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21/10/06

相続・税金・年金

厚生年金の財源が国民年金に振り分け? もらえる年金は減ってしまうのか

2021年9月10日、「国民年金の水準低下緩和のため厚生年金から財源を振り分ける」というニュースが報道されました。このニュースを知り、「将来、受け取る厚生年金が減ってしまうの?」と不安を感じた会社員の方もいらっしゃると思います。
今回は、厚生年金の財源を国民年金に振り分けるとどうなるのかをわかりやすく解説していきます。

厚生年金の財源を国民年金に振り分けるってどういうこと?

公的年金には国民年金と厚生年金があり、財政上でも2つの財源は分けて管理されています。厚生年金は会社員や公務員が対象のため加入者が多く、毎月の給与から天引きで保険料が徴収されるため、財源が比較的潤沢だと言われています。一方で、国民年金は非正規労働者の増加や加入者の減少、保険料の未納問題などを背景に、財源の基盤が弱く、このままでは将来の年金水準が大きく下がることが懸念されています。

そのため、厚生年金の財源から国民年金の財源へ資金を振り分けられるよう、財政調整をすることで国民年金の目減り分を補うというのが今回の制度改革の趣旨です。

よほどの高所得層でない限りは将来の年金額が現行の想定よりもアップ

これだけ聞くと「なんで厚生年金加入者が国民年金を補填する必要があるのか?」と感じる方も多いと思います。ですが、しかし、よくよく考えると厚生年金加入者は国民年金加入者でもあるのです。会社勤めの方は、厚生年金だけしか給料から引かれていないため、このような認識は薄いかもしれませんが、厚生年金に国民年金も内包されていると考えれば理解しやすいでしょう。

●日本の年金は2階建て

日本年金機構パンフレット「知っておきたい年金の話」より

この年金制度を家になぞらえた図の中で「第2号被保険者」と書かれているのが会社員(公務員含む)の方です。その上には「厚生年金」が乗っていますので、厚生年金と国民年金にダブルで加入していることが分かります。また、会社員は国民年金の加入者数の7割弱を占めており、一番の多数派だということも確認できますね。

そのため、今回のような制度改正で厚生年金から財源を振り分けた結果、国民年金(基礎年金)の目減り分が抑えられますので、ほとんどの会社員は十分恩恵にあずかれる可能性があるのです。

例えば、制度改正を行った場合の試算によると、年収が520万円の世帯(国が考える標準的な年金額の世帯)の将来の年金額は、現行だと月額23.8万円に対し、改正後だと25.9万円となんと月額2万円ほど「増加する」見込みになっています。

逆に今回の制度改正で割を食ってしまうのは誰かというと、夫婦共働きで年収が1790万円以上の世帯だそうです。共働きでも世帯年収が約1800万円の方は、かなり少数派ではないでしょうか。つまり、高所得層でない限りは、ほとんどの会社員の厚生年金は減るどころか、増えるという試算データが公表されています。

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今回の制度改正の目的は、「所得格差の拡大の防止」にある

そもそも、今回の制度改正は、「このままだと公的年金の大事な機能の所得分配機能が弱まり、会社員の年金の所得格差が広がりすぎるのでなんとかしなくては!」というところから来ています。ここで、厚生年金の「所得再分配機能」について簡単に説明します。

前述した年金制度を家になぞらえた図の中では、土台となる1階部分に国民年金があり、2階部分に厚生年金が乗っていました。なぜわざわざこのような2階建てにしているのでしょうか。その理由に「所得再分配機能」が深く関わっています。

国民年金(基礎年金)は現役時代の報酬に関わらず、基本的に定額が支払われる仕組みです。それに対して、会社員のときに給与やボーナスから差し引かれている厚生年金の保険料は、報酬(給与、ボーナス)の額によって違いがあるので、それを年金額に反映させてある程度の差をつけています。報酬に比例して年金額が決まるので「報酬比例部分」とも呼ばれます。つまり、定額制の基礎年金を土台にすることにより、現役時代に高収入だった方と低収入だった方の年金額の格差がゆるやかにできるのです。

このように、受給時の年金額は、現役時代の収入より差を少なくしているのです。この年金額の格差をゆるやかにして、高所得者から低所得者へと間接的にお金を配る機能を「所得再分配機能」と呼んでいます。これは、公的年金のような社会保障制度の大事な機能です。

●厚生年金の所得再分配機能

厚生労働省「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」より

上記の図のように、このまま基礎年金の水準が低下してしまうと、報酬比例部分が多くなりすぎて、「所得再分配機能」が弱まってしまいます。それを避けるために、今回の制度改正案は、厚生年金から国民年金への財源振り分けを行い、結果的に土台となる部分の基礎年金の割合を維持しようというものです。そうすれば、厚生年金の「所得再分配機能」が弱まることを防いで、低中所得層の方へ手厚い年金を支給することが可能になるというのです。

年金財政の改善につながる制度改正案は他にもある

今回の制度改正案は「所得格差の拡大の防止」という問題提起から来ていますが、そもそも、年金の財政を改善するためには他にもいろいろな方法が案としてあげられています。

自民党の岸田新総裁は、働く人すべてに社会保険を適用し、厚生年金加入者となることを目指す年金制度を主張しています。これは、パートタイマーなどの方が厚生年金に加入できる条件をもっと緩和して、厚生年金の加入の「適用拡大」をさらに促進するものです。こちらの年金改革案も、年金財政の改善につながるため、基礎年金の水準確保に効果が大きいということが分かっています。

まとめ

今回の制度改正案は、あくまで「試算」であって、こういう解決方法もひとつありますよという案です。具体的にどうするのかなど、まだ細かい仕組みの部分は決まっていません。2024年の財政検証で具体的な財源配分方法を示し改正法案の提出を目指すとされていますので、今後の行方には注目したいところです。

年金制度の改革というと、世間の反応として「将来の年金が減らされるのでは?」と懐疑的に見てしまう傾向がありますが、年金制度について正しく理解することで不安を解消していくことができると思います。

KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士

長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。

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