21/06/17
60歳で退職すると、65歳の年金スタートまでにどのくらいのお金が必要か
退職金が期待できないと言われている中で、老後の備えに不安を感じている人も多いのではないでしょうか。退職後のことを若いうちから考えることは非常に大事ですが、多くの人は年金でどう暮らしていこうか、年金をもらったうえで不足する金額をどう補うべきか、ということで頭がいっぱいで、60歳で定年を迎えてから年金受給開始までの数年間のことを考慮していない人も少なくないのではないでしょうか。そこで今回は、60歳で退職した場合に年金の受給開始までいくら必要になるかを見ていきたいと思います。
60歳で退職すると年金スタートまでいくら必要?
一般的には、60歳で退職して65歳で年金受給開始というプランを検討している人が多いと思います。しかし、60歳で仕事を引退して65歳の年金受給開始を待つとなると、約5年間にわたって収入がまったくない期間が続いてしまうことになります。この無収入期間をどのように乗り切るかがその後の老後生活の豊かさにも大きく影響してきます。
総務省の家計調査(家計収支編 二人以上の世帯(2020年))によると、世帯主が60~64歳の無職世帯の、1世帯あたりの1か月の可処分所得は19万9910円、消費支出は27万2108円となっています。この時点で▲7万2198円のマイナスになっているのです。
つまり、5年間は毎月7万円以上の赤字を積み重ねながら生きることになるわけですよね。12か月×7万2198円×5年間=▲433万1880円となりますので、約430万円の赤字をこの5年間で積み上げてしまうことになります。
しかもこの可処分所得の計算前提となる収入の中には、同居家族の収入や仕送り金、受贈金、家賃収入などさまざまな収入が含まれているため、そうした収入がない家庭は可処分所得をもっと少なく見積もるべきと言えます。
仮に、預貯金の取り崩しだけでこの5年間を過ごすとしたら、単純計算で、1か月あたりの生活費としての消費支出が25万円の場合は5年間で1500万円、1か月あたりの消費支出が30万円の場合は5年間で1800万円が必要になります。これでは老後生活を迎える前に預貯金を使い切ってしまう、と思う方も少なくないはずです。
定年後も働き続けることのメリット
この事態を回避するために、60歳で退職するのではなく60歳以降も働き続けるという選択肢があります。
せっかく60歳の定年まで働いたのに、そこからまだ働くの?と思う方もいるでしょう。ですが、そもそも定年制というのは明治時代に始まったと言われており、その頃の平均寿命は男性で43歳前後。明治時代に定められた、記録に残っている最古の定年は55歳だったと言われているため、実質は終身雇用を意味していたのではとも言われているようです。そう考えると、私たちの寿命が延びたのに60歳で定年退職というのも不釣り合いな気がしてきますよね。
定年後も働き続けた場合、3つのメリットが考えられます。
●メリット1:貯蓄を取り崩す必要がない
1つ目は、生活費が収入で賄えるために貯蓄を取り崩す必要がないということです。定年後も働く場合、嘱託社員として働くために収入が減るという声もありますが、それでも収入があることで生活費は十分賄えます。生活費が賄えるのであれば老後の備えとして貯金を温存することができますよね。
●メリット2: 老後の厚生年金が増える
2つ目は、60歳以降も厚生年金に加入して厚生年金保険料を支払い続けておけば、将来受け取れる老齢厚生年金の金額を増やすことができるということです。
また、厚生年金に加入していない人も、条件を満たせば国民年金の任意加入制度を利用することができます。任意加入制度とは、60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たしていない人や納付済期間が「40年」以上ないために老齢基礎年金を満額受給できない人が60歳以降も国民年金に加入できる制度のこと。老齢基礎年金を増やすことができます。
●メリット3:高年齢雇用継続給付金が受け取れる
3つ目は、高年齢雇用継続給付金が受け取れるということです。60歳以降の賃金が60歳時点の賃金の75%未満となっている場合に、給付金が受け取れます。たとえば、60歳時点で月30万円の賃金を受け取っていたのに、60歳以降に月20万円まで賃金が下がった場合、月1万6340円の給付金が受け取れます。賃金の下落分を穴埋めできるほどの金額ではないにしろ、給付金が受け取れるのはうれしいですよね。
まとめ
いかがでしたか。今回は、60歳で退職した場合に年金受給開始までいくらかかるのかというポイントについて見てみました。老後の生活と言うとつい、年金受給開始後の生活を思い浮かべてしまいがちですが、60歳で退職すると年金受給開始まで5年もあるのです。ここをしっかり考えておかないと痛い目に遭いますので、早めに準備しておきましょう。
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大塚 ちえ ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員Ⅰ種
新卒から証券会社一筋で働く、現役アラサー金融ウーマン。スポーツと音楽が趣味。金融機関勤めで得た知識と経験で、キャリアやお金、結婚・恋愛のことなどいろんな女性の悩みに向き合う。現代日本に生きる働きすぎな女性にエールを送る。
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