21/11/11
50代で年収が減ると、年金はどのくらい減るのか
毎年届く「ねんきん定期便」には、50歳以上になると、年金見込額が記載されるようになります。この金額を見て、近い将来に訪れる年金生活を想像する方も多いようです。
しかしながら、50代からのねんきん定期便に記載される「年金見込額」は、あくまでも見込額であることを理解しておく必要があります。必ずしも「年金見込額=実際の受給額」となるわけではないからです。
もしも50代で年収が減ってしまうと、年金受給額が見込額より減ってしまう可能性があります。ここでは、50代以降の年収ダウンによる年金見込額への影響はどのくらいなのかを具体的なケース別に解説いたします。
ねんきん定期便の年金見込み額は、現在の状況が続いた場合の見込額
毎年ハガキで送られてくるねんきん定期便には、40代までの場合、これまでの加入実績に応じた年金額が記載されています。しかし50代になると、ねんきん定期便には、年金見込額(年額)が記載されるようになります。
この年金見込額は、現在の加入条件が60歳まで継続すると仮定して計算された金額にはなりますが、自分が将来いくら年金を受け取れるかの目安となるため、必ず目を通しておきたい部分になります。
●50歳以上のねんきん定期便(裏面)
出典:日本年金機構ホームページより画像引用
さらに、ねんきん定期便の表を見ると、「最近の月別状況です」という欄があります。ここには、年金受給額の計算のもととなる標準報酬月額や賞与の額が記載されています。前述した年金見込額は、この金額が60歳まで維持されるという前提条件のもとで算出されているのです。
●50歳以上のねんきん定期便(表面)
出典:日本年金機構ホームページより画像引用
ただし、当然のことながら給与水準などが変われば見込額と実際の受給額に違いが生じます。そのため、これまでより給与水準が低くなったり保険料未納付期間が発生したりすれば、実際の年金額はねんきん定期便に記載された見込額よりも少なくなります。
給与は高低を問わず50代前半がピークで、後は下がる
厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」によると、会社員の場合、収入が一番多くなる年齢は「50~54歳」となり、男性でこの傾向が顕著です。収入が高い一部の人は、高収入を維持できる場合もありますが、ほとんどの方は、この年齢層が収入のピークとなり、ここからは収入ダウンの崖を迎えることになります。
●企業規模、性、年齢階級別賃金
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査(2020年)」より一部抜粋
この背景として多くの会社では、55歳をもって役職から外れる「役職定年」という制度があります。役職定年になると、役職手当がなくなったり、基本給が減額されたりすることがほとんどです。減額幅は、個人の条件によって異なりますが、10~30%程度を覚悟しておきましょう。
役職定年がない企業でも、子会社への出向などの可能性がある年代です。役員に昇進できる一部の人を除いて、給与は高低を問わず50代前半がピークで、後は下がるという傾向にあることは頭で理解しておきましょう。
50代以降の年収ダウンによる年金見込額への影響は?
50代以降の年収ダウンはそれだけでもかなり厳しいですが、さらに追い打ちをかけるのが、将来受け取る公的年金の受給見込額への影響です。
会社員の年金は、国民年金で受け取れる老齢基礎年金と厚生年金で受け取れる老齢厚生年金の2つがあります。このうち、50代以降の年収ダウンが影響してくるのは2階部分の厚生年金部分です。厚生年金部分は、「平均標準報酬額×5.481÷1000×厚生年金加入月数」の公式で簡易的に計算ができます。
●55歳以降の年収水準と実際の年金受給額
筆者作成
55歳に役職定年で給与が7割水準になると年額6万円減
上記の表は、55歳以降の年収水準と実際の年金受給額を試算したものです。たとえば、平均年収が20代350万円、30代450万円、40代550万円、50代650万円で平均年収500万円という50代になっても年収が下がらなかった現状維持組のパターンAと、これと同様ですが55歳から役職定年で年収3割減(平均年収476万円)になった役職定年組のパターンBでは、実際の年金受給額が約6万円/年ほどの差がある結果となりました。
さらに55歳から転職・転籍をした場合や、早期退職となったケースも見てみましょう。役職定年がない企業でも、子会社への出向などの転籍・もしくは転職により年収が半減する可能性もあります。表のパターンCの場合には、実際の年金受給額が約9万円/年ほど減ってしまう結果となりました。
また、最近では大企業でも早期退職を募集して人員削減を行っているというニュースも話題になっていますが、このようなケースで仮に再就職先が見つからなければ、その後は無収入となってしまいます。パターンDだと、実際の年金受給額は、約18万円/年も減ってしまうのです。
なお逆に、もし役職定年後も63万5000円以上の給与が見込める人なら、年金が減る心配がないことも付け加えておきます。実は、厚生年金の受給額を計算する際の平均標準報酬額には上限があり、63万5000円以上の月給は一律同じ保険料水準となるためです。例えば、月給100万円の方が3割減で70万円に収入が減ってしまったとしても、この場合は、年金受給額への影響は一切ありません。
まとめ
現在は、ねんきんネットを利用すれば、こうした試算も自分で手軽にシミュレーションができる時代です。とても便利ですので、将来の年金受給額が気になる方は一度試算してみてはいかがでしょうか。
その上で、自分は家計を引き締めて収入サイズに合わせた生活をするのか、役職定年などがない仕事を考えるのか、保有資産を見直して資産運用に取り組むのかという課題が見えてくると思います。50代のうちから自分にあった無理のない生活設計をしっかり考えておくことがとても大事ですね。
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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