22/06/12
年金が増額する「繰り下げ受給」するなら、65歳までにやっておくべき5つのこと
長生きが当たり前になった今、老後の生活はできるだけ豊かに過ごしたいものですね。年金を65歳で受け取らず、繰り下げ受給すると、請求する年齢が1か月遅くなるごとに0.7%ずつ年金額が増額します。60代以降も働き続けたいと思う人も増え、年金のもらい方も選択肢が広がりました。しかし、年金額を増やすために繰り下げ受給をしたいと思うなら、それなりの準備も必要です。
今回は、年金を繰り下げ受給するために、65歳までにやっておくべきことを5つ紹介します。
年金の繰り下げ受給でやっておくべきこと1:人生設計のビジョンを描く
70歳までの雇用継続の努力義務化が行われるとともに、年金の繰り下げ受給が70歳から75歳までに延長され、年金受給の自由度が大きくなりました。改正の中身を理解した上で、自分はいつまで働くのか、どうありたいのか老後の青写真を描いておきましょう。
年金の繰り下げ受給は、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げの請求をすることができます。年金の繰り下げ方には3つのパターンがあります。
・老齢基礎年金(国民年金)のみ
・老齢厚生年金のみ
・老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方
ご家庭によっては、配偶者の年金も含めて、世帯ベースで年金の受け取り方を考えなければなりません。ご夫婦のいずれか一方だけが繰り下げ受給をするというのも方法の一つです。年金は、一度請求したら取り消しができません。自分にとってベストな受給タイミングを設定しましょう。
年金の繰り下げ受給でやっておくべきこと2:できるだけ長く働くことを検討する
働き方を工夫することで、繰り下げ受給が可能になります。年金をもらうまでの間に働くことで生活資金を得て、厚生年金に加入すれば年金を増やすこともできます。働き方はフルタイムだけではなく、1週間に30時間未満で働くパートやアルバイトの人でも条件を満たせば、厚生年金に加入することができます。再就職や再雇用などを視野に入れ、働き続けるにはどんなスキルを身につけておくべきか準備も必要です。老後の自分にあった働き方を検討しましょう。
年金の繰り下げ受給でやっておくべきこと3:家計をダウンサイジングする
老後の不安を小さくする方法として、入ってくるお金で生活できるようにすることがあげられます。働いて収入が得られるといっても、60代以降の収入は現役時代の4割から6割の収入に減ってしまうのが現実です。特にたくさん収入があったところから、いきなり生活費を減らそうと思っても、感情が追いつかないのではないでしょうか。一度大きくなった家計を小さくするには、強い意志と慣れるまでの時間が必要になります。年金生活をイメージして生活費の支出を小さくする行動をしていきましょう。
家計の見直しは、変動費よりも固定費の削減のほうが効果で出やすくなります。子どもが巣立って不要になった保険や高い料金のままの携帯料金など、節約できそうなものがないか確認します。生活を改めないまま過ごしてしまうと、老後資金を減らしてしまう可能性が大きくなるので要注意です。
年金の繰り下げ受給でやっておくべきこと4:健康に配慮して過ごす
老後を自立して過ごすためには、心身の状態が良好である必要があります。しかし残念なことに、高齢になれば病気やケガ、介護のことを抜きに考えることはできません。もし健康で老後を過ごしていくことができれば、医療費や介護にかかる費用はもちろん、周囲の人に迷惑をかけずにすみますし、好きなことに時間を割くことができます。そのためには、毎日続けられそうな運動を日常生活の一部に取り入れ、十分に睡眠をとるなど健康への配慮が必要になります。
年金の繰り下げ受給でやっておくべきこと5:私的年金や資産形成にも目を配る
年金だけで老後の生活をまかなうことがむずかしいのであれば、私的年金などの自助努力が必要になります。少しでも老後のお金を長持ちさせようと思うのならば、資産形成として運用に回すことも必要です。
iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)やNISA、つみたてNISAなどの非課税制度を活用して、長く運用することでリスクを抑え、資産を増やしていくことを考えてみましょう。2022年の年金改正でiDeCo(イデコ)の加入可能年齢が「60歳になるまで」から「65歳になるまで」に延長されました(60歳以降の加入は国民年金の被保険者のみ)。また、受給開始期間も60~75歳の間に拡大されています。
改正をうまく活用し、より長く運用することで、50代からでも資産の積み増しができる可能性があります。
繰り下げ受給の年金はまとめて受け取ることもできる
年金の受給年齢を遅らせることで、年金を増やせることがわかっていても、将来何があるかわからいと考えると、繰り下げ受給に踏み切れない人もいると思います。しかし、繰り下げ受給の受け取り方は2通りあり、前もって繰り下げ年齢を指定しておく必要はありません。
1つは、年金を請求した時点の増額率で繰り下げた年金を受給する方法です。
もう1つは、繰り下げ待機している間でも、年金が必要だと思えばその時点で請求し、繰り下げ請求しない金額で最長5年分までさかのぼって年金をもらう方法です。この場合、最長5年分の年金がまとめて受け取れます。
また、繰り下げた年金を請求せずに本人が亡くなった場合には、65歳から受け取っていたと仮定した場合の年金額が遺族に未支給年金として一括で支払われます。こうした制度の内容を知っておくと、繰り下げ受給を検討するハードルが低くなりますね。
どの年金をいつ受け取るのがベストなのかは、世帯の構成や経済状況で異なります。夫婦の場合には、繰り下げることで加給年金や振替加算に影響する場合もあります。繰り下げ受給がおトクとは限らないこともあるので、慎重に検討しましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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