18/10/18
まず値札を見る人は要注意!FPが考える、損をしない買物術
スーパーマーケット、デパート、あるいはインターネットショッピングでも、まず値段をチェックする人は少なくありません。
確かに、値段は大切です。その品物を買うか買わないかを決める、重要な判断材料になるからです。しかし、品物そのものを見るより先に値段を見る人は、損をしてしまうこともあるので注意が必要です。
値札でおトクに思わされているかも?!
ある品物の値札に「1000円」とだけ表示されている場合、これだけではおトクかどうかわかりません。どんな商品なのか品質やスペックをしっかり確かめなければ、適正な価格なのか、おトクなのか、はたまた高額すぎて損する価格なのかの判断はつかないのです。
ところが、先に値段を見てしまうと、品物を冷静に評価できなくなってしまう場合があります。
たとえば、「通常価格3000円」が赤線で消されたすぐ上に、「特別価格1000円」と表示されているケースです。こうなっていると、いつもは3000円のものが特別に1000円に安くなっている、ということが、即「おトク!」という判断に結びつきがちです。
すると、本当に値札の金額よりも高い価値のある、おトクな品物なのかどうかをしっかり見極める前に、「おトク」の先入観が入ってしまうため、正しい判断ができなくなってしまいます。
その結果、1000円の値札の時には買わなかった品物でも、3000円が1000円に安くなっていると買う、という行動をとる場合は少なくありません。
このように、同じ値段の同じ品物でも、基準となる情報に左右されて価値を判断してしまうことを、行動経済学では「アンカリング効果」といいます。
アンカリングとは、アンカー(=いかり)を下ろすことです。港に入った船がいかりを下ろすとその場にとどまるように、人の気持ちもアンカリング効果によって、基準となる情報から離れられなくなってしまいます。
先ほどの例でいえば、「通常価格3000円」がアンカーになり、それを基準に1000円だとおトクと判断することです。
アンカリング効果は、シンプルだけど効果的
アンカリング効果は、シンプルで効果的なマーケティング手法です。そのため、さまざまな場面で用いられ、買う側はうっかり乗せられてしまうケースがあとを絶ちません。
値札の修正のほかには、「値段をふっかける」というのもアンカリング効果です。最初に伝えた値段がアンカーとなり、値引き交渉で安くなったとしても本当におトクなのかどうかは、品物の相場を知らなくては判断がつかないでしょう。旅先などでは注意したいケースです。
また、1個500円のケーキが4個で1700円、というケースは1個の値段がアンカーになっています。4個も食べ切れるのか、という考えは頭の隅に押しやられ、つい買ってしまうことがよくあるようです。
セミナーや講演会などにも、アンカリング効果が使われています。全5回のセミナーで1回の参加費が5000円、全部で2万5000円だったとします。これをまず表示しておいて、一括で5回分を申し込んだ先着○名まで1万5000円、として申込みをうながす手法がよく見られます。
資格をとるための通信教育では、○月○日までの申込みなら40%オフ、というのもあります。これもアンカリング効果です。安くなるから早く申し込もう、という気持ちにさせられやすくなります。
値段を判断するためには、自分なりの価値観が大切
洋服を買いに行って、同じジャケットなのに、1万円ならたいしたことないと見向きもしないのに、5万円が1万円に値引きしていたら「これはすごい、買わなきゃ損」、と思うでしょうか。
ここには、そのジャケットが自分のワードローブと合うかどうかや、着心地、クリーニングなどのメンテナンスのことなどの判断が二の次になってしまうリスクがあります。
品物を買った満足感は、実はあまり持続力がありません。どんなに素敵でおトクな品物を買っても、人は慣れてしまうものだからでしょうか。
何かを買う時はその場限りの満足ではなく、その後のことも考慮にいれて品物を選びたいものです。
それには、自分なりの価値観を養うことが大切。
まず値段を見ると、まちがった判断をさせられる場合がよくあります。
これからはまず品物を見て、それから値段が見合うかどうかを判断してはいかがでしょうか。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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