21/06/10
国民年金と厚生年金はどう違う? もらえる金額、保障、仕組みを比較
「年金は本当にもらえるの?」と思ったことはないでしょうか。少子高齢化が進む状況の中で、年金をもらえる年齢が上がったり、年金額も減ったりするかもしれないという不安を抱えている方は多いようです。その一方で、年金制度については知らないことばかり…。
受取る年金は、加入していた年金制度で異なります。
今回は、公的年金の国民年金と厚生年金の違いと、将来のもらえる年金の関係をご紹介します。
公的年金の制度と種類
国の社会保障制度である公的年金は、大きく2種類あります。20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」と70歳未満の会社員や公務員が加入する「厚生年金」です。公的年金は、任意加入ではなく、法的な要件を満たしたときには本人の意思に関わらず、当然に加入者になります。厚生年金は、国民年金に上乗せされて給付される年金なので、2階部分の年金だといわれています。
国民年金では加入者のことを「被保険者」と呼びます。国民年金の被保険者は、第1号・第2号・第3号の別に分類されています。
●被保険者の種類
第1号…自営業・フリーランス・学生・失業中の人、任意加入者など
第2号…会社員・公務員など
第3号…会社員・公務員などに扶養されている配偶者
働き方や職業によって、加入する公的年金の種類や条件が違います。また、公的年金の他に、任意で加入することのできる私的年金もあります。
●公的年金と私的年金
筆者作成
図内の緑で示した「国民年金」「厚生年金保険」が公的年金、残りは私的年金です。今回は、国民年金についてお話しします。
国民年金の老齢給付はどんな制度?
まず国民年金について見ていきましょう。国民年金の保険料は一律で、2021年度は月額1万6610円です。年度によって納める保険料は変わります。
保険料は、第1号被保険者と任意加入者が納めます。この国民年金の保険料は自分で納める必要があり、納付期限は翌月末日です。たとえば6月分の保険料は7月末日までに納める必要があります。納付方法は現金納付のほか、口座振替、クレジットカードなどによる納め方があり、前納や口座振替による割引も利用できます。
なお、上乗せ年金の国民年金基金に入っていない人は、付加年金に加入することができ、月額400円の付加年金保険料をプラスすることもできます。こうすることで、老後の年金の受取額が「納付月数×200円」増加します。
一方、厚生年金に入っている第2号被保険者と、第3号被保険者は、厚生年金から国民年金へ制度間でまとめて保険料を納める形になっています。ですから個別に保険料を納める必要はありません。
将来国民年金(老齢基礎年金)をもらうためには、最低10年間加入期間が必要です。原則として20歳から60歳までの40年間保険料を納めた場合、満額で月額6万5075円、年額78万900円です(2021年度の場合)。実際の受給年金額は、加入期間によって異なります。国民年金の平均月額は5万5946円になっています(「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」厚生労働省)。
厚生年金の老齢給付はどんな制度?
厚生年金を受給する条件は、国民年金の受給資格期間10年を満たした上で、厚生年金の被保険者期間が1か月以上あることが必要です。ただし、特例的に65歳前に支給される「特別支給の老齢厚生年金」を受給するためには、1年以上の被保険者期間が必要です。
厚生年金の保険料は、毎年4~6月に受け取った給与の平均と賞与に一定の料率をかけて、給与から差し引かれています。保険料は被保険者と会社で折半して負担し、会社が取りまとめて年金事務所に納めます。このように納める保険料が個人によって異なるため、将来の年金の給付額は、所得と加入期間によって変わります。
この他20年以上厚生年金に加入していて、65歳になったとき条件に該当していれば、加給年金の支給があります。先ほどの厚生労働省の報告によれば、厚生年金のみの平均月額は14万4268円です。この金額のほかに国民年金の給付額も加わるので、国民年金だけの給付にくらべると手厚いものになります。
●国民年金と厚生年金の比較
筆者作成
年金には万が一の「障害年金」や「遺族年金」もある
年金というと、老後の保障の老齢年金を連想しますが、病気やケガによって障害状態になったときに受け取れる「障害年金」もあります。さらに、公的年金に加入中または加入していて条件を満たした人が亡くなったときに遺族に支払われる「遺族年金」もあります。
障害年金には、継続的に受け取る年金と、一時金があります。すべての国民は、障害の程度が条件に該当すれば、1級または2級の障害基礎年金が支給されます。それに加え、障害の原因となったケガや病気の初診日が厚生年金の被保険者の期間中にある場合には、1級または2級の障害基礎年金と同時に、厚生年金から1級または2級の障害厚生年金が支給されます。そのほかにも、厚生年金の独自給付として3級の障害厚生年金と一時金の障害手当金があります。
●障害年金の給付
筆者作成
さらに公的年金の保険料をきちんと納めていた人が死亡した場合には、死亡した遺族に対して「遺族年金」が給付されます。国民年金の場合には、年金法上の子がいる配偶者、または年金法上の子に「遺族基礎年金」が支給されます。年金法上の子とは、18歳になった年度までの子のことで、高校卒業にあたる年齢までの子どものことです。
死亡した人が厚生年金の被保険者で、亡くなった人の収入で生活していた場合には、「遺族厚生年金」が支給されます。支給を受ける人は遺族基礎年金を受ける人よりも広く、配偶者、子、父母、孫、祖父母となっています。遺族厚生年金を受け取れる人が、遺族基礎年金の条件を満たしている場合には両方受け取ることができます。
●遺族年金の給付
筆者作成
まとめ
将来の生活設計について考えるには、まず自分がどの年金に加入しているかを確認することが最初になります。国民年金と厚生年金をくらべると、厚生年金は保険料を上乗せして納めているので、受給できる内容は厚生年金のほうが国民年金よりも充実しています。
万が一の場合も含めて、年金制度がどうなっているのかを知っておきましょう。もし、よりゆとりと安心に備えたい場合には、その他の年金制度や保険、貯蓄などを検討するとよいでしょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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