23/08/20
全世界株と全米株、どちらに投資するのが正解なのか
NISAやiDeCoなどを通じて、投資信託の積立を始める人が増えています。2024年からはNISAが神改正され、多くの人に投資文化が広がっていくことが予想されます。
投資を始めると、とある悩みに行き着きます。
「全世界株」と「米国株」、どちらに投資するのが正解なのか、という点です。
今回は、登録者数12万超のYouTubeチャンネル「井上ヨウスケ/井上FP事務所」を運営されているファイナンシャルプランナー井上ヨウスケさんをゲストに招いて収録したMoney&YouTVの動画「【コラボ】全世界株と全米株、どちらに投資するのが正解?お金のプロ達の結論【Money&YouTV】」の様子をお届けします。
井上ヨウスケさんは、役者の経験を持つ異例のファイナンシャルプランナーであり、FPYouTuberとしてトップを走り活躍されています。役者で得たスキルで「誰よりもわかりやすく」をモットーに、生きていく上で欠かせないお金の知識を発信されています。
そんな井上さんと一緒に、「全世界株」と「米国株」、どちらに投資するのが正解なのかを考えてみました。
井上さんと全世界株と全米株、どちらが良いのか考えてみた
頼藤:本日のテーマは「全世界株と全米株どちらがいいのか考えてみた」です。まずは、それぞれの主張を確認していきたいと思います。
●全世界株派vs全米株派 主張ポイントは?
(株)Money&You作成
頼藤:まずは全世界株派ですね。
「全世界経済はトータルで成長している」「新興国の成長を取り込める」「世界分散することでリスク低減になる」「現代ポートフォリオ理論に基づいている」…現代ポートフォリオ理論というのは、リスクを抑えて一定のリターンを得るためには多数の銘柄や資産に分散することが有効だという考え方です。そして「米国株の割合が6割で投資しないわけではない」というところなのですが、井上さん、こちらいかがでしょうか。
井上さん:そうですね、僕も全世界と全米株の比較の話はよく聞かれます。基本的には全世界がベースが良いと考えています。インデックス投資でいいという話をされているマルキールやジェレミー・シーゲルも、基本的には「全米だけでいい」という言い方はしていないですね。できる限り幅広く投資して 自国のバイアスにかからずに、全世界を持った方がいいと言っています。最近は、全世界がベースで、プラスアルファのリターンを取るという意味で全米が選ばれているので、基本は全世界かなと思っています。
頼藤:ありがとうございます。高山さんはいかがでしょうか。
高山:そうですね、やはりどこか一国に投資するより幅広く成長している国に投資できる方がリスクも低くしながらお金を増やしていける可能性が高いと思います。
頼藤:ありがとうございます。
対する全米株派ですけども、「全世界株より運用成績が上」「全世界株には低成長の国を含むから良くない」「新興国の成長はそもそも米国市場で取り込めるから全米株でいい」「そもそも全世界株に投資することで余計なリスク・コストを払う」という話もあります。
過去10年だと標準偏差は世界株が若干高いというデータもあります。
そして「世界経済は米国と一蓮托生だから全米株でいいのでは」ということなのですが、井上さんはいかがでしょうか。
井上さん:今言った意見は、全部理解はできます。ただ、過去が未来を表すわけではないというところで考えると、未来は不確実ですよね。そんな未来でも、「購買力」を維持し続ける努力をしなければ生活が厳しいものになります。未来に僕たちは使うお金を残さないといけません。購買力を残すためには、できる限り幅広く分散しておく方がいいでしょう。仮に米国がダメになっても、購買力は維持できている、というところがあります。また、もし全世界が全米よりリターンが落ちたとしても、全世界に投資したらだいたい実質リターン5%ぐらいはあると思います。それで十分自分の老後のお金がカバーできるのであれば、そこまでプラスアルファのリターンを取ろうと僕は思いません。そのプラスアルファを欲しい方に選ばれているのが全米というチョイスなのかなと思います。
頼藤:ありがとうございます。高山さんはいかがでしょうか。
高山:過去を見ると、米国は非常に調子が良かったので、米国に投資していた人はすごく大きな利益が出たのかなと思います。ただ、今井上さんがおっしゃったように、未来のことはどうなるか誰にもわからないと思います。そうなった場合にはやっぱり幅広いところに投資していた方がリスク低くできるのかなと思いますよね。
頼藤:ありがとうございます。
全米株は全世界株より運用成績は上というところでデータを確認しておきます。
●全世界株vs全世界株 パフォーマンス推移(2008年〜)
(株)Money&You作成
頼藤:グラフは2008年 7月を100として値動きを指数化したものです。全米株はVTI、全世界株はVTというETFの推移で表せるでしょう。
見ていただくと青い方(全米株のVTI)のほうが上に行っていますから、2008年以降では全米株に投資していた方が正解だったよね、という話です。しかし、2022年以降にするとどうなるでしょうか。
●全世界株vs全世界株 パフォーマンス推移(2022年〜)
(株)Money&You作成
頼藤:2022年以降の推移を見ると全米株と全世界株は僅差、全世界株のほうがちょっと上になっています。これをみると、過去の推移が将来もずっと続くという証拠になっていないことがわかります。これを受けて井上さん、どう考えていますでしょうか
井上さん:そうですね、今まで見ていただいたらわかると思いますが、僕は全世界株派です。その理由はいくつかあります。
先ほどもお話しした通り、基本的にはインデックス投資のベースは全世界から始まっていると思っています。ここ最近、米国のブームで「全世界ではなく米国だけでいいのでは」「米国だけでなくナスダックでいいのでは」「レバレッジをかけた方がいいのでは」と、プラスアルファの部分を取りに行く流れが続いています。しかし、その土台はやはり全世界です。
ですから、よほど自分の判断に自信があって、今後も自分のその考え抜いたその知識で「全米は大丈夫」だと思われる人は全米でもいいのですが、自信がない方は全世界を基本で考えるといいと思っています。
ずっと同じ世界が続くわけではないというところを、図を使いながら説明したいと思います。
●1899年と2017年の世界の時価総額の割合
井上ヨウスケさんの資料より
井上さん:1899年と2017年の世界の時価総額の割合です。見ていただくと、全然一緒じゃないですよね。
頼藤:そうですね、特に米国の割合が違います。
井上さん:栄え続ける国というのはありません。米国も決して完璧な国ではありません。例えばレイ・ダリオという人が「チェンジングワールドオーダー(the Changing World Order)」という本で、100年とか150年ぐらいで国の1個のサイクルが終わっていくと言っています。イギリスが終わって、今米国の時代で、これから次の時代に移るのではないか、といったことを言われています。
実際この図で見たらわかる通り、1900年くらいの時は米国がそこまでなくてイギリスが25%を占めていたわけです。今は米国が2017年だったら51%ぐらいで、今が60%ぐらいを占めています。しかし、これが維持されるのかは誰にもわかりません。
もう一つ、僕たちがお金を使う時期に本当に調子がいいのかも大切です。
●1899年から2017年の世界の時価総額の推移
井上ヨウスケさんの資料より
図は1900年 から2017年までの推移を表しています。
僕らは一生涯、永遠に投資をするわけではなく、だいたい30年とか長くて半世紀です。この期間で、投資先の国がまずどうなのかという問題があります。
また、この図でいうと米国だけに投資していた人がもし1990年ごろにお金を使おうと思ったら、それほど使えるお金が多くないっていうこともあり得るわけです。
僕らがお金を使いたい時にちょうど調子が悪いかもしれないというのもあったりするので購買力にフォーカスをするのであれば、やはり基本は全世界ではないかと思います
頼藤:1990年は日本が大部分を占めていますもんね。こうやって見ると、いつどの国が高いのかは分かりづらいですよね。高山さんはいかがでしょうか。
高山:世界経済がどうなるなかなかこう読むのって難しいじゃないですか。その中で運用のプロのファンドマネージャーの方とお話ししていても、どこが伸びるかというのはなかなか判断できないという話もあります。
プロのファンドマネージャーでさえ「ここが伸びる」とわからないのなら、一般の私たちはもっとわからないかなと思うので、やっぱり基本的には幅広く投資をしておくっていう方がいいのかなと思います。
頼藤:ありがとうございます。そうですよね。というのも僕も全世界株派ですね(笑)。
世の中に完璧な商品はありません。人間の調子や歴史と同じように、上がったり下がったりを繰り返していくのが常です。大儲けするならば「集中投資で全米株」が最近までは正解だったのかもしれませんが、この先の話ですよね。負ける確率を減らすことが大事ということと、米国もずっとトップを走らないのではないかという目線があります。
中国やインドが台頭してきました。戦争も起こっています。ビットコインものし上がってきて通貨の本質を問われています。そして米国の債務上限問題もあったりします。
リスクを減らすという目線では、全世界株がいいと思っております。
まとめ
頼藤:結論、全世界株でOK。理由としては
・世界経済はトータルで成長
・世界分散することでリスク低減
・米国一強が今後続く可能性は低くなっている
・とはいえ、全世界株に投資することで、全米株にも投資はしている
勝つより「負けることを回避」というところを手間なくできるのは何かといったら、全世界株ではないか、といったところです。
今回の内容の動画もぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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