21/05/20
パートは手取りが減っても厚生年金に加入したほうが得なのか
パートで働く人の場合、自分で厚生年金に加入せず、配偶者の扶養に入った状態ということもあるでしょう。働く時間を増やすことを考えたとき、「厚生年金の加入義務が生じるのでは?」と心配な人も多いのではないでしょうか?
今回は、パートで働く人が厚生年金に加入する条件について説明します。厚生年金加入のメリットについてもお伝えしますので、働き方を考える上で参考にしていただければ幸いです。
パートで厚生年金加入が必要になるパターンは2つ
会社で働く正社員の人は、厚生年金の加入が必須です。一方、パートなどの短時間勤務の人は、労働時間等の条件によって、厚生年金加入の要否が分かれます。
パートで厚生年金の加入義務があるのは、次のアまたはイに該当する人です。
●ア 労働日数・労働時間が正社員の概ね4分の3以上の人
パートと言っても労働時間が多めでフルタイムに近い人です。正社員の所定労働時間は週40時間が一般的ですから、週30時間を超えたら厚生年金加入義務が生じると考えてよいでしょう。週30時間を超えるような勤務なら、たとえ学生であっても厚生年金に加入しなければなりません。
●イ 労働日数・労働時間が正社員の4分の3未満でも、一定の条件をみたす人
アに該当しないパートの人でも、次の①~⑤の要件をすべて満たす場合には、厚生年金に加入する必要があります。
①従業員501人以上の会社に勤めている
②1週間の所定労働時間が20時間以上
③雇用期間が1年以上の見込み
④月額の賃金が8.8万円以上
⑤学生ではない
以前はパート等で厚生年金加入義務が生じるのはアに該当する人、つまり週30時間以上働いている人のみでした。2016年(平成28年)10月以降、イに該当する人も厚生年金加入の対象者に含まれるようになりました。
月額賃金8.8万円は年収にすると約106万円です。パートでも年収106万円を超えると厚生年金等の加入義務が生じることがあるため、「106万円の壁」と言われています。
2022年・2024年に厚生年金加入対象者は拡大予定
上に説明したとおり、パートで厚生年金加入の対象となる人には、2つのパターンがあります。イの「106万円の壁」が追加されたことで厚生年金加入対象者は増えましたが、さらに今後イのパターンの対象者の範囲を広げる改正が、次のとおり段階的に行われます。
●(1) 2022年(令和4年)10月以降
適用事業所の従業員数、雇用期間の要件が変更になり、以下のようになります。
①従業員101人以上の会社に勤めている
②1週間の所定労働時間が20時間以上
③雇用期間が2か月を超える見込み
④月額の賃金が8.8万円以上
⑤学生ではない
●(2) 2024年(令和6年)10月以降
適用事業所の従業員数が変更になり、以下のようになります。
①従業員51人以上の会社に勤めている
②1週間の所定労働時間が20時間以上
③雇用期間が2か月を超える見込み
④月額の賃金が8.8万円以上
⑤学生ではない
パートでも厚生年金に加入した方が得?
社会保険は厚生年金と健康保険がセットになっているので、厚生年金の加入義務が発生すれば、健康保険にも入らなければなりません。毎月厚生年金保険料と健康保険料が給与から天引きされるため、手取りが減ることになります。配偶者の扶養に入ってパート勤務している人の場合、厚生年金の加入義務が生じないよう、今後は労働時間を減らそうと考える人も多いかもしれません。
しかし、自分で社会保険に入ることにはメリットもあります。配偶者の扶養に入ったままでは自分の年金は増えませんが、自分で厚生年金に入ると自分の年金が増えます。特に女性は平均寿命が長いので、保険料を払った分の元が取れる可能性は十分あります。何より、一生涯もらえる厚生年金を増やしておくと、長生きした場合の安心感が大きいでしょう。
また、厚生年金に入っていれば、障害状態になった場合に、障害厚生年金を受け取れます。健康保険に入っていれば、病気やケガで働けなくなったときに、傷病手当金を受け取れます。日本の社会保障制度は諸外国に比べて充実していると言われますが、社会保険料を払うことでその恩恵をしっかりと受けられることを知っておきましょう。
まとめ
厚生年金に加入すれば手取りが減りますが、長い目で見れば決して損する選択とは限りません。社会保険は国が充実した保障をしてくれる保険であることを認識した上で、働き方を考えるのがおすすめです。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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