20/12/10
年金は申請しないともらえない! もらい忘れのある年金は意外と多い
「年金はいくらもらえるのか」と不安に感じている人は少なくないはずです。しかし一方で年金は改正を重ねた結果、複雑でわかりにくい制度になっています。
毎月保険料を納めてきて、年金を受け取れる年齢や要件を満たしていても、請求の手続きをしないと年金を受け取ることができません。そこで今回は、定年後に受け取れる年金を中心に、手続きの手順をチェックしていきます。
老齢年金の手続き
原則として65歳になると、老齢基礎年金や老齢基礎年金を受け取ることができます。ただし、年齢によっては、60歳から65歳までに「特別支給の老齢厚生年金」受け取れる場合もあります。65歳から年金を受け取る場合には、年金請求書が届いたら、必要書類を準備して提出します。
なお、65歳で年金の請求を行わず、66歳以降にもらう「繰下げ支給」を選択することもできます。
<手続き>
①受け取りができる年齢の3か月前に、日本年金機構から年金請求書が送られてきます。
②年金請求書に必要事項を記入して、必要書類を添付して提出します。
必要書類は基本的に次のとおりですが、請求内容によっては他にも必要になるので、詳しくは年金事務所に問い合わせてください。
・年金手帳または厚生年金保険被保険者証
(配偶者のいる人は、配偶者の年金手帳または年金証書の写しも)
・戸籍謄本(または戸籍抄本、住民票の写し)
・本人名義の金融機関通帳など
・印鑑
提出先は、国民年金だけの人は市区町村の窓口、それ以外の人は年金事務所です。
③約1~2か月後に、年金証書・年金決定通知書などが届きます。
④毎年偶数月の15日に、2か月分が支給されます。
人生の節目の手続きに注意
年金をもらうには、国民年金・厚生年金保険・共済組合のいずれかに少なくとも10年間加入して、保険料を納めている必要があります。しかし、長い人生のうちには、就職、結婚、退職などがあり、それによって種別が変わり、年金の届け出が必要になることがあります。
特に配偶者が定年退職した場合、会社員や公務員などで扶養されていれば、第3号被保険者から第1号被保険者に変わります。うっかり届け出を忘れてしまうと、受け取る年金額が減ることになります。届け出先は次のとおりです。
・第1号被保険者(自営業の人・フリーランス・学生など)
住んでいる市区町村の国民年金の担当窓口
・第2号被保険者(会社員・公務員など)
勤務先の担当部署
・第3号被保険者(会社員・公務員などに扶養されている配偶者)
配偶者の勤務先の担当部署
知らないと損をする!もらえる年金をチェック
毎年誕生日ごろに届くねんきん定期便には記載されない年金があります。自分や配偶者の年金を確認しているという人でも、請求の手続きが漏れていないかチェックしましょう。
●加給年金
加給年金は、厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人が老齢基礎年金を受けられるようになったとき、その人によって生計を維持されている65歳未満の配偶者や子がいる場合に上乗せされる年金です。配偶者が65歳になると「振替加算」に移行し、支給停止になるしくみです。いわば家族手当のような年金です。年金額は年額22万4900円~39万900円が上乗せされます。
<手続き>
厚生年金を請求する際に、年金事務所か街角の年金相談センターで申請します。
●振替加算
振替加算は、加給年金額の対象となっていた配偶者が65歳になり、自分の年金を受けられるようになったときに付く加算です。年金額は年額1万5068円~22万4900円です。ただし、1966(昭和41)年4月2日生まれ以降は受給できません。
<手続き>
年金を請求するときに申請をしていれば、切り替わります。その際請求書に記入もれがあると振替加算が行われないため、その場合には振替加算のための届け出を行いましょう。
万一のときにもらえる年金
年金には遺族年金といって、生計を維持していた人が亡くなった後に遺族に支給されるものがあります。加入制度や家族構成によって、年金の種類が決まります。遺族基礎年金や遺族厚生年金以外のものについて見てみましょう。
●国民年金加入者の場合
・寡婦年金と死亡一時金
寡婦年金は、亡くなった夫と婚姻期間が10年以上あった妻が、60歳から65歳になるまでの5年間受け取れます。年金額は、夫が受けられたであろう老齢基礎年金額の4分の3です。
また、死亡一時金は、亡くなった人の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹のうち、いずれかの遺族が受け取れます。年金額は、亡くなった人が納めた月数により12万~32万円と異なります。この寡婦年金と死亡一時金は、同時に受け取ることはできないので、どちらかを選択します。
<手続き>
市区町村の年金窓口へ死亡の届け出をします。
●厚生年金加入者の場合
・中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算
遺族厚生年金には、夫がなくなったときに40歳から65歳になるまでの間は、条件をみたす子がいないときに妻が受け取れる中高齢寡婦加算があります。年額58万6300円支給されます。
65歳以上の妻には、生年月日によっては、特別な加算が行われ「経過的寡婦加算」が受給できます。年額1万9567円~37万9379円です。ただし、1956(昭和31)年4月2日以降に生まれた妻には、加算されません。
<手続き>
在職中なら勤務先に死亡届を提出します。年金をもらっている場合には年金事務所に届けます。
もらうのを忘れがちな年金
せっかく保険料を納めても、請求しないままでもらい忘れてしまうと残念な結果になります。
●特別支給の老齢厚生年金
老齢厚生年金の支給開始は65歳と決められていますが、以前は60歳(女性は55歳)であったため、特例的に60歳前半に老齢厚生年金が支給される場合があります。この特例的支給を「特別支給の老齢厚生年金」といいます。そこで、この年金も繰り下げれば受取額が増えると勘違いして、請求しないままの人がいます。しかし、特別支給の老齢厚生年金は先延ばしにしても年金額は増えないので、たとえ働いていても支給開始年齢の誕生日がきたら受給の申請をするとよいでしょう。
●企業年金
会社の退職金には、一時金でもらうもののほか、一部が企業年金として払われる会社もあります。たとえ1か月でも加入していれば、受け取ることができますが、申請しなければもらえません。
とくに、女性で結婚前に勤めていた会社に企業年金があるケースは、名字が変わると本人の特定が難しくなります。加入していた記憶がある場合には、企業年金連合会のサイトや企業年金コールセンターに問い合わせしましょう。
●亡くなった人の未支給年金
年金は後払いのしくみになっています。そのため、公的年金を受け取っていた人が亡くなって死亡届を提出しても、受け取っていない年金が発生します。たとえば、11月20日に亡くなった場合、12月15日に支給される予定の年金(10月分・11月分)が発生します。未支給年金は、本人と生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、それ以外の3等身内の親族が請求し、受け取ることができます。
もし、もらい忘れていた場合の対処法
年金を受け取るには、請求書を提出が必要です。もらい忘れていることに気づいたら、その時点で請求しましょう。さかのぼって受け取ることができます。年金の支払いを受ける権利には時効があり、5年間で消滅します。ただし、やむを得ない理由や年金記録の訂正があった場合には、5年を過ぎても受け取れる場合があります。年金事務所に相談してみましょう。
年金は年齢、性別、家族構成、働いてきた年数など、わずかな違いで支給額に差が出ます。
他人の受給例は参考にできないので、不明な点は、年金事務所や街角の年金相談センターなどで相談や確認するとよいでしょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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