21/05/26
高年収でも安心できない、注意すべき年金3つのポイント
普段何気なく受け取っている給与明細やねんきん定期便をしっかり確認したことはありますか?私たちは年金のことをつい「老後のことだから」と後回しにしてしまいがちですが、今の段階から注意する必要があるポイントがいくつかあるのです。そこで今回は、年金について年収が高い人こそ注意すべきポイントを3つご紹介いたします。
まずは年金のしくみを簡単におさらい
具体的な年金の話をする前に、まずは簡単に年金のしくみについておさらいしておきましょう。日本の「公的年金」は一般的に「2階建て」と言われています。1階は国民が全員加入する「国民年金」、2階部分は職業などによって上乗せで年金を受け取れる「厚生年金」です。これにもう1階加えて「3階建て」と言われる場合、3階部分は企業などが運営している「企業年金」というものです。
厚生年金を受け取れるのは、厚生年金の適用を受けている事業所に勤めている会社員や公務員などであり、自営業者や個人事業主、学生や無職の人は厚生年金を受け取ることはできず、基本的に国民年金のみ受け取れるしくみになっています。ただし、この国民年金の月額は約6万5000円(2021年度)と、これだけで生活していくことは難しい金額になっています。さらに未納期間があるとこれより減額されてしまいますので、注意が必要です。
一方厚生年金については、現役時代の収入によって受け取れる金額が変わってきます。たとえば、年収600万円程度で40年加入していれば厚生年金の受給額(年額)は138万円程度となります。月平均にすれば11万5000円ほどと、やや少ない気もしますが、国民年金の月額約6万5000円と合わせるとなんとか生きていけないこともない、という金額にはなります。
そんな年金ですが、年収が高い人こそ注意したいポイントが3つあります。
①遺族年金は高収入だともらえない
遺族年金とは言葉の通り、一家をささえる働き手や年金を受け取っている人が亡くなったときにその遺族に支給される年金のことです。亡くなった人の年金の加入状況に応じて「遺族基礎年金」、「遺族厚生年金」のいずれか、もしくは両方を受け取ることができます。
これらの遺族年金の受給要件の一つに「死亡当時、死亡した方によって生計を維持されていた方」というものがあります。これは、「死亡当時、死亡した方と生計を同一にしていた方で、原則として、年収850万円未満の方が該当」するというのです。つまり、年収850万円を稼いでいた場合、残された家族は遺族年金の受給資格がないということになります。
ただし、死亡当時に年収850万円以上だった場合でも、退職や廃業などで、年収が5年以内に850万円未満となると認められる場合は、遺族厚生年金を受け取ることができます。
②共働きの場合遺族年金の額が少ない
大前提として、国民年金は1人あたりに決まった額を支給する制度であり、配偶者がなくなったからと言ってその分遺族が受け取れるという性格のものではありません。ですが、厚生年金はやや性格が異なります。夫婦がどちらも生きているうちはいいですが、いずれかが亡くなった場合、
①配偶者の厚生年金の3/4
②自分の厚生年金
③夫婦の厚生年金合計の1/2
のいずれか高い金額を受け取れるというしくみになっています。
たとえば、ずっと専業主婦(夫)だった家庭の場合、外で働いていた方が亡くなれば、外で働いていた方の厚生年金の3/4が受け取れることになります。専業主婦(夫)をしていた方が亡くなった場合にも、外で働いていた人には自分の厚生年金がありますから、年金受給額が減るということはありません。
しかし、共働きでどちらも同じくらいの収入を得ていた場合は、少し異なります。
たとえば夫婦ともに国民年金・厚生年金を計150万円ずつ受け取っていたとします。このとき、家計には300万円の収入があったことになります。しかし、どちらかが亡くなれば、亡くなった方の国民年金がなくなりますし、厚生年金も②自分の厚生年金、③夫婦の厚生年金合計の1/2のいずれか高い金額が受け取れるというしくみなので、まるっと配偶者の厚生年金分マイナスになってしまうのです。つまり、家計単位でみると年金による収入は半減してしまうのです。
③年収約762万円以上の人は厚生年金額はふえない?
最後は厚生年金についてです。2020年9月に「標準報酬月額の上限」が改定されました。これまでは「31等級の62万円」が上限とされてきましたが、あらたに「32等級の65万円」が追加されたのです。これはつまりどういうことなのでしょうか。
そもそも厚生年金の保険料は、標準報酬月額という段階的な報酬の月額を使用して決めています。これまで、標準報酬月額は31 種類に分かれていました。しかし、2020年9月以降は32等級が新設されました。
31等級は報酬月額が「60万5000円」以上の被保険者が割り当てられていました。32等級の登場により、「63万5000円」以上の報酬月額を受け取っている人、つまり年収約762万円の人は32等級に該当することになってしまいました。その分、支払う厚生年金保険の保険料は高くなるのです。
まとめ
いかがでしたか。今回は、年収が高い人ほど注意したい年金のポイントについてご紹介しました。収入があるに越したことはありませんが、現行の制度にあてはめるとやや不利になるケースもあるようです。収入に余裕があるのならiDeCoやつみたてNISAを利用したり、年金を繰下げ受給したりして、老後資金を少しでも増やすようにするといいでしょう。
【関連記事もチェック】
・最高クラスの年金をもらえる人は意外と多い
・パートは手取りが減っても厚生年金に加入したほうが得なのか
・2022年の年金改正、対象にならない人は意外と多い
・月収20万円・30万円・40万円の人が40年会社に勤めたら、年金はいくらもらえるのか
・夫婦・シングル世帯がもらえる年金額の平均は? 年金だけで経済的自立はできるのか
大塚 ちえ ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員Ⅰ種
新卒から証券会社一筋で働く、現役アラサー金融ウーマン。スポーツと音楽が趣味。金融機関勤めで得た知識と経験で、キャリアやお金、結婚・恋愛のことなどいろんな女性の悩みに向き合う。現代日本に生きる働きすぎな女性にエールを送る。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう