24/11/04
年金の最高額はいくらもらえる?意外と少ないのは本当か
年金の平均受給額は約14万円といわれますが、最高クラスの年金額はいくらになるのでしょうか。
今回は、最高クラスの年金額を試算し、受給できる人はどのくらいいるのか調べてみます。さらに、年金額の決まり方や年金を増やす方法もご紹介します。
年金額の決まり方
公的年金は国民年金と厚生年金の2階建てです。老齢年金でいえば、保険料納付済期間や免除期間に応じて受給できる、すべての人が対象の老齢基礎年金が1階部分、会社員や公務員が受け取れる老齢厚生年金が2階部分になります。厚生年金の加入者は老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方をもらうことができます。
では、年金額はどのように計算するのでしょうか?老齢基礎年金と老齢厚生年金の年金額について、それぞれ計算方法を見ていきましょう。
●老齢基礎年金
老齢基礎年金の年金額は下記の計算式で求められます。
・老齢基礎年金=その年の老齢基礎年金の満額×保険料納付済月数÷480月
20歳から60歳まで480月(40年)、保険料を納付した人は満額の老齢基礎年金をもらえます。また、保険料の免除期間がある場合(全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除)、免除となった月数に一定の割合(全額免除は4/8、4分の3免除は5/8、半額免除は6/8、4分の1免除は7/8)を掛けて月数を計算します。
●老齢厚生年金
老齢厚生年金の年金額は、厚生年金の報酬比例部分と加給年金の合計額です。ただし、加給年金は該当者のみの受給となります。
報酬比例部分の計算式は以下の通りです。(※厚生年金の加入が2003年4月以降の場合)
・老齢厚生年金の報酬比例部分=平均標準報酬額×0.005481×加入期間の月数
平均標準報酬額とは、標準報酬月額と標準賞与額の総計を加入月数で割った金額のことです。標準報酬月額は、4月~6月に支給された報酬の平均額から求めた標準月額を32等級に分類したもので、上限は32等級の65万円となります。また、標準賞与額は実際の支給額から千円未満の端数を切り捨てた金額で、上限は月額150万円です。賞与に該当するのは、支給回数が年3回以下のものと決められています。
最高クラスの年金額はどのくらい?
以上をもとに、最高クラスの年金額を試算してみましょう。
●老齢基礎年金の最高額
国民年金の保険料納付済期間が40年の人は満額の老齢基礎年金をもらえます。2024年度では81万6000円が満額の老齢基礎年金です。
●老齢厚生年金の最高額
老齢厚生年金が最高額になるのは、以下のケースにあてはまる場合です。
・16歳から70歳まで厚生年金に加入(54年間:648月)
・月給が63万5000円以上
・賞与は上限の150万円で、かつ年3回支給
厚生年金保険料は32等級に区分けされており、年金額の計算には標準報酬月額が関わってきます。つまり、月給が63万5000円以上になると標準報酬月額が上限の65万円になるため、最高クラスの年金額をもらえることになります。
では、老齢厚生年金の計算式にあてはめてみます。
・老齢厚生年金の報酬比例部分=平均標準報酬額×0.005481×加入期間の月数
標準報酬月額は上限65万円で648月加入、賞与は最高額150万円を54年間、年3回受給と想定し計算すると、平均標準報酬額は102万5000円(標準報酬月額65万円+標準賞与額の1月分37万5000円)になります。
老齢厚生年金の年金額:102万5000円×0.005481×648月=364万480円
老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた最高クラスの年金額は以下になります。
81万6000円+364万480円=445万6480円 月額に換算すると、37万1373円です。
最高クラスの年金額は、月額37万1373円(2024年度の場合)であることがわかりました。
もっとも、最高クラスの年金額はあくまで計算上のもの。厚生労働省「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金(国民年金+厚生年金)受給者1599万6701人のうち月額30万円以上もらっている人で1万2490人、わずか0.07%に過ぎません。ましてや月額37万円ともなれば、もらえる人はまずいないと考えられます。
老後生活に向けて年金額を増やす方法
将来訪れる老後生活のことを考えると、年金だけの生活に不安を感じる人も少なくないでしょう。ここでは老後生活に向けて年金額を増やす方法を4つご紹介します。
●給与を増やす
給与が増えると標準報酬月額が上がるので、年金を計算する際の平均標準報酬額を増やせます。とはいえ給与は簡単に増やせるものではありませんが、勤務年数が増えたり役職に就いたりすることで昇給が見込めます。また、資格を取得することで資格手当が支給される場合もあるので、勤め先で確認するとよいでしょう。その他、年収の高い企業に転職する方法もあります。
●繰り下げ受給をする
通常、年金は65歳からもらうことができますが、受給開始年齢を66歳から75歳に繰り下げると、年金の受給額を増やすことができます。これを「繰り下げ受給」といいます。
繰り下げ受給をすると年金の受給額を1ヵ月につき0.7%増やすことができ、増額した受給額は一生涯変わりません。たとえば、70歳まで繰り下げると年金は42%増額され、75歳まで繰り下げると増額率は84%になります。ただし、年金額が増えると天引きされる税金や社会保険料も増えて手取り額に影響します。また、加給年金の対象者の場合、繰り下げ受給をすると繰り下げ待機中は加給年金を受け取ることができないので注意が必要です。
●国民年金に任意加入する
20歳から60歳まで40年間、国民年金(厚生年金も含む)に加入すれば満額の老齢基礎年金をもらえますが、加入期間が40年に満たない場合、60歳から65歳になるまでの間、国民年金に任意加入すると、老齢基礎年金を満額に近づけることができます。ただし、厚生年金に加入中の人、あるいは年金を繰り下げ受給している人は任意加入することはできません。
●厚生年金に加入して長く働く
厚生年金の加入期間を延ばせば、老齢厚生年金を増やすことができます。厚生年金は70歳まで加入できるので、体力や状況が許せば長く働くことを考えてもよいでしょう。ただし、老齢厚生年金を受給しながら厚生年金に加入して働くと、年金額と月給が50万円を超えた場合、在職老齢年金によって年金の一部または全部が支給停止になる場合があります。65歳以降も厚生年金に加入して働くときは、在職老齢年金を考慮することをおすすめします。
自分の年金を知り、増やすことを検討しよう
今回試算した結果、最高額の年金は月額37万1373円でした。ただ、試算したのは厚生年金に16歳から70歳まで加入し、その間の給与が月額63.5万円、賞与が150万円を年3回という想定です。それに現状では、年金の平均受給額はそれほど高くはありません。2022年度の厚生労働省が公表する厚生年金保険・国民年金事業の概況によると、年金の平均受給額は月額14万3973円でした。よって今回の試算は現実的ではありません。
また試算のケースを年収に換算すると1,212万円になります。国税庁が公表する2022年分の民間給与実態統計調査によると、年収が1,000万円を超える人はわずか5.4%です。この割合から見ても、最高クラスの年金は簡単にもらえないことがわかります。
年金額をできるだけ増やしたいのであれば、年金の受給が始まるまでの生活費を確保したうえで繰り下げ受給をするか、厚生年金の加入期間を延ばすことを検討してみてはいかがでしょうか。
【関連記事もチェック】
・親が年金を受け取らず68歳で逝去…子は親の年金を受け取れる?
・「定年後貧乏」にならないために、やってはいけない退職金の使い方ワースト5
・60歳以降は厚生年金保険料を払うと損?国民年金保険料相当分を含むのに基礎年金は増えない現実
・年末調整ですべき5つの控除「忘れると16万円損」になることも
・年金に6万円上乗せされる「年金生活者支援給付金」はどうすればもらえる?
前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう