21/06/03
年金の加入記録は間違っている場合がある? 年金受け取り前にすべき3つの確認
年金を受け取る時期が近づいたら、自分の場合はいくらもらえるのかを改めて確認してみましょう。事前に確認しておくことで、年金受給額が増えることもあります。今回は、年金受け取り前のチェックリストとして、3つの点を挙げてみます。
1. 加入記録のチェック
まず、年金受給開始前に、加入記録を確認することが大切です。もし加入記録が間違っていれば、保険料を払った分をきちんともらえません。加入記録にもれや誤りを見つけたら、年金事務所に相談しましょう。
●加入記録は間違っていることがある
1997年(平成9年)に基礎年金番号が導入されてから、それまで国民年金や厚生年金などの制度ごとに管理されていた年金が統合されました。しかし、基礎年金番号に統合されていない持ち主不明の年金が、今も約2000万件あると言われています。自分の加入記録にもれがないかチェックしましょう。
●59歳の「ねんきん定期便」で詳細を確認
「ねんきん定期便」は毎年誕生月に届きますが、59歳という節目年齢ではより詳細なものが送られてきます。これまでの年金加入履歴や標準報酬月額なども記載されていますので、間違いないか確認しましょう。「ねんきんネット」に登録すれば、「ねんきん定期便」が届く前でも、パソコンやスマホから加入記録の詳細を確認できます。
2. 厚生年金基金の確認
厚生年金基金の加入歴がある人は、厚生年金基金から年金が受け取れます。請求しないともらえませんので、確認しておきましょう。
●厚生年金基金とは?
厚生年金基金は企業年金の1つですが、国の行う厚生年金給付の一部を代行した上で、企業が独自に上乗せした給付を行うのが特徴です。過去に厚生年金基金制度のある会社に勤めていて退職した人は、厚生年金の一部を厚生年金基金から受け取ることになり、上乗せ給付も受けられる可能性があります。
●企業年金連合会に請求
厚生年金基金から給付される年金については、通常の公的年金とは異なり、企業年金連合会に請求します。通常は登録されている住所に裁定請求書が届きますが、届かない場合や請求可否がわからない場合には、企業年金連合会に問い合わせてみましょう。
3. 加給年金や振替加算の要件を確認
夫婦どちらかの年金受給開始年齢が近づいたら、加給年金や振替加算の要件を確認しておくのがおすすめです。退職時期によって、年金受給額が変わることがあります。
●加給年金・振替加算とは?
公的年金における扶養手当の役割を果たすのが加給年金です。65歳になったときに要件をみたした配偶者や子供(18歳未満)がいれば、厚生年金に加給年金を上乗せしてもらえます。さらに、配偶者自身が年金をもらうようになれば、加給年金が打ち切られる代わりに配偶者自身の年金に振替加算という上乗せがあります。
たとえば、夫が年下の妻を扶養している夫婦の場合、夫は65歳になったら加給年金が付加された年金を受け取れます。妻が65歳になると加給年金は打ち切られますが、妻自身の老齢基礎年金に振替加算があります。
なお、妻が年上の夫婦の場合、夫は加給年金を受けられませんが、妻は振替加算を受けられる可能性があります。
●配偶者を扶養している人の注意点
加給年金を受けるには、厚生年金加入期間が20年(240か月)以上なければなりません。配偶者加給年金の額は、年間で約39万円(昭和18年4月2日以降生まれの場合)、月3万円程度ですからかなり大きな額です。加入期間が1か月足りなくて受けられないのは残念ですから、退職時期を決めるときには注意しておくとよいでしょう。
●配偶者に扶養されている人の注意点
配偶者が加給年金を受けるには、自分の厚生年金加入期間が通算20年未満でなければなりません。たとえば、会社員の夫がいてパートで働いている女性の場合、「あと少し早くパートを辞めていれば、夫は加給年金を、自分は振替加算を受けられたのに」ということも起こり得ます。
ただし、働くこと自体が生きがいになっていることもありますし、長く働いて自分の年金を増やした方が結局は得することもあります。加給年金や振替加算の要件も確認しておいた方がいいですが、最終的に自分で納得する働き方を選ぶようにしましょう。
まとめ
年金は老後の生活を支えるものですが、年金制度はわかりにくく、自分で調べないと損してしまうこともあります。年金の受給開始が近づいてきたら、チェックリストを参考に、自分がどれだけ年金をもらえるのかを確認してみてください。そして不明点があれば、年金事務所などに問い合わせしましょう。
【関連記事もチェック】
・「年金の繰下げ」は国民年金・厚生年金別々に可能も、年の差夫婦にはデメリット
・iDeCo・企業型確定拠出年金で決して選んではいけない4商品
・60歳以降働くなら、最低限覚えておくべき年金・給付金5つの知識
・最高クラスの年金をもらえる人は意外と多い
・パートは手取りが減っても厚生年金に加入したほうが得なのか
森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう