21/07/23
退職後に訪れる「3つの支払い」放置で起こり得る最悪の事態
社会保険料や税金の支払いは、会社員であれば給与から天引きされているため、普段からあまり意識することは少ないと思います。そんな中、もし突然会社を辞めることになった場合、健康保険や年金などの社会保険はどうなるか、ちゃんと理解できていますか?
すぐに転職先に移れればよいのですが、退職から再就職までに期間があく場合、年金や保険などの手続きが発生します。忘れていて「あとで気づいた」などということがないように、退職後の手続きはしっかり行っておきましょう。
退職後の健康保険は国民健康保険に切り替わる
会社員として働いているときは、会社から健康保険証の支給を受けているケースがほとんどかと思います。会社を辞めると、この健康保険証は返却することになります。その後、退職から再就職までの期間に病院を受診する際には、健康保険証が必要になりますので、会社を退職した場合には、住んでいる市町村の役所の窓口で手続きをして、国民健康保険に加入することになります。
この国民健康保険料は、前年度の収入や住んでいる自治体により保険料が変わってきますので、会社勤めの頃に払っていた健康保険料よりも金額が上がるかどうかは一概には言えません。ですが、会社の健康保険に加入する場合は、健康保険料を会社が半額負担してくれるのに対し、国民健康保険料は全額が自己負担となるため、これまで払っていた健康保険料よりも多くなる可能性は高いです。
また、会社を退職した後も、元の会社の健康保険に2年間加入することができる任意継続制度があります。この場合でも、いままでの会社による半額負担はなくなるため、これまでの2倍の金額の保険料を自分で払うことになります。
国民健康保険への加入が良いかか元の会社の任意継続制度を利用するのが良いかは収入の状況や住んでいる自治体の保険料率によっても変わってくるため、役所の国民健康保険の相談窓口に自分の保険料がどのくらいかを問い合わせた上でどちらにするかを選択するのが良いでしょう。
退職後の年金は国民年金に切り替わる
会社に雇用されている場合は、厚生年金保険に加入していた方がほとんどだと思います。これが国民年金保険に切り替わることになりますが、国民年金保険の保険料は1ヶ月当たりの保険料は1万6610円(2021年度)で定額です。
一方、厚生年金保険は保険料率が18.3%と一定ですが、収入によって支払う金額は変わります。例えば標準報酬月額30万円だとすると、その18.3%は5万4900円ですが、この場合も会社が半額を負担してくれているため、本人負担分は2万7450円です。
さらに、厚生年金は将来年金を受給する際に、報酬に比例した分の上乗せを受けることができます。つまり、国民年金保険になると、厚生年金保険料よりは支払う金額が少なくなるケースが多いですが、トータルでの損得を考えると、毎月の保険料は多くても厚生年金に加入できていたほうが将来的にはお得といえるのです。
退職後の住民税は後払いシステム
住民税は前年の所得に対してかかる税金です。会社員時代は毎月の給与から天引きされるため、あまり意識していない方が多い税金のひとつですが、退職した後は自分で納める必要があるため、その金額に驚かれる方も多いようです。
もちろん、退職することによって納付する金額が増えることはないのですが、退職したあと再就職せず、収入がない期間に納付書が送られてくると支払いに苦労するケースがあります。住民税を自分で納める場合、毎月ではなく3ヶ月分をまとめて納付することが多いため、一度に納める金額がさらに高額な印象を受けてしまうことも要因のひとつに考えられます。会社員時代と金額は変わっていませんが、収入が減ることで支払いに苦労する可能性があることをしっかりと理解しておきましょう。
保険料や税金を滞納するとどうなる?
会社を退職した後、しばらく無職で無収入の期間が続いたとしても、上記保険料や税金の支払い義務が生じますが、何らかの事情で未払いの状態になることを滞納といいます。
では、保険料や税金を滞納するとどうなるのでしょうか。
まず、期限を過ぎても支払いが確認できないときには、定められた期日までに支払うように督促状が自宅に送られてきます。督促状も放置して、そのまま滞納を続けていると、保険料を納付するように電話や文書による催告がなされます。催告は、自宅に自治体の職員が訪ねてくるケースもあります。
それでも納付を拒んだ場合には、本人・世帯主・配偶者等へ財産調査や差し押さえ予告がされます。財産調査から預貯金や不動産、家財等が明らかになれば差し押さえが執行され、収納される流れになっています。
また、滞納している保険料や税金には督促状に記載された納付期限を過ぎた場合、延滞金が発生します。原則として、延滞した日数に応じて延滞金が加算されるという計算方法ですので、納付が遅れれば遅れるほど、ペナルティの金額が増えてしまいます。
もし、何らかの理由で支払いが難しい場合には、督促状や催告を放置するのではなく、住んでいる自治体の窓口に一度相談をしてみましょう。分納相談に応じてくれる場合がありますので、きちんと事情を説明し、手続きをしっかりとしておけばさらに安心です。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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