21/10/21
住宅ローン控除が終わると税金はどのくらい増えるのか
住宅ローンを組んで住宅を購入すると、住宅ローン控除を受けられ、税金が安くなるメリットがあります。ただし、住宅ローン控除が受けられる期間は限定されていることを認識しておきましょう。今回は、住宅ローン控除が終わったらどれくらい税金が増えるのかについて説明します。
住宅ローン控除では10年間または13年間税金が安くなる
「住宅ローン控除」とは、正式名称は「住宅借入金等特別控除」といい、所得税を安くできる制度です。「住宅ローン減税」と呼ばれることもあります。
住宅ローン控除が受けられる場合、年末時点の住宅ローン残高の1%に当たる金額を、算出された所得税から直接差し引き(税額控除)できます。所得税から控除しきれない分は住民税から控除できるので、住民税も安くできます。所得税も住民税も、控除できる額は上限があり、入居年度等により異なります。
住宅ローン控除が受けられる期間は原則10年間です。ただし、2019年(令和元年)10月1日以降の入居では消費税増税に伴う負担軽減措置があり、要件をみたせば控除期間が13年間になります。
住宅ローン控除は長期間税金が大幅に安くなるお得な制度です。一方で、控除期間が終了した途端に税金が増えてしまい、戸惑うことがあります。
住宅ローン控除終了後の負担増はどれくらい?
たとえば、入居年が2012年(平成24年)の場合、控除額の上限は30万円、控除期間は10年間でした。10年目の2021年(令和3年)年末時点での住宅ローン残高が3000万円とすると、控除額は
控除額 3000万円×1%=30万円
となり、30万円まで控除が受けられます。
仮に年収を600万円(会社員・独身)とすると、概算で所得税20万円、住民税30万円です。住宅ローン控除により、所得税の20万円は0円となり、負担はなくなります。住民税の控除限度額は9万7500円ですが、所得税で控除しきれなかった分をほぼ全額控除できます。つまり、2021年度(令和3年度)は所得税0円、住民税約20万円ですみます。
しかし、2022年度(令和4年度)には住宅ローン控除が使えません。年収が変わらなければ、所得税約20万円、住民税30万円を払わなければならず、前年度から30万円負担が増えます。
2014年度(平成26年度)以降に住宅ローン控除を利用している場合は、所得税の控除額の上限は40万円。所得税から引き切れない場合は住民税からも最大13万6500円控除できます。しかし、この場合も同様に、10年(または13年)経過後に住宅ローン控除が使えなくなると、最大で40万円負担が増えます。
住宅ローン控除終了後に活用したい節税方法
住宅ローン控除が終わった後は、急な税金の負担増に備えて、節税対策を考えておきましょう。会社員ができる節税対策には、次のようなものがあります。
●iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)
毎月掛金を拠出し、自分で運用することで年金に上乗せする老後資金を用意できる私的年金制度です。掛金には上限がありますが、全額所得控除の対象となり、所得税・住民税を減らせます。普通に貯金や投資をしても税金は安くなりませんから、すぐに使わない老後資金はiDeCoで運用するのがおすすめです。iDeCoではさらに運用益も非課税になるほか、受け取り時にも退職所得控除や公的年金等控除が受けられるという税制メリットがあるところも見逃せません。
●ふるさと納税
応援したい自治体を選んで寄付し、寄付した自治体から特産品などの返礼品を受け取れる制度です。ふるさと納税をすれば、寄付額のうち2000円を超える部分が、所得税及び住民税から控除されます。
たとえば、3万円の寄付をした場合、税金から2万8000円の控除が受けられます。実際には2万8000円は寄付により払っているため、負担が減るわけではありません。ただし、ふるさと納税を利用すれば、返礼品をもらえます。2000円の自己負担で、2000円を超える豪華な返礼品を手に入れることも可能です。ふるさと納税を活用すれば、税金の負担増加を気にならなくできるかもしれません。
まとめ
住宅ローン控除が終わった翌年からは、所得税・住民税が通常どおり課税されるので、税金の負担が大きくなったと感じることがあります。iDeCoへの加入やふるさと納税の利用によって税金の負担を軽くする工夫をしましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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