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23/01/05

相続・税金・年金

2023年度の国民年金保険料はいくら?未納が続くと財産差し押さえになるのか

2023年度の国民年金保険料はいくら?未納が続くと財産差し押さえになるのか

国民年金は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の人であれば、全員が加入することになっています。フリーランスを含む自営業者、無職の方や学生などの場合、保険料を自ら納付しなければならないため、毎月やってくる国民年金保険料の支払いを負担に感じている方も多いと思います。今回は、毎月の国民年金保険料がきついと感じる方のために少しでも負担を抑えるための支払い方法と保険料を払わなかった場合の影響についてご紹介します。

国民年金保険料を払う必要がある人はどんな人か

国民年金には、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者の3つの被保険者の種別があります。この被保険者の種別は、働き方などの条件によって随時切り替わっていきます。

大半を占めるのが、厚生年金保険や共済組合に加入している会社員などの第2号被保険者です。第2号被保険者は、毎月の給与から天引きで保険料を納めており、直接自分で納めることはありません。第2号被保険者によって扶養されている配偶者で、年齢が20歳以上60歳未満の人は第3号被保険者になります。この第3号被保険者も保険料負担はないため、自ら保険料を納める必要はありません。

一方で、国民年金の保険料を自分で納める必要があるのは、第1号被保険者のフリーランスを含む自営業者、無職の方や学生など。全体加入者の約2割程度を占めています。会社員の方であれば、国民年金保険料は毎月給与天引きされている厚生年金保険料の中に含まれているため、保険料の未払いや滞納とは縁がないのですが、第1号被保険者は自ら保険料を納める必要があるため支払が滞ってしまう可能性も考えられます。

国民年金保険料は30年間で保険料が約2倍に値上がりしている

国民年金保険料は毎年改定が行われ、その年度の月額保険料に各年度の保険料改定率を乗じて決められます。この保険料改定率は、毎年度の賃金上昇率を加味して決められており、2023年度の国民年金保険料は、2022年度よりも70円安い月1万6520円となりました。

一方、もっと長い期間で保険料推移を振り返ってみれば、全体的には増加傾向で推移していることが分かります。以下は、過去30年間の国民年金保険料の推移を表したグラフですが、1989年度の保険料は8,000円だったのに対し、2023年度は16,520円ですので、この約30年間で保険料は約2倍に値上がりしたことになります。

●過去約30年間の国民年金保険料の推移

日本年金機構HPより筆者作成

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いまだに毎月納付書で現金払いをしている人は、保険料の節約ができるかも

この保険料は、所得に関係なく一律の金額ですから、低所得層の方にとっては、大きな負担と感じる方は多いでしょう。この負担を少しでも抑えたいという方には、保険料の支払い方法を見直すことをおすすめします。国としても保険料の納付率を少しでも上げたいという思惑から、色々な割引制度を用意しているからです。

①当月末に銀行口座から自動で引き落としする「早割」
国民健康保険料は通常、日本年金機構から送られてきた納付書で現金支払いしますが、この納付書の納期限は翌月の末日になっています。例えば、4月分の保険料であれば、通常納付期限は翌月の5月31日ということになります。
「早割」は、この納付期限を1ヶ月前倒ししてさらに口座振替で銀行口座から自動で引き落としする方法です。通常の口座振替では翌月末の引き落しですが、「早割」を使って当月末に引き落しをすれば、月50円保険料が安くなります。年間で600円の節約になります。

②6カ月分、1年分、2 年分をまとめて支払う「前納」
もっと節約をしたい方は、ある程度まとまった期間の保険料を支払う「前納」制度を活用しましょう。この納期限よりも早く納めるのが前納で、前納には半年前納、1年前納、2年前納があります。
それぞれの割引率は以下の表の通りで、例えば、2年前納で口座振替の場合だと最大15,790円の割引となり、約1カ月分の保険料を節約することができます。

●令和4年度の振替方法別割引額

日本年金機構HPより

お得な「2年前納の口座振替」ではまりがちな落とし穴

割引率を考えると、2年前納の口座振替が一番お得ですが、人によっては落とし穴にはまる可能性があります。ここではお得な「2年前納の口座振替」ではまりがちな落とし穴を5つご紹介します。

●落とし穴①2年前納の口座振替は申込期限を過ぎるとできない

2年前納を口座振替で支払う場合には、申込期限に注意しましょう。国民年金保険料を前納で支払う場合の納付期限はその年度の4月末ですが、口座振替とクレジットカードでの前納については事前の申込みが必要です。2年前納、1年前納、6か月前納(4月分~9月分)の申込期限は前年度の2月末日までですので、うっかりして期限を過ぎてしまったということのないように早めに手続きを行いましょう。
申し込み期限が過ぎると、遡っての申し込みはできませんのでご注意ください。また、新規に申込みに限らず、他の前納に変更したい場合も前年度の2月末までに申し込む必要があります。

筆者作成

●落とし穴②社会保険料控除は原則支払った年に適用される

国民年金保険料は、原則として支払った年に一括して社会保険料控除として処理します。つまり、「2年前納」はその納めた額全額が、納めた年の社会保険料控除とすることになります。しかしながら、納めた年の所得が少ないケースや、翌年の所得が増えたことで税率が高くなった場合には、社会保険料控除を上手く活用できず、不利になるケースがあることを覚えておきましょう。
もし、2年前納した分を全額今年の控除としないほうが税金計算上、有利になりそうな場合、2年前納した保険料の社会保険料控除について、各年分の保険料に相当する額を各年に控除する方法も選ぶことができます。

●落とし穴③引き落とし口座の名義に注意する

もう1つ重要なことは、社会保険料控除は「支払った人」の所得控除となる点です。たとえば妻が納めるべき国民年金保険料を夫が納めた場合には、支払った夫の所得控除となります。つまり、扶養控除のように夫のほうが税金の負担が重いからといって、「妻が納めた国民年金保険料を夫に付け替える」ということはできません。
また、同居している子の国民年金保険料を親が支払うことで親の社会保険控除として認められますが、実際には親が支払った場合でも子供名義の口座から引き落としを行なった場合、親が控除を受けることはできませんので注意が必要です。

●落とし穴④近いうちに就職する予定がある場合は修正申告が必要になることも

近いうちに就職する予定がある場合も注意が必要です。就職して勤務先で厚生年金に加入した場合には勤務先が厚生年金加入手続きを行うため、多く納めすぎた国民年金保険料は自動的に還付がされます。しかしながら、前納分の全額について社会保険料控除を受けた場合、過分に控除を受けていたことになりますので、修正申告が必要になります。このような手続きが面倒だと思う方は、1年ごとに還付申告をした方がいいでしょう。

●落とし穴⑤2年おきに到来する高額の引き落としは、残高不足に注意

2年前納の口座振替を利用した場合、約38万円程度の支払いが、2年おきに到来することになります。しかも、通知が届くのは4月で、それから1カ月弱で支払日が訪れるのです。一度に約38万円の支払いはなかなかの負担です。
この支払いについて、すっかり忘れていると、残高が少なくなっていて引き落としができなかったということにもなりかねません。そうなると、次の振替日(翌年度の4月末)までの間、割引が一切ない翌月末口座振替になってしまうのです。そんな事態に陥る可能性があるなら、初めから1年前納や半年前納、または早割の口座振替にとどめておく方が賢明かもしれません。
このように、家計管理の仕方や資金計画の立て方によってどの支払い方法が自分にとって本当におトクなのかは変わってきます。国民年金保険料に限ったことではありませんが、特に年払いやまとめ払いをする際には、事前に自動積立定期などを活用して別に資金を確保しておくとよいでしょう。

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国民年金保険料を未納のまま放置するとどうなるか?

低所得者層や失業中の方は日々の生活で精いっぱいで、なかなか保険料の支払いまで手が回らないということもあるかもしれません。だからといって保険料を払わずにいると、未納と判断されてしまいます。国民年金を未納のまま放置することによるリスクは以下のようなものがあります。

①将来もらえる年金が減る
年をとったときに受け取れる老齢基礎年金は、それまで支払った額に応じて受給額が決定するため、年金の未納期間がある人はその分受け取れる年金も少なくなってしまいます。保険料払込期間が10年間(受給資格期間)に満たない場合、65歳からの老齢基礎年金をもらうことができません。例えば、9年間だけは保険料を支払ったとしても、10年に満たない場合では、将来の年金は1円も受け取ることができなくなってしまいます。

②障害年金や遺族年金が受け取れない可能性がある
病気やケガで働けなくなった時にもらえるはずの障害年金、死亡時にもらえる可能性のある遺族年金の受給権も失う可能性があります。保険料納付状況(※)について、年金加入期間の2/3以上の年金保険料の納付または免除、もしくは1年間保険料の未納がないことといった一定の条件がありますので、この条件を満たせない場合には、障害年金や遺族年金をもらうことができません。
(※)障害年金は初診日、遺族年金は亡くなった日より前の保険料納付状況

③最終的には財産を差し押さえられる
国民年金保険料は任意のものではなく、納める義務があります。国民年金保険料を支払える収入や資産があるのに、支払わないでいると最終的には「強制徴収」といって、差し押さえが行われます。強制徴収は控除後所得 300 万円以上・未納月数7か月以上の滞納者が対象。

とはいえ、いきなり差し押さえになることはありません。
国民年金保険料の未納が続くと、まず封書やはがきで保険料支払いの案内が届き、「特別催告状」「最終催告状」が届きます。

再度に「督促状」が届くのですが、こうなると、年金機構の職員が銀行口座・有価証券・自動車など財産の差し押さえ、強制的に保険料が徴収されます。

国民年金の納付が困難な場合には免除や減額も可能

経済的な事情により、保険料の納付が難しい人のために国の救済制度として用意されているものに、納付猶予や申請免除があります。

●納付猶予

失業したり、収入が減少したりして、本人と配偶者の前年の所得が一定以下の場合に、本人の申請によって、保険料の支払いを一定期間待ってもらえる制度です。こちらの制度を利用できるのは、50歳未満の人となっています。

●申請免除

本人・世帯主・配偶者の前年の所得が一定以下、または失業などによって、経済的に苦しい場合に、本人が申請すると、保険料の納付が免除される制度です。免除額は、所得に応じて、「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」の4種類があります。
上記の納付猶予や申請免除を受けた期間は、受給資格期間にカウントされるため、老齢年金、障害年金、遺族年金のいずれも受給できます。ただし、老齢年金の受給額は、免除額に比例して減額され、満額受給はできませんので注意しましょう。

まとめ

国民年金保険料の支払いが負担だなあ…と考えてしまう心情もよく分かります。ですが、お金がないからと支払いを放置している間に、体調不良になり病院へ行き、その後、障害年金を受給できる障がい状態に該当したにもかかわらず、保険料納付要件を満たせず受給できなかった…といった非常に残念なケースも考えられます。

用意されている国の保障をしっかりと活用したいのであれば、保険料は納付しておいた方が間違いないでしょう。収入が少なくてどうしても無理なときは、急いで免除等の手続きをすれば、しばらくの間は未納のリスクを防ぐことができますので、困ったときは、すぐに担当窓口や専門家に相談してくださいね。

KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士

長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。

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