21/08/03
年収300万円の人の手取りはいくら? 所得税、住民税、社会保険料の計算方法と効果の高い節税3選
日頃、給与明細を見て、手取り金額を確認するだけになっていませんか。会社から受け取る源泉徴収票や住民税の決定通知書を見ても、内容がよくわからず、そのままという人は多いものです。しかし、もしみなさんがそうだとしたら、これから手取り収入が増やせる方法が見つかるかもしれません。
今回は、年収300万円の人の手取りの計算を通じて、税金・社会保険料のしくみをご紹介。手取りを増やすために使いたい制度も解説します。
年収300万円の人の手取りはいくら?
「年収300万円」というときの「300万円」は、ひとことでいえば会社から支給された給与収入の合計です。しかし、年収300万円だからといって、銀行口座に300万円がすべて振り込まれるわけではありません。銀行口座に振り込まれる手取りの金額は、給与収入から所得税・住民税・社会保険料等の金額を差し引いた金額です。つまり、「手取り金額=給与収入-所得税-住民税-社会保険料」です。
給与収入300万円の人で、所得控除が基礎控除と社会保険料控除だけという人は、手取りが236万8850円です。
●所得税
所得税の金額は、給与収入から給与所得控除と所得控除を差し引いた課税所得に、所定の税率を掛けて算出します。
給与所得控除は、速算表に当てはめると、給与収入300万円の場合98万円です。
所得控除は、基礎控除と社会保険料控除だけがあるとして、48万円と45万9000円なので、合わせて93万9000円です。
課税所得は300万円-(98万円+48万円+45万9000円)=108万1000円。
この場合の税率は5%ですので、所得税は108万1000円×5%=5万4050円です。
●住民税
続いて住民税を計算します。住民税も、所得税と同じ手順で、給与収入から給与所得控除と所得控除を差し引いて課税所得を求めます。ただし、住民税の基礎控除は所得税と異なり、43万円です。住民税は、均等割と所得割を合わせた金額になります。
給与収入が300万円の場合、給与所得控除は速算表により98万円です。
所得控除は、基礎控除の43万円と社会保険料控除45万9000円を合わせた88万9000円です。したがって、課税所得は300万円-(98万円+43万円+45万9000円)=113万1000円になります。
住民税額は、この課税所得金額に所得割の10%と均等割の5000円を合わせたものです。
所得割額は11万3100円、均等割は5000円なので、住民税は11万8100円になります。
●社会保険料
社会保険料は、給与の金額に健康保険料率11.64%、厚生年金保険料率18.3%を掛けた額を労使折半します(協会けんぽ東京40歳以上の場合)。
健康保険料と厚生年金保険料を合わせた従業員負担分を15%とし、雇用保険料0.3%と合わせて計算すると、45万9000円です。
以上より、手取り収入は、給与収入300万円から所得税5万4050円、住民税11万8100円、社会保険料45万9000円を差し引いた236万8850円ということになります。源泉徴収票には、所得税額が書かれているので、確認してみましょう。
年収300万円の人でも今からできる効果の高い節税3選
節税は高収入の人やお金持ちがすることなので、自分には関係ないと思っているかもしれません。しかし、税金を減らすには、収入から差し引くことができる「所得控除」をいかに増やすかがカギになります。ここでは、比較的取り組みやすい所得控除をご紹介します。
●iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)
iDeCoは、20歳から60歳までの人が利用できる老後資金の準備ができる制度です。毎月、定期預金や保険、投資信託の中から商品を選び、5000円以上1000円単位の掛金を拠出して自分で運用します。掛金の全額を所得控除することができるため、毎年の所得税や住民税が安くなるうえ、運用益にも税金がかからないなど税金の優遇制度が使えます。
毎年拠出できる掛金には上限があります。自営業は年81万6000円、会社員で企業年金がない場合には年27万6000円、公務員や企業年金がある会社員は年14万4000円などとなっています。
たとえば、年収300万円の会社員(所得税率5%・住民税率10%)が月額2万3000円拠出した場合には、年間に所得税と住民税が4万1400円節税できます。25歳から60歳までの35年間ともなると、節税額は約145万円です。もし35年間、年3%で運用できた場合には、資産は1705万円にもなります。
●セルフメディケーション税制
予防接種や健康診断などの健康増進の一定の取り組みを行う人が、スイッチOTC医薬品の購入をして年間1万2000円を超えて支払った場合には、10万円を限度として1万2000円を超える額を所得控除する制度です。たとえば、年収300万円の人が年間に5万円の対象医薬品を購入した場合、所得税・住民税が合わせて5700円安くなります。
なお、2022年度分以降は、内容の見直しが検討されています。
●ふるさと納税
ふるさと納税は、寄附金控除の一つで、応援したい自治体に寄付ができる制度です。手続きをすると、2000円を超える部分については、所得税の還付や、住民税の控除が受けられます。しかも、寄付をした自治体からはお礼の品(返礼品)がもらえます。
ふるさと納税の寄付の上限額は、給与収入や家族構成によって異なります。たとえば、給与収入300万円で独身の方の場合、目安となる寄付の上限額は2万8000円。この上限までふるさと納税で寄付をした場合、2000円を引いた2万6000円が所得税や住民税の控除対象になるのです。
なお、寄付した自治体が5か所以下で確定申告をしなくてもよい会社員などは、確定申告をしなくても自動的に住民税が安くなるワンストップ特例制度が利用できます。
まとめ
特別なことがない限り、確定申告をする必要のない会社員や公務員は、年末調整をするだけで税金の手続きは終わりです。しかし、所得控除は15種類あるので、上手に利用することにより、節税できる金額が増え、手取り収入が多くなります。これから利用できそうな所得控除があれば、今年は節税にチャレンジしてはいかがでしょうか。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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