20/09/27
9月から厚生年金保険料増額 手取りが減るのはどんな人?
2020年9月から厚生年金の標準報酬月額の上限額が引き上げられたのはご存知でしょうか。
給料から天引きされる厚生年金保険料は、標準報酬月額に料率をかけたものなので、上限額が引き上げられることにより、今まで上限額に該当していた人は、保険料が増える可能性があります。
誰が対象となるのか、保険料が増えて手取りがいくら減るのか、将来の年金はどうなるかを説明しましょう。
厚生年金保険料はどうやって決まる?
国民年金の保険料は所得に関係なく一定額なのに対して、厚生年金の保険料は給料やボーナスの額によって変わってきます。
具体的には、「標準報酬月額」と「標準賞与額」にそれぞれ保険料率をかけて計算します。保険料率は、2017年9月から18.3%と現在も変わっていません。会社が半分負担なので、実際の被保険者の負担割合は9.15%となります。
「標準報酬月額」は、毎月の給料など、報酬の月額を区切りのよい幅で区分したものです。今までは1等級(88,000円)から31等級(620,000円)まで区分されていましたが、2020年9月からは、更にその上に32等級(650,000円)が新設されたのです。
出典:日本年金機構ホームページ
なお、今回引き上げられたのは標準報酬月額のみです。標準賞与額の上限(150万円)に変更はありません。
標準報酬月額の上限引き上げはどんな人に影響あるの?
報酬月額は、基本的には毎年4月~6月の3カ月間の総報酬の平均で決まります。なので、今回の厚生年金の標準報酬月額の上限引き上げの影響を受けるのは、「2020年4月~6月の3カ月間の総報酬を足して3で割った平均が、635,000円以上の人」となります。つまり、総報酬の高い人の厚生年金保険料が上がり、手取りが減るというわけです。
なお、「総報酬」は給与明細の支給欄の一番多い額、つまり残業手当や通勤手当などの諸手当も含んだ金額の合計です。
決して毎月の給与の総額に対して保険料率をかけて、毎月計算するのではないので注意してください。
保険料の増額で手取りはどうなるのか?
2020年8月分までは、報酬月額605,000円以上の人を上限等級の31等級の対象とし、標準報酬月額620,000円としていましたが、2020年9月分以降は報酬月額635,000円以上の人を対象に上限等級32級とし、保険料の算定においては標準報酬月額650,000円とすることになりました。
これによって、報酬月額が635,000円以上の人の厚生年金保険料は、月額113,460円から118,950円にアップします。保険料は合わせて月5,490円高くなりますが、労使折半で実際の自己負担は半分のため、月額にして2,745円保険料が増えることになります。
給料の額や扶養している人数によって違いはありますが、厚生年金保険料の負担が約2,700円増えることで、給料から天引きされる所得税の額が約500円減額となるので、差引毎月の手取りはおおよそ2,200円ほど減ることになります。
将来どのくらい年金が増える可能性があるのか?
厚生年金は将来の老後資金の積立制度なので、厚生年金保険料の引き上げの対象となる場合、将来もらえる年金額は現行のままの場合よりも増えます。
厚生年金の受給額は下記のように計算されます。
筆者作成
標準報酬月額が30,000円上がったことにより、30,000円×5.481/1000=164.4円なので、ひと月164.4円年金が増えます。
1カ月だけで見ると少ない額ですが、例えば、今50歳の人が65歳までの15年間、標準報酬月額が上限の650,000円になっていたとしたら、年金は年間で約3万円増えることになります。
まとめ
毎年4月~6月の3カ月間にもらった総報酬を平均して、自身の「報酬月額」が決まります。今回の改定を機にご自身の報酬月額を確認してみてはいかがでしょうか。
手取りの減少が家計の負担にはなるかもしれませんが、厚生年金保険料は老後資金の積み立てなので、将来の年金は増えます。保険料の半分は会社が負担していることを考えると、上限の引き上げは決してデメリットだけではないのです。
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小野 みゆき 中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。
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