21/06/05
国民年金と厚生年金、受け取れる金額はどのくらい違うのか
日本の公的年金には、国民年金(基礎年金)と厚生年金の2種類があります。そして、高齢になったとき、障害を負ったとき、亡くなったときに基礎年金や厚生年金を受け取ることができます。では、基礎年金と厚生年金では、受け取れる対象や金額にどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの年金を比較して紹介します。
公的年金のしくみ
公的年金には、国民年金と厚生年金の2種類があります。
国民年金は20〜60歳までのすべての国民が対象となる年金です。一方、厚生年金は会社員や公務員が対象となる年金です。
公的年金は2階建てと言われます。1階部分が国民年金、2階部分が厚生年金となります。厚生年金は、国民年金の上乗せとなるため、加入していると、受け取る年金は国民年金のみの方よりも多くなります。
公的年金といえば、原則として65歳から受け取る「老齢年金」を一番に思い浮かべるでしょう。しかし、実際のところは、病気やケガで障害認定を受けた方が受給する「障害年金」や、加入者が亡くなった際に遺族に対して給付される「遺族年金」もあります。合計すると3つの年金があります。
老齢年金・障害年金・遺族年金それぞれについて、国民年金と厚生年金があります。
国民年金から支給されるのが、老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金です。一方、厚生年金から支給されるのが、老齢厚生年金・障害厚生年金・遺族厚生年金です。
それでは、基礎年金と厚生年金の対象者や金額に、どのような違いがあるのかを見てみましょう。
老齢基礎年金と老齢厚生年金
老齢基礎年金は、20~60歳までのすべての国民が対象になります。国民年金保険料を納付していれば、65歳になった際、老齢基礎年金を受け取ることができます。
国民年金保険料は、20~60歳までの40年間(480ヶ月)支払うよう定められています。この期間すべて年金保険を納めれば、原則65歳から満額となる年間78万900円(2021年度)の老齢基礎年金を受け取れます。
様々な事情で国民年金保険料が納付できない場合でも、10年(120ヶ月)以上の納付があれば受給資格を得られます。この「10年以上」には、保険料を納付していた期間だけでなく、国民年金保険料の免除を申請した場合なども含まれます。国民年金保険料の未納付期間や免除期間があった場合は、その期間に応じて受け取れる年金の金額も減額される仕組みとなっています。
対する老齢厚生年金は、会社員や公務員などが対象です。厚生年金は、国民年金の上乗せ部分となっているため、将来年金を受け取る場合は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取れます。老齢厚生年金は、厚生年金の被保険者になった実績が1ヶ月あれば受給資格が得られます。
実際に老齢厚生年金の給付を受けるのは、老齢基礎年金と同じく、原則65歳からです。老齢厚生年金の受給額は、厚生年金の被保険者期間に受け取った毎月の給料、ボーナスの金額によって決まります。老齢厚生年金のもとになる年金保険料は、給料やボーナスが多ければ高くなり、老後に多くの老齢厚生年金を受け取る仕組みとなっています。
老齢厚生年金の平均月額(老齢基礎年金を含む)は14万4268円です。男性の平均月額は16万4770円、女性の平均月額は10万3159円となっています(厚生労働省年金局「厚生年金保険・国民年金事業の概況」2019年度より)。
障害基礎年金と障害厚生年金
障害年金とは、病気やケガなどで障害が残ってしまった時に、障害の程度ごとに支給されるものです。障害基礎年金の障害の程度は、1級と2級があります。受給額は、2級が年78万900円、1級は1.25倍となる年97万6125円と子の加算額です。子の加算額は、18歳未満(障害を持つ子の場合20歳未満)の子がいるときに受け取れる金額で、該当する子1~2人目には22万4700円、3人目以降には1人あたり7万4900円となります(以上金額はすべて2021年度)。
一方、障害厚生年金は、障害の程度が1級・2級であれば、障害基礎年金に上乗せして受給できる年金です。障害の程度が軽ければ3級、さらに軽度の障害であれば障害手当金という一時金が受け取れる場合もあります。
障害厚生年金の受給額は、毎月の給料やボーナスの金額に応じて決まる「報酬比例の年金額」になります。3級は報酬比例の年金額のみ、2級は報酬比例の年金額に配偶者の加給年金(22万4700円)が加わります。1級は報酬比例の年金額の1.25倍に配偶者の加給年金がプラスされます。障害手当金は、報酬比例の年金の2年分が一時金として支払われます。
障害厚生年金の平均月額(障害基礎年金を含む)は9万7175円です(厚生労働省年金局「厚生金保険・国民年金事業の概況」2019年度より)。人によって金額は大きく異なりますが、平均すると年116.6万円ほどを受け取っていることになります。
障害年金においては、障害基礎年金よりも障害厚生年金の方が受け取れる等級の範囲が広がります。また、より軽度な障害が残った際に支給される障害手当金が支給される場合もあります。
長い人生のなかで、万が一のケガ、病気などのリスクはつきもの。そうなれば、一時的に、収入が少なくなり、生活不安を感じることもあるでしょう。そんな際、少しでも保障される範囲が広ければ気持ちに余裕が生まれます。
遺族基礎年金と遺族厚生年金
遺族年金とは、年金を受け取る人が亡くなってしまった時、生計維持関係のある遺族に対して支給されるものです。遺族基礎年金、遺族厚生年金では遺族の範囲に違いがあります。遺族基礎年金の場合は、子のある配偶者または子だけが対象になります。一方、遺族厚生年金の場合の対象範囲は、
・第一順位:配偶者と子
・第二順位:父
・第三順位:孫
・第四順位:祖父母
と、範囲が広がります。
遺族基礎年金の受給額は障害基礎年金と同じく、年78万900円と子の数に応じた加算額の合計です。一方、遺族厚生年金の受給額は、報酬比例で計算された年金額の4分の3が、遺族基礎年金に上乗せされます。
遺族厚生年金の平均月額(遺族基礎年金を含む)は8万1201円です。(厚生労働省年金局「厚生金保険・国民年金事業の概況」2019年度より)。こちらも、人により金額は大きく異なりますが、平均すると年97.4万円ほど受け取っていることになります。
遺族年金については、遺族基礎年金よりも遺族厚生年金のほうが、遺族年金を受け取るための要件、対象となる家族の幅が広くなります。年金加入者が亡くなった後、残された家族の生計を助けるためにも、保障が広い遺族厚生年金は安心できます。
まとめ
それぞれの基礎年金・厚生年金を比べると、厚生年金のほうが手厚く恵まれていることがわかります。一方、個人事業主やフリーランスなど、基礎年金だけという方は、基礎年金だけでは手薄になることもわかります。任意で加入できる付加年金・国民年金基金・小規模企業共済、あるいは老後資金を用意するiDeCoや万が一の収入減を助ける保険など、保障を手厚くする手段を検討しましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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