21/08/18
年金の手取り額が増える! 9月に届く「扶養親族等申告書」は忘れずに提出を
老後の生活を支える柱となる年金。年金も受取額によっては税金がかかり、受け取るときに税金が差し引きされる仕組みになっています。今回は年金にかかる税金を計算する上で必要となる「扶養親族等申告書」について説明します。扶養親族等申告書を提出すると年金の手取り額が増えることがありますから、手続きを忘れないようにしましょう。
年金受給者が提出する「扶養親族等申告書」とは?
公的年金を受給している人には、日本年金機構から扶養親族等申告書が送られてくることがあります。これは、主に扶養している家族の状況を申告し、所得控除を受けるための書類です。
●年金に税金がかかるのはいくらから?
公的年金(老齢年金)は、雑所得として所得税の課税対象になります。ただし、年金を受け取っても基礎控除や公的年金控除があるため、一定額までは税金がかかりません。課税されるのは次の金額の年金を受け取っている人です。
(1) 65歳未満で108万円以上
(2) 65歳以上で158万円以上
上記(1)(2)に該当する場合には、9月頃に扶養親族等申告書の用紙が郵送されてきます。
●扶養控除申告書を提出するとどうなる?
所得控除の対象となる家族がいる場合などには、申告書を提出することにより、税金が安くります。なお、所得税は年金から源泉徴収されるため、申告した内容によって翌年の年金の手取り額が変わります。
「扶養親族等申告書」には何を書く?
扶養親族等申告書の用紙は、新規用と継続用に分かれています。
●「新規用」が送られてくる人
年金を受給して1年目の人や、前年度は所得税の課税対象でなかった人には、新規用の申告書用紙が届きます。申告書用紙が届いたら、次のような内容を記入して提出します。
・本人や家族が障害者かどうか
・寡婦やひとり親に該当するかどうか
・控除対象となる配偶者の有無
・控除対象となる扶養親族(配偶者以外)の有無
申告書に記載した内容によって、配偶者控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除などの適用が受けられます。年金受給者本人が障害者や寡婦等に該当せず、かつ控除対象となる配偶者・扶養親族もいない場合には、申告書は提出しなくてもかまいません。
●「継続用」が送られてくる人
前年度も扶養親族等申告書を提出している人には、継続用の申告書用紙が届きます。継続用の申告書用紙には、前年度の申告内容があらかじめ印刷されています。前年度と申告内容に変更がない場合には、申告書表面左上の「前年から『変更なし』で申告します」にチェックを入れるだけでOKです。前年分から申告内容に変更がある場合には、「前年から『変更あり』で申告します」にチェックを入れ、変更があった箇所を記入します。
・年金にかかる所得税の税率
老齢年金から源泉徴収される所得税(復興所得税含む)の税率は5.105%です。2019年度(令和元年度)までは、扶養控除申告書を提出しなかった場合、税率が倍の10.21%になる扱いでした。2020年度(令和2年度)以降は、扶養控除申告書提出の有無に関係なく、税率は5.105%となります。
「扶養親族等申告書」を出し忘れたらどうなる?
扶養控除申告書には、毎年、いつまでに出さないといけないという期限が指定されています。たとえば、2020年度(令和2年度)の申告書は、2021年(令和3年)2月26日までに提出が必要でした。申告書の用紙が届いたら、提出期限を確認し、遅れないように提出しましょう。
期限までに申告書を提出しなかった場合には、配偶者控除や扶養控除等の適用は受けられません。この場合には、控除がない状態で所得税が源泉徴収されることになります。ただし、期限後でも申告書を提出すれば、遡って所得税を再計算してもらえます。出し忘れに気付いたら、たとえ期限が過ぎていても提出しておきましょう。
まとめ
年金からは所得税が源泉徴収されますが、扶養控除申告書を提出することにより所得控除が受けられ、年金の手取り額が増えることがあります。控除の対象となる家族のいる人は、申告書が届いたら速やかに記入して提出しておきましょう。
【関連記事もチェック】
・60歳以降も働いたら年金はどのくらい増えるか、早見表で簡単チェック
・年金がプラスされる「加給年金」繰上げ・繰下げ受給のときは要注意
・厚生年金の支給開始年齢は原則65歳! 今後引き上げられる可能性はある?
・年金繰下げ受給で医療費が2倍・3倍になるのは本当か
・厚生年金を月10万円もらえていない人はけっこう多い
森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう