24/08/28
103万円、106万円、130万円…【年収の壁】を超えると世帯の手取り合計はどう変わるのかシミュレーション
「年収の壁」を超えると税金や社会保険料の負担が生じるため、働くのを控える人も。
しかし、何も知らずにむやみに仕事をセーブするのはもったいない!
年収の壁を正しく理解し、自分の働き方を考えましょう。
100万円・103万円・106万円…「年収の壁」 の全体像を知ろう!
年収の壁とは、年収が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が増えるボーダーラインのことです。
会社員の夫(妻)がパート・アルバイトの妻(夫)を扶養する場合、主な年収の壁には、100万円の壁、103万円の壁、106万円の壁、130万円の壁、150万円の壁、201.6万円の壁があります。また、60歳以上の場合は180万円の壁もあります。
<ひと目でわかる!「年収の壁」>
「パート・アルバイトで働く人のための「年収の壁」で損しない本」(宝島社)より
年収の壁を超えないように働けば、税金や社会保険料の負担は増えません。しかし、年収の壁を超えると税金や社会保険料がかかるようになります。そのため、場合によっては壁を超えないほうが手取りの年収が高くなる場合もあるのです。
パート・アルバイトで働く人の中には、年収の壁を超えないよう「働き控え」している人も少なくありません。野村総合研究所の2022年の調査によると、パート・アルバイトで働いている20歳から69歳までの配偶者のいる女性のうち、約6割が年収を抑える「働き控え」をしているとのこと。
確かに、がんばって働いても肝心の手取りが増えない、それどころか減ってしまうというのであれば、仕事をセーブしたほうがいいと考えるのは自然なことでしょう。
しかし、年収の壁を超えて働くことにはメリットもあります。子育てに手がかかるときには扶養内で働き、ある程度手が離れてきたら仕事を増やすという具合に、壁を超えて働くことも積極的に検討しましょう。
年収の壁の損得は人により違う
年収の壁を超えたほうがいいのか、超えないほうがいいのかは、「手取りの月収がいくら欲しいのか」で考えてみましょう。
扶養されている配偶者がパート・アルバイトとして働く理由は、金額の多少は別として「家計の足しとなるお金が欲しいから」ですよね。もしも、できるだけ手取り収入を増やしたいのであれば、年収の壁など気にせずどんどん働いたほうがよいでしょう。
しかし、そこまで多額のお金が必要ではなく、扶養に入ったまま手取り収入を増やしたい場合には、年収の壁を意識した働き方が選択肢に入ります。
たとえば、手取りの月収が8万円程度(年収100万円)まででよければ、扶養内で働くと税金や社会保険料がかかりません。
一方、手取りの月収が10万円程度(年120万円)欲しい場合は、人により異なります。
106万円の壁と130万円の壁のどちらが適用されるかが人により異なるためです。
年収130万円を超えると社会保険加入の対象になるならば、年収120万円でも扶養からは外れずに働くことができます。しかし、年収106万円を超えると社会保険加入の対象になる場合は、およそ145万円まで働く必要があります。
さらに、手取りの月収が12.5万円程度(年150万円)欲しいという場合は、おおよそ185〜190万円程度働く必要があります。
<年収の壁を超えない方がいい人、超えた方がいい人>
「パート・アルバイトで働く人のための「年収の壁」で損しない本」(宝島社)より
年収の壁で影響が大きいのは106万円の壁と130万円の壁です。壁を超えたら社会保険料が発生し、壁を超えない場合より年間の手取りが十数万円減ってしまうからです。
よくいわれる「壁を超えると働き損になってしまう」という話は、こうした手取りの逆転現象からきているのです。
【年収の壁】を超えると世帯の手取り合計はどう変わるのかシミュレーション
106万円の壁に当てはまる場合、年収105万円のときの手取りを回復するには年収約125万円まで働く必要があります。また、130万円の壁に当てはまる場合、年収129万円のときの手取りを回復するには年収約153万円まで働く必要があります。125万円・153万円以上働けば、以後被扶養者の手取りは年収の壁を超えずに働いた場合よりも増えます。
税法上の壁も含めて、壁を超えたときに夫婦の世帯手取りがどうなるかをシミュレーションしてみましょう。
【試算条件】
・40歳の扶養者:夫(妻)の年収450万円
・40歳の被扶養者:妻(夫)の年収100万円〜202万円
・扶養者の所得控除:基礎控除、社会保険料控除、配偶者控除または配偶者特別控除
・被扶養者の所得控除:基礎控除、社会保険料控除
・復興特別所得税を含む
<年収が増えると家計の総収入はどう変わる?>
「パート・アルバイトで働く人のための「年収の壁」で損しない本」(宝島社)より
日本人の平均年収に合わせて、扶養者(夫または妻)が年収450万円で働いているとき、被扶養者(妻または夫)の年収が変わると世帯の年収がどう変わるかを示しています。
被扶養者の年収が106万円(または130万円)を超えると、被扶養者の手取りは大きく減少します。
被扶養者の年収が150万円を超えると、扶養者が利用できる配偶者特別控除の金額が段階的に減っていくため、扶養者の所得税や住民税が増えます。これにより扶養者の手取りは減りますが、被扶養者の手取り増のほうが上回るため、世帯の手取りは増えます。
年収の壁を超えて働くと、世帯の手取りが増えるだけでなく、年金が増える、給付金がもらえるといったメリットが得られます。
働ける環境や意欲があり、世帯の手取りを増やしたいならば、被扶養者も年収の壁を気にせず働いたほうがベターでしょう。
『パート・アルバイトで働く人のための「年収の壁」で損しない本』 頼藤太希/高山一恵 監修
パート・アルバイトで働く人のための「年収の壁」で損しない本
パート・アルバイトで働く人必読!損しないために知っておきたい、複雑すぎる「年収の壁」が、この一冊でサクッと早わかり!
「○万の壁」のうち自分の壁はいったいどれで、損しない年収はいくらなのか、さらに「年収の壁」にとらわれず、自分自身を再評価するヒント、働き方そのものを見直すヒントもお伝えします。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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