24/09/06
60歳以降は厚生年金保険料を払うと損?国民年金保険料相当分を含むのに基礎年金は増えない現実
厚生年金は70歳まで加入できるので、60歳以降も厚生年金に加入して働く人が増えています。働けば生活費を稼ぐことができ、年金生活に向けた貯蓄もできるでしょう。しかし、厚生年金に加入することで国民年金保険料の払い損をしていることを知っている人は少ないかもしれません。そこで今回は、60歳以降も厚生年金に加入することによる保険料の払い損について解説します。
60歳以降、厚生年金に加入して働くと保険料が払い損に?
国民年金の加入期間は最大40年です。20歳から国民年金に加入していれば、60歳で40年間加入したことになり、満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。
ただ、今は65歳にならないと年金はもらえません。また、年金だけの生活に不安を抱く人が増えていることから、60歳以降も厚生年金に加入して働く人は増えています。
ここで留意しておきたいのは、厚生年金保険料には国民年金保険料を含んでいることです。60歳以降も厚生年金に加入するということは、同時に国民年金保険料も支払っていることになるのです。
たとえば20歳から60歳まで40年間、国民年金や厚生年金に加入し、40年の加入期間をクリアしている人の場合、60歳以降の厚生年金保険料に含まれる国民年金保険料は、年金に反映されません。その保険料は厚生年金財政の改善に使われているのです。
つまり、国民年金や厚生年金に40年加入してきた人は、60歳以降に厚生年金に加入すると、保険料を「払い損」していることになります。支払う厚生年金保険料に国民年金保険料が含まれているのに、それが老齢基礎年金に反映されないのは、損をしているように感じる人もいるかもしれません。
増加する働く60代、保険料を払い損している人は多い?
ここで60代の人の就業率をご紹介しておきましょう。
総務省統計局が公表している「労働力調査(基本集計)」によると、2023年では60歳~64歳は74%の人が、65歳~69歳では52%の人が仕事をしています。60歳を過ぎても、多くの人が生活を安定させるために働いているのが現状です。その中には、年金の受給額を増やすために厚生年金に加入して働いている人も少なくないでしょう。
そんな人たちの中には、厚生年金保険料に含まれる国民年金保険料が払い損になっている人もいるのではないでしょうか?
国民年金の加入期間が5年延長なら払い損はなくなる?
2024年4月に行われた社会保障審議会で、国民年金の加入期間を40年から45年に延長する案が示されました。加入期間が5年延長になると、国民年金保険料の負担が約100万円増えることから、政府は国民の理解を得るのは難しいと判断し、同年7月に5年延長案は見送りとなりました。
確かに国民年金の加入期間が5年延びると、保険料の負担が増して生活を圧迫しかねません。しかし、よく考えてみると60歳以降も厚生年金に加入して働けば、国民年金保険料も負担していることになるので、保険料の払い損はなくなります。それに国民年金保険料は厚生年金保険料に含まれるので、家計の負担が増えるわけではありません。
もし国民年金の加入期間が65歳まで延びたとしても、厚生年金に加入して働く限りは特にマイナスになることはなく、加入期間が45年になるまでは保険料の払い損はなくなり、年金の受給額も増やせるのです。国民年金の5年延長案は負担を増やすだけと思われがちですが、60歳以降65歳までは厚生年金に加入して働けば損はないと考えてよいのではないでしょうか?
5年延長案の見送りは、年金額を増やすチャンスを逃したと考えれば、もったいないことだったかもしれません。
60歳以降も働くことは年金額を増やす有効な手段
厚生年金保険料の中には、国民年金保険料が含まれています。そのため、会社員の人は厚生年金に加入することで、同時に国民年金にも加入していることになります。ただし、国民年金の加入期間は20歳から60歳までの最大40年間なので、老齢基礎年金は40年分までしか反映されません。よって60歳以降も厚生年金に加入して働く場合、加入期間が40年を過ぎると国民年金保険料が払い損になることがあります。
これを損していると捉える人もいるかもしれません。しかし、厚生年金には加入期間の制限はなく、70歳まで加入することができます。つまり、老齢厚生年金に加入した期間はすべて老齢厚生年金に反映されるのです。厚生年金に払い損はないので、生活を安定させるために厚生年金に加入することは、年金額を増やすための有効な手段と考えてよいでしょう。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。
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