20/11/21
「1日生まれ」は年金を1ヶ月分多くもらえるは本当? 誕生日による有利・不利はあるのか
将来、老齢年金の受給年齢に到達し、初めて年金を受け取る時のことを想像してみてください。今まで長い間ずっと年金保険料を納めてきた方は「ついにこのときが来たか!」と感慨深いですし、きっとワクワクするはずですよね。
ところで、この初めての年金、誕生月が同じでも、誕生日による違いによって、支給対象月が変わることがあるのをご存知でしょうか。例えば、今年65歳になる4月1日生まれの人は4月分の年金から貰えますが、もし4月2日生まれの人であれば4月分は貰えずに5月分の年金から支給されるのです。つまり、1日生まれか2日生まれかたった一日の違いで、1ヶ月分早く年金が貰えるかどうかの運命が分かれるわけです。
この差はいったいどこからくるのでしょう…。そんな疑問に答えるべく、今回は年金支給の基本的なルールの確認と、誕生日による有利・不利はあるのかについて検証してみたいと思います。
まずは年金支給の基本的なルールをおさらい
年金は受給する権利が発生した日の翌月分から支給対象です。老齢年金は支給開始年齢到達日、障害年金は障害認定日、遺族年金は死亡日が受給権発生日となり、その翌月分から月割りで計算されて支給されます。
●各種年金の受給権発生日と支給対象月
老齢年金は支給開始年齢到達日、障害年金は障害認定日、遺族年金は死亡日が受給権発生日となり、その翌月分から月割りで計算されて支給されるのです。
つまり、今回のテーマである老齢年金では、支給開始年齢の65歳に達した日が年金を受給する権利が発生する日になります。これは誕生日のことを指すと思いがちなのですが、厳密には違います。法律に関係するものでは「○○歳に達する日」とは、すべて誕生日の前日を指すからです。
よく「4月1日生まれは早生まれ」というのも、前日の3月31日、つまり前年度に歳を取るからという理由からです。年金支給のルールでも同様で、年金受給権が発生するのは、支給開始年齢に達した日(つまり誕生日の前日)の属する月に発生して、翌月分から年金が支払われるというのが年金支給のルールになります。
「1日生まれ」が年金を1ヶ月分多くもらえるカラクリ
このルールにより、誕生月が同じでも、誕生日による違いによって、受給開始月が1ヶ月早まるケースが発生します。具体的なケースで比較してみましょう。
●受給権発生日による年金支給対象月の違い
年金の受給資格は前述した通り、65歳の「誕生日の前日」に発生し、その翌月が受給開始月になります。上図のケースで比較すると、4月1日生まれのAさんは、前日の3月31日に年金の受給資格が発生し、翌月の4月以降が年金支給対象月になるのに対し、4月2日生まれのBさんは、前日が4月1日になり、年金支給対象月は5月以降になります。
「1日生まれ」は、トクなのか?
ここまでの説明だと、月初めの「1日生まれ」のAさんは、トクだなと思ってしまうのですが、本当にそうなのでしょうか。「1日生まれ」は、早く歳を取って早く年金が発生する分、年金保険料も1ヶ月早く納める義務が発生します。
通常、20歳に到達した日の属する月分から国民年金保険料支払い義務が発生するので、4月1日生まれの人は3月31日に20歳に到達するので、3月分から保険料を納めなければなりません。逆に4月2日生まれの人は4月1日に20歳に到達するから4月分から保険料を納めればいいわけです。だから、年金受給する際のおトク感は確かにあるものの、実際には得にも損にもなってはいないということになります。
まとめ
年齢や生年月日は、年金(特に老齢年金)の受給にとっては非常に重要なポイントです。誕生日の前日に歳を取るという考え方、ぜひ覚えていてくださいね。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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