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20/11/15

家計・ライフ

生活保護と年金のダブル受給は可能なのか

生活保護と年金のダブル受給は可能なのか

生活が困窮してどうにもならなくなったとき、思い浮かぶのが生活保護です。でも、そのとき年金の受給資格があったら、ダブル受給はできるのでしょうか? そこで今回は、生活保護制度と年金制度の基本的な内容を見ていきながら、ダブル受給が可能かどうか解説します。

生活保護制度の基礎知識

生活保護制度とは、生活に困窮するほど収入や資産がわずかで、経済的な援助をしてくれる親族もいない人に対して、最低限度の生活を保障し、自立を助けるための制度です。困窮の度合いに応じて、下記の扶助が受けられます。

・生活扶助(生活に必要な費用の援助)
・住宅扶助(アパートなど住まいの援助)
・医療扶助(医療サービス費用の援助)
・介護扶助(介護サービス費用の援助)
・教育扶助(義務教育に必要な学用品費など)
・出産扶助(出産費用)
・生業扶助(就業での技能取得にかかる費用)
・葬祭扶助(葬祭費用)

生活保護の相談や申請を行う窓口は、住んでいる地域を管轄する福祉事務所です。申請後、世帯収入や資産状況などの調査が行われ、支給要件に合う場合に生活保護費の支給が始まります。

毎月、生活保護費としてどれくらい受給できるのか、2020年10月1日現在における生活扶助基準額の支給例を見てみましょう。

●生活扶助基準額の例 (令和2年10月1日現在)

厚生労働省「「生活保護制度」に関するQ&A」より

なお、高校生までの子どものいる家庭には児童養育加算(月1万円)、ひとり親世帯には母子加算(月1.7万円)が追加で支給されます(上記は加算分を含んだ金額です)。

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年金制度の基礎知識

日本では、老齢年金、障害年金、遺族年金といった年金制度があり、国民年金や厚生年金に加入している人が要件に応じて受け取ることができます。
ではここで、老齢年金と障害年金について見ていきましょう。

●老齢年金

○老齢基礎年金
国民年金や厚生年金の保険料を納めた期間と保険料免除期間を合算して10年以上ある人が受け取れる年金です。原則、65歳から受給することができます。また、20歳から60歳までの全期間(40年)保険料を納めた人は、満額の老齢基礎年金を受け取れます。2020年4月から満額で受給できる老齢基礎年金は、年額781,700円です。

○老齢厚生年金
1年以上厚生年金に加入しており、老齢基礎年金に必要な受給資格期間(10年)がある人が65歳になったら受け取れる年金です。老齢基礎年金に上乗せして支給されます。ちなみに、平均的な収入を得ていた夫婦世帯の2020年4月からの老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた受給額は、月額220,724円となっています。

●障害年金

○障害基礎年金
病気やケガが原因で障害を負ったとき、一定の要件を満たす場合に支給される年金です。
2020年4月からの障害等級別の年金額(年額)は以下の通りです。
・1級:781,700円×1.25+子の加算
・2級:781,700円+子の加算
 ※子の加算;第1子・第2子224,900円、第3子以降:75,000円

○障害厚生年金
厚生年金の加入者が病気やケガで障害を負った場合、一定の要件を満たせば受給できます。
2020年4月からの障害等級別の年金額(年額)は以下の通りです。
・1級:報酬比例の年金額× 1.25 + 配偶者の加給年金(224,900円)※
・2級:報酬比例の年金額+配偶者の加給年金(224,900円)※
・3級:報酬比例の年金額(最低保障額:586,300円)
※配偶者の加算年金は、65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます。

生活保護と年金は同時に受給できる?

生活保護を受けなければいけないほど生活が困窮している人でも、各種年金の受給資格を持っている場合があります。そんなとき、生活保護と年金は同時に受給できるのでしょうか?

結論から言うと、生活保護と年金は同時に受給することができます。しかし、どちらも満額を受け取れるわけではありません。
原則として、年金やその他の収入がある場合、親族の扶養が望める場合、資産を持っている場合は、年金や親族の扶養、資産が優先されます。それでもなお、年金や収入が極度に少なく、生活保護の受給が認められる場合に限り、同時受給が可能になります。

生活保護の受給が認められる場合とは、年金などの収入が厚生労働大臣の定める基準で計算された最低生活費に満たないときです。
この場合に支給される生活保護費は、

生活保護費=最低生活費-年金・その他の収入等

と計算されます。
要するに、最低生活費は保障されますが、年金収入が最低生活費を超える場合は生活保護を受給できないということですね。

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生活保護と年金のどちらを優先すべき?

生活保護を受けたいくらい生活が困窮した時点で、年金の受給資格があった場合、どちらを優先しようか迷うことがあるかもしれません。こんなときはどうすればいいのでしょうか?

ここで、年金と生活保護の本質的な部分を振り返ってみましょう。年金は、たとえ他に収入があったとしても、受給資格があれば一律に支給されるものです。反対に、生活保護は最終的な手段となります。なぜなら、生活保護より先に、年金やその他の収入、親族の扶養、所有する資産が優先されるからです。そのうえで、最低生活費を下回る場合に生活保護費は支給されます。

つまり、生活保護よりも年金が優先されるようになっているのです。受給資格のある年金を受給して、それでもなお生活が苦しい場合は、福祉事務所で生活保護の相談をされることをおすすめします。

生活保護のメリット・デメリット

生活保護の受給にはメリットとデメリットがあります。

●生活保護のメリット

・必要最低限の生活費を受け取ることができる
・支払いが免除となるものがある
(税金や公共料金のほか、医療費、介護サービス費など8つの扶助による免除)

●生活保護のデメリット

・年に数回、福祉事務所のケースワーカーによる家庭訪問がある
・毎月、収入状況を申告しなければならない
・親族に扶養照会が入り、生活保護を受けていることが知られる
・ローンを組むことができない
・クレジットカードが使えない
・車などの贅沢品は持てない

生活保護の受給はメリットだけでなく、上記のようなデメリットもあることを押さえておきましょう。

前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士

2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。

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