18/11/07
将来の備えのための5つの資産形成制度〜フリーランス編〜
会社員・公務員のように勤め先からの退職金や傷病手当金などの補償がないフリーランスにとって、将来のために資金を蓄えることは非常に大切です。
今回はフリーランスの方が将来の備えのために利用できる5つの資産形成制度をご紹介します。
(1) 個人事業主のための退職金制度「小規模企業共済」
小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者・役員の方が加入できる積み立てによる退職金制度です。廃業時や退職時に一括または分割で給付を受けることができます。現在の予定利率は年1.0%ですが、受け取れる金額は請求事由によって異なります。例えば加入後25年目までに廃業した場合、掛金を1.5%の利率で複利運用した元利合計額が受け取れます。掛金は月額1000円から7万円の範囲で自由に設定が可能です。
● メリット
・その年の掛金の全額が所得控除の対象(所得税・住民税の節税が可能)
・積み立てた金額の範囲内で事業資金の貸付を受けることができる
・少額からの投資が可能
● デメリット
・納付月数が240カ月未満で解約した場合は、給付額が支払った掛金を下回る(12ヵ月未満では掛け捨て)
・個人事業主や経営者の配偶者や生命保険外務員など、条件や職業によっては加入できない
(2) 経済状況の変動や長生きリスクに備えるなら「国民年金基金」
国民年金基金は、自営業者などの国民年金の第1号被保険者が加入できる公的年金制度です。国民年金に上乗せすることで受給額を増やすことが可能です。現在の予定利率は年1.5%です。
給付は生涯給付が受けられる「終身年金型」と、将来の給付額を確定できる「確定年金型」の2種類から選択できます。国民年金基金は口数制で、1口目は必ず「終身年金型」となりますが、2口目以降はどちらも選択可能です。
「確定年金型」は給付期間中に加入者がなくなった場合、遺族に一時金が支給されます。「終身年金型」でも遺族に一時金が支給されるタイプのものがあります。
● メリット
・その年の掛金が全額所得控除の対象(所得税・住民税の節税が可能)
・「終身年金型」は長生きリスクに備えることができる
・「確定年金型」は経済状況が変化しても給付額が変わらない
● デメリット
・原則解約できない(第1号被保険者でなくなった場合等を除く)
・付加年金との併用ができない
自分で運用して高いリターンを狙うなら「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)」
iDeCo(イデコ)は「個人型確定拠出年金」の愛称で、ご自身で掛金を運用するタイプの年金制度です。2017年1月から個人事業主などの第1号被保険者も加入できるようになり注目を集めています。掛金は月額5000円以上で、第1号被保険者の上限は月額6万8000円です。この金額は「国民年金基金」の掛け金との合計額となります。
● メリット
・その年の掛金は全額所得控除の対象(所得税・住民税の節税が可能)
・自分で金融商品を選んで運用できるため、高い運用益を得ることも可能
・運用状況に応じて金融商品の変更や、商品の保有割合を変えることができる
● デメリット
・60歳になるまで給付を受けることができない
・加入時や金融機関の移管時、毎月の口座管理などに手数料がかかる
2年で元が取れる「付加年金」
付加年金は国民年金の保険料に月額400円を追加して支払うことで「付加年金を納付した月数×200円」が老齢基礎年金に増額されます。個人事業主などの第1号被保険者と任意加入被保険者が加入できます。国民年金基金との併用はできませんが、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)との併用は可能です。ただしiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)と併用する場合は、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)の上限額は月額6万7000円となります。
● メリット
・その年の付加保険料は全額所得控除の対象(所得税・住民税の節税が可能)
・月額400円なので、余裕資金が少ない方も安心して加入できる
・年間給付額は「200円×納付月数」なので、長く加入すればするほどお得
・2年以上長生きすれば支払った金額の元が取れる
● デメリット
・老齢基礎年金の受給前に加入者がなくなった場合、寡婦年金に付加年金分は加算されない
・遺族基礎年金にも付加年金分は加算されない
初心者でも始めやすい「つみたてNISA(積立NISA)」
少額からの長期運用を目的として2018年1月からスタートした少額投資非課税制度です。対象の金融商品の売却益に対してかかる税金が非課税となり、非課税期間は20年間と長く、年間の非課税投資枠も40万円と少額であることが特徴です。
また、つみたてNISA(積立NISA)で購入できる金融商品は手数料や信託報酬が安い・毎月分配が行われない商品に限定されているなど、初心者にやさしい仕組みになっています。
● メリット
・金融機関によっては少額から投資が可能
・対象商品の売却益にかかる税金が非課税となる
・いつでも引き出しが可能なため、老後資金以外にも利用できる
● デメリット
・株式やREIT(不動産投資信託)には投資できない
・年間非課税枠が従来のNISAと比べて少ない
まとめ
フリーランスでも今回ご紹介した制度を活用することで、将来のお金の不安に備えることができます。それぞれの制度の特徴をご理解したうえで、ご自身に合った制度を利用しましょう。
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・銀行?証券会社?NISA(つみたてNISA)はどこで運用するべき?
鈴木靖子 ファイナンシャルプランナー(AFP)、2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
銀行の財務企画や金融機関向けコンサルティングサービスに10年以上従事。企業のお金に関する業務に携わるなか、その経験を個人の生活にも活かしたいという思いからFP資格を取得。現在は金融商品を売らない独立系FPとして執筆や相談業務を中心に活動中。
HP:https://yacco-labo.com
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