21/03/20
国民年金・厚生年金には何歳まで加入できる?長く加入するといくら年金は増えるのか
皆さんが加入している公的年金は、何歳まで加入できるのかご存知ですか?また、年金に長く加入すれば、受け取る年金が増えるのでしょうか?年金は老後の生活の基本となるものです。少しでも、豊かに暮らすために多く受け取る方法を知っておくことは大切です。今回は、年金の加入期間や年金を増やす方法を紹介します。
国民年金は何歳まで加入できるのか
国民年金は、基礎年金とも呼ばれています。20歳以上60歳未満の国民が全て加入することになっている年金です。国民年金保険料は定額ですが毎年改定が行われています。2021年4月から2022年3月までは月額1万6610円となっています。
国民年金は40年(480ヶ月)納付するのが原則となっていますが、納付期間が10年以上あれば基礎年金を受け取ることができます。原則どおり40年(480ヶ月)納付した場合であれば、満額となる年額78万900円(2021年)を受け取ることができます。
しかし、40年(480ヶ月)納付できない場合、受け取る年金は減額されてしまいます。様々な事情で国民年金保険料を納めるのが困難な場合は、お住まいの市(区)役所、町村役場の国民担当窓口へ申請書を提出すれば保険料の納付が免除されたり、猶予されたりします。
国民年金は、原則60歳までが加入限度です。しかし、60歳まで未納などにより、老齢基礎年金の受給資格である10年をクリアできていない場合や、40年の納付期間がないため、満額受給できないなどの理由があれば60歳以降でも国民年金に任意加入できます。これを「国民年金の任意加入制度」といいます。申込は、本人がお住まいの市(区)役所、町村役場の国民担当窓口、または近くの年金事務所で手続きできます。
厚生年金は何歳まで加入できるのか
会社員・公務員などが加入する厚生年金は、国民年金に上乗せされる年金です。厚生年金は20歳未満でも加入できます。たとえば、高校を卒業してすぐ会社員や公務員になれば、18歳で厚生年金の被保険者となります。ただし、加入限度の年齢は70歳未満と決まっています。
厚生年金の保険料は、給与の額に比例して決まります。具体的には毎年4月~6月に支払われる給与をもとに決まる標準報酬月額と賞与に、保険料率である18.3%をかけて計算します。この保険料は、被保険者と勤務先の事業所が半分ずつ(9.15%ずつ)負担することになります。
厚生年金の受給額は、厚生年金に加入した期間や、給与、賞与によって決まるため、国民年金のように一定ではありません。そのため、どのくらいの年金を受給するかは、個々で確認が必要になります。
ちなみに、厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和元年度)」によると、平均の厚生年金月額は、14万4268円となっています。
年金は長く加入するほど受給額は増えるのか
国民年金を掛けることで受け取れる老齢基礎年金は、加入期間(保険料を納付した期間)によって決まります。加入期間の上限は40年(480ヶ月)で、40年納付すると満額の78万900円が支給されます。
しかし、40年に満たない場合は満額受け取ることはできません。たとえば、納付年数が38年(456ヶ月)の場合は約74万円となり、満額で支給される老齢基礎年金よりも約4万円少なくなります。
一方、厚生年金は基礎年金のような加入期間の上限がなく、保険料の納付月数と年収を計算式に当てはめて計算します。なお、2003年3月までと2003年4月以降で計算式が異なります(詳細は本稿では割愛します)。
以上を踏まえた上で、大卒で22歳から60歳までの38年間年金を納付した場合と、22歳から70歳までの48年間年金を納付した場合でどれくらい違ってくるのか、年収400万円と500万円の場合で分けてシミュレーションしてみましょう。
●①22歳から60歳までの38年間(456ヶ月)年金を納付した場合
以下の条件で年金を納付したとします。
・国民年金の加入期間:456ヶ月
・厚生年金の加入期間:
2003年3月まで20年間(240ヶ月)
2003年4月から現在まで18年間(216ヶ月)
この例の場合、受け取れるおおよその年金額は次のようになります。
【年収400万円】
・老齢基礎年金:約74万円
・老齢厚生年金:約98万円
合計 約172万円
【年収500万円】
・老齢基礎年金:約74万円
・老齢厚生年金:約119万円
合計 約193万円
●②22歳から70歳までの48年間(576ヶ月)年金を納付した場合
以下の条件で年金を納付したとします。
・国民年金の加入期間:480ヶ月
・厚生年金の加入期間:
2003年3月まで30年間(360ヶ月)
2003年4月から現在まで18年間(216ヶ月)
厚生年金の加入期間は合計576ヶ月ですが、国民年金は480ヶ月で上限となります。
また、60歳で定年を迎え再雇用される際、多くの場合年収が下がります。そのためここでは、60歳〜70歳までの年収が現役時代の年収の7割程度に下がると仮定します。現役時代の年収が400万円だった方は年収300万円、500万円だった方は年収350万円となった場合、受け取れるおおよその年金額は次のようになります。
【現役時代の年収400万円→再雇用後年収300万円】
・老齢基礎年金:約78万円
・老齢厚生年金:約122万円
合計 約200万円
【現役時代の年収500万円→再雇用後年収350万円】
・老齢基礎年金:約78万円
・老齢厚生年金:約129万円
合計 約207万円
以上を一覧表にまとめると以下のようになります。
年金は、長く加入すればするほど多く受けとれることがわかります。
70歳まで働き、年金を繰り下げすれば多く受け取れる
年金は原則65歳から受給できるようになります。しかし、65歳時点で年金を受け取らず働いて収入を得ればさらに多くの年金を得ることができます。というのも、年金は最大で70歳(2022年4月からは最大75歳)まで繰り下げすることができるからです。そうすることで、1ヶ月繰り下げるごとに、生涯にわたり本来受け取れる年金額よりも0.7%多い年金を生涯にわたり受け取ることができるのです。
もし、70歳までの60ヶ月間、繰り下げをした場合、増額率は0.7%×60ヶ月(65歳に達した月から繰り下げ申し出月の前月までの月数)ですから、実際の増額率は42%になります。
前述した平均年金月額約14万円(年額168万円)の方の場合、70歳まで繰り下げたときに受け取れる年金の金額は、
168万円×(1+0.42)=238万円となります。
実際に年金がいくら受け取れるのか早めに確認し、もし、少ないなと感じるようであれば年金の繰り下げを検討してみると良いでしょう。
まとめ
国民年金の加入限度は原則60歳、厚生年金の加入限度は原則70歳です。それぞれ、受給するには加入期間が最低でも10年以上必要です。そして、国民年金は40年分までが上限ですが、厚生年金は加入期間が長くなると受給額も増えます。
老後の年金を多く受け取りたいのであれば、少しでも長く加入し、年金保険料を未納にすることなくしっかり納めることが大切。まずは満額受給を目指し、余裕があれば年金の繰り下げも検討しましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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