22/07/01
女性の老後のお金「3つのリスク」に備える方法
女性の老後には老後のお金に直結する3つのリスクがあることをご存じですか?女性が安心して老後生活を送るためには、リスクを軽減するための対策が必要になります。ここでは女性の老後に起こりうる3つのお金のリスクについて解説し、その対策としてやっておきたい5つの方法をご紹介します。
女性の老後のお金にある3つのリスク
女性は男性に比べて、老後のお金に関するリスクが高い傾向にあります。なかでも、ここで紹介する3つのリスクは女性ならではのものです。
●女性の老後のお金のリスク1:受給できる老齢年金は比較的少ない
女性は男性と比べると賃金が低い傾向にあります。また、結婚や出産、育児などで休職することも多いので、勤務期間が男性よりも短くなりがちです。そのため、老齢厚生年金の受給額が男性よりも少なくなります。
厚生労働省が公表する「2020年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、65歳以上の人が受け取る老齢年金の平均年金月額(基礎年金月額を含む)は男性が17万391円のところ、女性は10万9205円という結果が出ています。女性は男性よりも約6万円も年金額が少ないのです。
ちなみに、総務省統計局が公表した家計調査報告(家計収支編)のコロナ禍前の2019年の結果によると、単身の高齢無職世帯における消費支出は13万9739円でした。男性は平均的な年金月額が17万391円ですから、何とか生活は送れるかもしれません。けれども女性の平均的な年金月額は10万9205円ですから、約3万円不足することになるのです。女性が年金だけの生活を送るのは厳しいことがうかがえます。
●女性の老後のお金のリスク2:女性は男性よりも長生きする
厚生労働省の「2020年簡易生命表の概況」によると、平均寿命は男性が81.64歳、女性は87.74歳という結果が出ています。女性の方が男性よりも約6年長生きするのです。
もし夫に先立たれた場合、遺族厚生年金が受け取れるので大丈夫と考えている人もいるかもしれません。でも、本当に大丈夫でしょうか?
65歳以上で受け取れる遺族厚生年金の額は、「夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3」または「夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の3分の2と妻自身の老齢厚生年金の2分の1を合計した額」を比較して高い方の金額になります。ただし、遺族厚生年金の額のうち、妻が受給する老齢厚生年金に相当する分が支給停止になります。妻は多額の遺族年金を受け取れるわけではないので、生活費の見通しを立てておくことは必須といえます。
●女性の老後のお金のリスク3:女性は健康寿命と平均寿命の差が大きい
健康寿命とは、日常生活が制限されることなく健康に過ごすことができる期間のことをいいます。厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」によると、2019年度の健康寿命は、男性が72.68歳、女性は75.38歳でした(健康寿命は3年に一度公表)。
ここで注意しておきたいのが平均寿命と健康寿命の差です。平均寿命から健康寿命を引いた期間は、病気や介護状態になって日常生活が制限される期間といえます。2019年度の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳。健康寿命との差は男性が8.73年、女性は12.07年でした。つまり、女性は男性よりも病気や介護のケアを必要とする期間が長くなるかもしれないのです。その分、女性は医療費や介護費用がかかるかもしれません。
老後生活でお金に困らないよう備えておきたい5つの方法
老後の女性にある3つのお金のリスクを紹介しました。女性は、老後資金が不足するかもしれないのです。3つのお金のリスクに備えるため、私たち女性が老後のお金に困らないよう、備えておきたい5つの方法をご紹介します。
●女性の老後のお金の備え1:厚生年金に加入して長く働く
厚生年金は70歳まで加入することができます。そこで、できるだけ厚生年金の加入期間を増やすために、長く働くことをおすすめします。老齢年金は65歳から受給できるので、それまでを目途に働いてもよいかもしれません。加入期間が増えた分、老齢厚生年金が増えるので、老後の生活費を補てんすることができます。
●女性の老後のお金の備え2:国民年金の任意加入で受給額を増やす
満額の老齢基礎年金をもらうには、20歳から60歳までの40年間、国民年金に加入しなければなりません。しかし、大学時代は学生納付特例制度を利用していたり、未加入の期間があったりして、加入期間が40年に満たない場合もあります。そこで、60歳以降は働かないつもりならば、60歳から国民年金に任意加入するとよいでしょう。任意加入することで、老齢基礎年金を満額に近づけることができます。ただし、厚生年金に加入して働く人は任意加入できないのでご注意くださいね。
●女性の老後のお金の備え3:年金を繰り下げ受給する
通常、老齢年金は65歳から受給できるようになります。でも、預貯金等があり老齢年金の受給を遅らせても大丈夫なら、繰り下げ受給をおすすめします。繰り下げ受給は、1ヶ月単位で受給を繰り下げることができ、1ヶ月につき0.7%年金額を増額できます。最大75歳まで繰り下げることが可能で、増額率は、70歳まで5年間(60ヶ月)繰り下げた場合は42%、75歳まで10年間(120ヶ月)繰り下げたら84%増額できます。
●女性の老後のお金の備え4:iDeCoやつみたてNISAを利用する
将来、受給する年金を補てんするために、老後資金の貯蓄はしておきたいですね。ただ、低金利時代の今、預貯金だけではなかなかお金は増えていきません。そこで、運用を取り入れてみるのはいかがでしょうか。運用益が非課税になり、掛金全額が所得控除になる「iDeCo(イデコ)」や、年間40万円までの投資で得られる運用益が最大20年間非課税になる「つみたてNISA」は、少額から始められ、運用初心者でも気軽にできる運用方法としておすすめです。
●女性の老後のお金の備え5:フリーランスなら付加保険料を上乗せする
個人事業主やフリーランスで国民年金保険料を納めているのなら、付加保険料を上乗せすることをおすすめします。月々の保険料に400円の付加保険料を上乗せして納めると、老齢基礎年金に「200円×付加保険料納付月数」の付加年金額(年額)が上乗せされます。受け取れる付加年金額を1ヶ月分に換算するとわずかですが、老齢基礎年金を受け取っている間は受給が続き、2年以上受け取ると納めた付加保険料の元が取れます。
まとめ
女性の老後には、受け取れる年金が少ないこと、男性より長生きすること、健康寿命と平均寿命の差が大きいことという3つのリスクがあります。そのため、医療費や介護費用も含めた老後資金の準備が必要になります。老後のリスクに備えるため、今回ご紹介した5つの方法を検討し、実践してみてくださいね。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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