21/04/09
年収500万円・1000万円・1500万円の共働き夫婦、無理のない住宅ローンの返済額はいくらが妥当か
消費税10%の令和時代。消費税の増税に加えて新型コロナの感染拡大によって、先行きが不透明になっています。それでも超低金利の今のうちに住宅を買っておきたいと考えている人は多いのではないでしょうか。
今回は、共働き夫婦の世帯の住宅取得の資金計画を考えていきます。
いまどきの住宅ローン事情
新築の住宅の購入となると、どうしても高額になります。国土交通省の「令和元年度 住宅市場動向調査報告書」によれば、土地付きの注文住宅では平均4615万円、分譲戸建住宅では平均3851万円、分譲マンションでは平均4457万円もの購入資金が必要になっています(注文住宅は全国、それ以外は三大都市圏での調査)。これだけ高額になれば、自己資金で準備するのは難しく、住宅ローンを利用するケースが多くなります。
また住宅ローンの返済期間も土地購入の注文住宅で32.1年、分譲マンションで31.5年と長期間におよび、年間100万円以上の返済を行っています。
住宅ローンを借りるにあたっては、どれだけ借りられるのかが気になるところでしょう。しかし、住宅ローンは申し込めば誰でも借りられるものではありません。年齢や勤務先、勤続年数、収入、自己資金の割合、負債の金額などから審査が行われます。審査の基準や借入限度額は、ローンの種類や金融機関によって異なります。
たとえば、返済負担率(年収に占めるすべての借入れ金額の比率)が〇%以内とか、年収の〇%以内といった場合や、融資上限が年収の何倍といった基準を設けています。返済負担率では、30~35%以内に設定している金融機関が多く、年収が高くなると40%以内というところもあるようです。
住宅ローンの審査とペアローン
住宅ローンの審査では、ローンの申込者の年収が基準になるので、年収が低いと希望する金額を借りることができない場合があります。このような場合でも夫婦ともに働いていて収入があれば、希望する金額を借りることも可能です。その方法の1つにペアローンがあります。
ペアローンとは、夫婦それぞれが同じ金融機関でローンを借りる方法です。夫婦が別々に借りて資金の負担割合に応じて登記し、お互いの連帯債務者になります。こうすることで、夫婦のどちらか単独でローンを組むのにくらべると借入額を増やすことができます。
夫婦それぞれ住宅ローン控除が利用でき、団信(団体信用生命保険)にも加入することができるメリットがあります。またローンが2本なので、夫婦で異なる返済期間や金利タイプを選ぶことができ柔軟な返済プランが可能です。
一方、住宅ローンを2本組むことになるので、事務手数料、保証料、登記費用などが増え、諸費用が割高になるデメリットがあります。
借りられる金額と手取りに対する比率をチェック
一般的に年収に対するローンの返済負担率は25%以内なら安心だとされています。というのも、返済負担率が30%、35%などなると、手取りに対する返済比率が高くなりすぎて、生活が圧迫されてしまうからです。
そこでここでは、返済負担率25%と20%の場合の手取り収入とローン返済額との関係を見てみましょう。ここでいう手取り収入は、年収から社会保険料、雇用保険料、所得税、住民税を差し引いた金額です。
●手取り収入とローン返済額の関係
※年収1000万円は年収700万円と年収300万円を合算し、年収1500万円は年収1000万円と年収500万円を合算したものとして試算
たとえば、返済負担率を25%としたときに、年収500万円なら毎月の返済額の上限は約10万4000円です。年1%の金利で毎月10万円を返済する場合の借入可能額は、返済期間が25年で2652万円、30年で3108万円、35年で3540万円になります。
このとき、手取りに対する返済比率は32.3%となっています。返済負担率が25%でも手取りの約3分の1が住宅ローンの返済に回る計算なのです。
なお、返済負担率を20%まで下げることができれば、手取りに対する返済比率は25.8%となります。
共働き夫婦の資金計画は?
共働きだということでペアローンにすれば、返済可能額が増えます。
たとえば、返済負担率が25%だとして、年収が700万円の夫が、年収300万円の妻とペアローンを組めば、上の表の年収1000万円と同様、返済可能額は月額20.8万円までとなります。年収1000万円の夫が年収500万円の妻とペアローンを組めば、返済可能額は31.3万円までアップします。その分大きな金額の物件を買うことができます。
しかし、安易に借入額を増やすためだけにペアローンを組むのはおすすめできません。将来の予定が見えない状態なら、妻の収入に頼りすぎない資金計画が賢明でしょう。
たとえば、妻が今と同じペースで働くのか、出産や子育てしながらも働けるのかを考えておく必要があります。DINKSで働くつもりだったのに、子宝に恵まれるということもあるでしょう。住宅ローンを組んだ後の生活の変化も考えておく必要があります。
また手取り収入には、ボーナスの金額も含まれています。昨今のコロナの影響で、「給与が3割減、ボーナスなし」という業界もあります。ボーナスに過度な期待はしないほうが安全ともいえます。
まとめ
借入可能額から返済額を考えると、どうしても「無理なく返せる金額」より大きくなりがちです。今の家賃と住宅購入用の積立から、購入する物件の固定資産税や管理費・修繕積立金を差し引いた金額から毎月の返済額を見積もるほうが安心できる返済額といえるでしょう。
なお、ペアローンの対応は金融機関によって違いますので、事前に必ず確認しましょう。また、フラット35にはペアローンはなく、収入合算の連帯債務型になります。住宅購入前に夫婦のライフプランをふまえ、頭金をどうするか、どのような返済が可能かを検討しましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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