算した年金額が、70歳まで繰り下げ受給した場合、どのように変化するかご紹介します。
・70歳まで年金を繰り下げる場合の増額率:42%
○60歳まで働き、年金は70歳から受給
・老齢厚生年金+老齢基礎年金
82万7412円+77万7800円=160万5212円
・70歳から繰り下げ受給
160万5212円×1.42=227万9401円 【月額:18万9950円】
○65歳まで働き、年金は70歳から受給
・老齢厚生年金+老齢基礎年金
93万9224円+77万7800円=171万7024円
・70歳から繰り下げ受給
171万7024円×1.42=243万8174円 【月額:20万3181円】
○70歳まで働き、年金は70歳から受給
・老齢厚生年金+老齢基礎年金
105万1037円+77万7800円=182万8837円
・70歳から繰り下げ受給
182万8837円×1.42=259万6949円 【月額:21万6412円】
年収400万円では働く期間を延ばしても、年金額は月20万円に届きませんでした。けれども65歳または70歳まで働く場合では、年金を70歳から繰り下げ受給することで月20万円の年金受給を実現できることがわかりました。
会社員の場合は、60歳退職を65歳に延ばし、可能であれば70歳まで厚生年金に加入して働くことで年金額を増やすことができます。さらに、繰り下げ受給を併用することで、さらに年金額を増やせます。今では最大75歳まで繰り下げ受給することが可能です。ご家庭のライフプランにあわせて、年金の受給時期を検討してみてはいかがですか?
iDeCoで年金を補てんする方法も
月20万円もらえる年収に届かなくても、年金を補てんできる制度や貯蓄を活用する方法もあります。その方法の1つが「iDeCo(イデコ)」です。iDeCoは掛金全額が所得控除になり、運用益は非課税、受取時も税制優遇を受けることができます。受け取る年金にかかる税金を減額することができるので、年金の補てんに活用したい制度の1つといえます。
たとえば、企業年金のない企業に勤める人が、30歳から60歳までiDeCoに満額(掛金月額2万3000円 年額27万6000円)加入するとします。
これを年利3%で運用して、掛金が1340.3万円になるとします。
これを60歳から20年間、年金方式で受け取ると、月額約5万5800円を補てんすることができます。
また、iDeCoの受給開始年齢は60歳~75歳までの間で選択できるので、公的年金の受給状況にあわせて受給をアレンジすれば、年金等収入を月20万円に近づけることも可能です。
年金を補てんする制度を活用しよう
老後も安心して生活するためには、受け取れる年金に頼るだけでなく、働く期間を延ばす、あるいは繰り下げ受給をするなどの工夫や、iDeCoなどを利用して年金の不足分を補うことを考えたほうがよいでしょう。また、iDeCoのほかにも、税制優遇が受けられる制度はあります。たとえば、年間40万円を最長20年間、非課税で運用できる「つみたてNISA」を利用してもよいでしょう。
現在満55歳未満の人で、お勤めの会社が財形貯蓄を実施しているのであれば、貯蓄残高(※財形住宅貯蓄とあわせた残高)が550万円までは非課税になる「財形年金貯蓄」を利用する方法もあります。年金の補てんの方法は通常の預貯金や運用でもよいでしょう。大事なのは、何かしらの方法で年金の補てんを実行すること。そのためには、毎年送られてくる「ねんきん定期便」で自分は年金をいくら受け取れる見込みなのかを確認することを忘れないようにしたいですね。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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