21/10/14
事務処理ミスで約6億円の年金が未払い、何のミスが多いのか
老齢年金は原則65歳から受け取れます。そのために、働いているときに年金保険料を支払っています。事務処理ミスで受け取れなかったら困りますよね。しかし、実際には事務処理ミスが発生し、約6億円の年金が未払いになっていることがわかりした。具体的にどのようなミスが発生しているのかをデータから確認していきましょう。また、ミスに気づくために、確認しておいたほうが良いことも紹介します。
事務処理誤りが1601件!
日本年金機構では、毎月年金の事務処理で発生した誤りを公表しています。2021年9月に公表された「事務処理誤り等の年次公表について」によると、2020年度は事務処理の誤りの件数が1601件あったとのことです。
●事務処理誤りの総件数と制度別・発生年度別内訳
日本年金機構「事務処理誤り等の年次公表について」より
多くはここ2年程度のミスの発覚ですが、中には平成20年度以前のミスもあるようです。そして、半数の割合に当たる797件が年金給付などの金額に影響が及ぶものでした。
ミスの金額はどのくらい? どんなミスがある?
金額の影響がある約半数のミスの中で、最も金額が大きかったのが年金の未払いでした。
●事務処理誤りの事象別内訳
日本年金機構「事務処理誤り等の年次公表について」より
未払い件数が401件、金額の合計は約6億円にのぼります。そのほかには過払いが132件で約8,346万円、過徴収が153件で約8,071万円などとなっています。事務処理誤りのうち、お客様対応中の案件は2021年3月時点で1,500件ほどあるということです。
金額に影響のあったケースの、1件当たりの影響額は、10万円以上50万円未満が217件で最も多いという結果になりました。中には500万円以上の影響があったケースが49件もありました。
●事務処理誤りの影響額別内訳
日本年金機構「事務処理誤り等の年次公表について」より
これまでのミスの件数で多いものとしては、「振替加算の支給漏れ」や「二以上事業所勤務届が提出されていない」などのケースが挙げられます。
振替加算とは、「加給年金」を受け取っていた人の配偶者が65歳になったときに受け取れるお金です。たとえば、厚生年金保険に20年以上加入している人が65歳になったときに、扶養している配偶者が65歳未満だと、配偶者が65歳になるまでは加給年金という年金が支給されます。そして、配偶者が65歳になると、それが振替加算に切り替わるのです。しかし、この振替加算が正しく加算されていないことがあるようです。
振替加算は、年金を請求する際の「裁定請求書」を正確に記入し提出することによって行われます。しかし、振替加算はねんきん定期便には記載されない項目です。したがって、最寄りの年金事務所や年金相談センターに問い合わせて、正しく加算されているか確認しましょう。
また、「二以上事業所勤務届」は、同時に2か所以上の会社に勤める方が提出する書類。この届出が提出されていなかったために、年金額が間違ってしまうことがあるようです。複数勤務先がある方は必ず提出が必要なのかどうか確認をするようにしましょう。
日本年金機構では「再発防止に努める」と公表していますが、これだけの件数と金額のミスが起こっていると自分にも影響が出るのではないかと心配になるのは当然のことですね。
ミスをなくすにはどうしたらいい?
ミスが起こらないことが1番ですが、ご自身でもおかしい点がないかを確認することをお勧めします。
まずは、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」を確認してください。ご自身の年金記録が記載されています。これまでの保険料納付額、これまでの年金加入期間、これまでの加入実績に応じた年金額等が記載されていますので、明らかにおかしいと思うような箇所があった場合や、疑問に思うことがある場合には、年金事務所に確認をしてみてください。
また、日本年金機構のホームページでは「ねんきん定期便」の見方や年金加入記録に漏れや誤りがあった時の手続きの流れも確認することができますので、こちらも併せて確認してみてください。
まとめ
2021年10月、97万件に及ぶ年金振込通知書の誤送付が発覚。問題となりました。日本年金機構によると、別人の年金情報を記載して送ってしまったとのことでした。このように、事務ミスが後を絶たない状況が続いています。ミスは起こるものだと考え、ご自身で自分の年金にミスがないかを「ねんきん定期便」や年金事務所等で確認するように心掛けましょう。
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小塚歩 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
大手証券会社、IRリサーチ会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。FP事務所 まいまねい 代表。人生100年時代だからこそ、もっと金融を身近に感じてほしく、セミナー活動を通して、金融リテラシーや金融教育を広めるセミナー講師。得意分野は投資・金融資産運用。
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