21/02/21
共働き家庭と専業主婦家庭ではもらえる年金受給額が100万円以上違う? 年金受給額を増やす6つの裏ワザ
公的年金だけでは2000万円不足するとも言われる老後の資金をどう準備するかは深刻な問題です。その公的年金も世帯によって差があり、特に専業主婦(以下、専業主夫も含む)の世帯では少ないのをご存じでしょうか?
今回は、共働き家庭と専業主婦家庭の年金受給額の違いや、年金受給額を増やす裏ワザについて説明します。
共働き家庭と専業主婦家庭の年金の差はどれくらい?
夫も妻も会社員で共働きの家庭と、会社員の夫と専業主婦の妻という家庭で、公的年金受給額にどれくらい差があるのかを検証してみましょう。
【例】
下の表は、夫が平均的収入(平均標準報酬43.9万円)で40年間就業したものと仮定し、妻が働いたことがない専業主婦の世帯と、会社員として夫と同レベルの収入を稼いでいた共働きの世帯との年金受取額を比較したものです。
厚生労働省「令和3年度の年金額改定について」より筆者試算
専業主婦世帯では、妻は国民年金から老齢基礎年金を受給できるのみで、老齢厚生年金を受給できません。これに対し、共働き世帯では夫・妻とも老齢厚生年金を受け取れます。夫婦2人分の年金受給額の合計で見ると、共働き家庭と専業主婦家庭とでは1か月あたり約9万円、年間だと約108万円違いが出ます。
年金が月30万円程度あれば多少は安心感がありますが、月20万円程度では不安ではないでしょうか?専業主婦世帯では、不足する老後資金の準備をどうするかを考えておいた方がよいでしょう。
共働きでも年金が少ない家庭もある!
上の【例】の共働き世帯は、夫も妻も会社員の場合です。夫婦共働きでも、以下のようなケースでは、年金受給額が少なくなってしまいます。
●(1) 夫も妻も自営業またはフリーランス
夫婦一緒に自営業を営んでいる世帯や、夫も妻も個人事業主やフリーランスとして仕事をしている世帯では、夫婦とも老齢基礎年金しかありません。1か月あたりの年金受給額は約13万円で、【例】の専業主婦世帯よりも少なくなります。
●(2) 一方が自営業またはフリーランス、他方が会社員
会社員の方には老齢厚生年金がありますが、自営業・フリーランスの方には老齢基礎年金しかありません。年金受給額は、【例】の専業主婦世帯と同等になります。
●(3) 妻が会社員の夫の扶養に入ったままパート勤務
妻がパートで働いているけれど会社員の夫の扶養に入ったままという場合には、共働きではありますが、年金受給額は【例】の専業主婦世帯と同等です。
老後の年金を増やす6つの裏ワザ
専業主婦家庭や共働きと言っても、自営業・フリーランスの家庭では、老後の年金に不安があります。そこで、年金を増やせないかということですが、次のように年金を増やす裏ワザはいくつかあります。
●年金を増やす裏ワザ①:加入期間が足りないなら任意加入
国民年金の加入期間は60歳までですが、60歳まで加入しても加入期間が足りずに老齢基礎年金が満額受給できない人がいると思います。このような人は、60~65歳の間の国民年金に任意加入し、加入期間が40年に達すれば満額受給が可能になります。
●年金を増やす裏ワザ②:付加年金に加入
①とセットで利用できる方法ですが、国民年金の任意加入期間中、付加年金に入ることでも年金を増やせます。付加年金とは、月400円を国民年金保険料に上乗せして支払うことで「200円×保険料納付済月数」の年金を老齢基礎年金に加算して受け取れるというものです。仮に60~65歳までの5年間付加年金に加入したとすると、年額で1万2000円年金を増やせます。
●年金を増やす裏ワザ③ :繰下げ受給
年金の受給開始時期を遅らせる繰下げ受給をすることでも年金を増やせます。たとえば、受給開始を70歳にした場合、受給額は42%増加します。ただし、老齢厚生年金を繰り下げると、繰り下げている期間中は厚生年金の家族手当である「加給年金」も受け取れず、トータルでの受給額が減ってしまうケースもあるので注意しましょう。
●年金を増やす裏ワザ④ :iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)に加入
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は公的年金を補う私的年金で、毎月掛金を拠出することにより年金資金を積み立て、老後に一時金または年金の形で受け取れるものです。専業主婦は月額2.3万円、自営業者は月額6.8万円を上限に掛金の拠出ができます。会社員もiDeCoに加入できます(※毎月の掛金の上限はケースによって1.2万円、2万円、2.3万円のいずれか)。
iDeCoの運用益は非課税で、受取時にも節税メリットがあります。所得がある人の場合には、払った掛金は全額所得控除の対象にもなります。ただし、iDeCoで積み立てたお金は60歳まで引き出しができないので注意が必要です。
●年金を増やす裏ワザ⑤:つみたてNISAを活用
つみたてNISAは、投資信託による積立投資を支援する制度で、年間40万円までの投資で得た利益が非課税になるというものです。非課税の恩恵は最長20年間受けられますが、いつでも解約や売却ができるので柔軟性があります。
つみたてNISAで老後資金を積み立て、年金の不足分を補う方法もあります。iDeCoの場合には途中で資金を引き出せないため、つみたてNISAも組み合わせ、効率よく老後資金を準備するのがおすすめです。
●年金を増やす裏ワザ⑥:国民年金基金に加入
自営業やフリーランスの人は、国民年金基金に加入する方法があります。国民年金基金の場合、終身年金として受け取れる基礎部分に一定期間受け取れる確定年金を組み合わせることもでき、自分に合ったプランを組んで年金を増やせます。
国民年金基金に加入できるのは国民年金の第1号被保険者のみです。専業主婦でも夫が自営業者・フリーランスなら加入できますが、会社員の夫に扶養されている妻(第3号被保険者)は加入できません。
老後資金を増やしたいなら共働きがいちばんお得
年金が少ない人も、上に書いたような方法で多少は年金を増やせます。ただし、老後資金を貯蓄や投資で準備するには限界があります。日本人の平均寿命は延び、特に女性は2人に1人が90歳まで生きる時代になっています。老後が長くなったのに年金が少ない状態は、どうしても不安が残ります。
現在専業主婦である人の場合には、老後資金を作るために最も有効な方法は、働いて自分の厚生年金を用意することでしょう。パートでも年収106万円以上など一定の要件をみたせば、厚生年金を含む社会保険に加入できます。社会保険に入ると保険料で手取りが減りますが、将来的には年金で返ってきます。女性も働いて自分の年金を作っておくことがいちばんおすすめの方法です。
公的年金は一生涯もらえる終身年金なので、公的年金を充実させればライフプランも立てやすくなります。現在は高年齢者雇用安定法により、企業に「70歳までの就業機会の確保」の努力義務が課されており、働ける期間も長くなっています。少しでも長く働いて、公的年金を充実させることを考えましょう。
まとめ
老後の安心を得るためには、公的年金の受給額をできるだけ増やすのがおすすめです。専業主婦は老齢厚生年金がなく、年金受給額が少なくなってしまいます。女性も厚生年金に加入しながらできるだけ長く働き、年金受給額を増やすことを考えましょう。
生きている間には、想定外の離婚や死別も起こり得ます。働いて自分でお金を生み出す力をつけておくことは、老後対策にとどまらず、あらゆるリスク軽減のために有効です。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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