21/01/14
住宅ローン控除延長、エコカー減税、土地の固定資産税据え置き…2021年のマネーに関する法律改正まとめ
2020年の幕開けからほどなく、世界中を不安で覆いつくした新型コロナウィルス感染症。その猛威はいまだ収まるところを知らず、経済や私たちの暮らしに甚大な影響を及ぼし続けています。そんな中でも、2020年12月に2021年度の税制改正大綱が発表されましたので、私たちに関わりのあるものをあげてみました。何が変わり、何が変わらないのか、見ていきましょう。
住宅購入に関する改正
住宅購入に関する制度は延長や緩和が施されました。コロナ禍で厳しい状況にある国民に対し、一定の配慮を示してくれている内容と言えるでしょう。
●①住宅ローン控除の13年特例の延長
住宅ローン控除とは、住宅ローンの年末残高の1%相当額を所得税などから控除できる制度です。本来の制度では年末の住宅ローン残高の上限が4,000万円(長期優良住宅などは5,000万円)、控除期間は10年間となっています。しかし、2019年10月に消費税率が上がったことによる経済的な負担軽減の措置として、控除期間が13年間に延長されました。この延長の対象となるのは2020年末までに入居することが要件となっていました。
今回の税制改正により、新築住宅の場合は2021年9月までに、中古住宅の場合は同年11月までに契約をして、2022年末までに入居することで、13年間の控除が受けられることになりました。
・住宅ローン控除の控除額・控除金額のイメージ
住宅ローン控除の控除額は10年目までと11年目以降で異なります。
10年目までは、年末の住宅ローン残高の1%が控除されます。上限は年40万円ですが、納めた所得税以上には還付されません。
11年目以降は、下記A・Bいずれか少ない金額が3年間に渡り所得税などから控除されます。
A 年末の住宅ローン残高(上限4,000万円)×1%
B 建物の取得価格(上限4,000万円)の2%×1/3
面積要件も緩和されました。改正前は床面積が50㎡以上であることが要件でしたが、改正後は40㎡以上に引き下げられました。ただし、合計所得金額が1,000万円以下の人に限られます。これにより、一人暮らしの人や夫婦二人だけでこじんまりした部屋に住んでいる人たちも利用できるようになります。
なお、住宅ローン控除のその他の要件としては、以下のようなものがあります。
・自ら居住すること
・借入金の償還期間が10年以上であること
・合計所得金額が3,000万円以下であること
・中古住宅の場合、耐震性能を有していること
●②住宅取得資金にかかる贈与税の非課税措置の拡充
住宅取得のために、父母・祖父母から子・孫へ贈与した場合、最大で1,500万円(2020年4月1日以降)までの贈与税が非課税になる制度が「住宅取得等資金の贈与税の非課税」です。この非課税枠1,500万円の上限は2021年4月以降縮小の予定でしたが、2021年末まで1,500万円のまま据え置くことになりました。
また、子・孫自身の所得が1,000万円以下の場合、対象となる住宅の床面積が50㎡以上から40㎡以上に引き下げられました。これは住宅ローン控除と同様です。
セルフメディケーション税制の見直し
セルフメディケーション税制とは、1年間にドラッグストアなどで買った対象の医薬品が1万2,000円を超えた場合、その超える部分の金額について、その年分の総所得金額から控除することができる制度。2017年~2021年12月末までの時限措置です。ただし、この制度を使う場合には、通常の医療費控除の適用を受けることはできません。
このセルフメディケーション税制の期限が2022年から5年間延長される見通しです。また、セルフメディケーション税制を適用するために確定申告時に必要な健康診断などの書類提出を不要にするなど、手続きの簡素化も検討されています。
エコカー減税も延長される
コロナ禍で苦境に立たされる自動車産業を支えるため、また自動車利用者の負担軽減をはかるため、エコカー減税の期限が2023年4月末まで延長される方針です(本来は2021年4月末まで)環境問題に配慮し、燃費性能に優れている車に対して、車検時にかかる自動車重量税を優遇してくれる制度です。
●エコカー減税の見直し
(「経済産業省 令和3年度経済産業関係 税制改正について」より抜粋)
今回の改正では、現行よりもさらに高い環境性能となる「2030年度燃費基準」に切り替えています。電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車、天然ガス自動車は2回目の車検時まで自動車重量税が免税になります。その他の車については、2030年度基準を120%上回る燃費性能の場合に、車検時にかかる自動車重量税が2回目まで免税となります。
●クリーンディーゼル車の見直し
(「経済産業省 令和3年度経済産業関係 税制改正について」より抜粋)
また、クリーンディーゼル車の場合は、2021年5月からこれまで適用されてきた「2回目車検時の免税」が廃止されます。これは電気自動車などと比べて燃費性能が劣るためです。ただし、特例措置として2020年度基準を達成しているクリーンディーゼル車は2023年4月まで、未達成車は2022年4月まで初回車検時にのみ免税となります。
【ガソリン車・ハイブリッド車の見直し】
(「国土交通省 令和3年度 税制改正結果概要(車体課税関係)」より抜粋)
ガソリン車・ハイブリッド車については、2030年度基準の90%を達成した車は初回車検時のみ免税になります。75%を達成した車は50%減税、60%達成した車は25%減税となります。
他にも、車を購入した際に燃費性能に応じて最大3%課税される環境性能割は、税率を1%下げる軽減措置があります。この期限も2021年3月末から同年12月末まで延長されます。
エコカー減税は複雑で分かりにくいところがありますので、車を購入する際に販売会社で詳細を確認するようにしましょう。
土地の固定資産税は1年据え置きに
土地の固定資産税は、3年ごとに評価の見直しが行われます。2021年度からの3年間は、地価が上昇傾向にあった2020年1月の地価公示に基づいて課税される予定でしたが、2021年度限定で負担軽減措置が取られることになりました。地価の上昇に伴って2020年1月の地下公示額に基づく課税額が2020年度を上回る場合、税額はそのまま据え置かれます。一方、地価の下落によって課税額が減る場合には、課税額がそのまま引き下げられます。住宅地、商業地、農地など、全ての土地が対象です。
パートタイム・有期雇用労働法の施行
税制改正とは異なりますが、お金に関する法律の改正についても見ていきましょう。
2020年4月から(中小企業は2021年4月~)施行されている「パートタイム・有期雇用労働法」は、働き方改革関連法のひとつとして制定されました。
同一企業内における正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規社員の間の不合理な待遇の差をなくし、どのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けることができるよう、パートタイム・有期雇用労働法をはじめとするさまざまな制度が整備されています。
改正の主なポイントは以下の3つになります。
①不合理な待遇差の禁止
同一企業内において、正社員と非正社員との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。
②労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
非正規社員は、「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、事業主に説明を求めることができるようになります。事業主は、非正規社員から求めがあった場合は、説明をしなければなりません。
③行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
都道府県労働局において、無料・非公開の紛争手続きを行います。「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由」に関する説明についても、行政ADRの対象となります。行政ADRとは、事業主と労働者間の紛争を、裁判をせずに解決する手続きのことをいいます。
現代は雇用形態や就業形態も多様になっています。パートタイム労働者や有期雇用労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者は、雇用者全体の4割弱を占めています。育児や介護、病気などのためにやむなく短時間労働に従事している人、正社員として働く機会を得られずやむなしにパートタイム労働者や有期雇用労働者として働いている人がいます。しかし今の社会は、そういった人たちの働き方や貢献に見合った待遇が確保されているとは言いがたい状況でもあります。
パートタイム・有期雇用労働法は、そのような問題を解消し、パートタイム労働者や有期雇用労働者がその能力を発揮することができる雇用環境の整備とともに、働く人々がそれぞれの意欲や能力を十分に発揮し、その働きや貢献に応じた待遇を得ることのできる「公正な待遇の実現」を目指しています。
企業側が積極的に改善に取り組むことにより、従業員の離職率の低下、採用競争力の向上が効果として表れ、売上アップにつながっている企業もあります。
みなさんの中に、パートや契約社員として働いている人で、正社員との間に待遇差があるのは「仕方がない」と諦めてしまっていることはありませんか?まずご自身の待遇について確認してみましょう。待遇差に疑問がある場合は事業主に説明を求めてみましょう。事業主には、求めに応じて説明する義務があります。
もし、事業主との間でトラブルが起きてしまったら、都道府県労働局に相談することができます。相談は非公開かつ無料で、必要に応じて事業主に対する助言・指導や紛争解決の手伝いをしてもらうことができます。
ベビーシッターや産後ケア事業を利用した場合は非課税になる方向へ
東京都で2018年度より待機児童対策として始まったベビーシッター利用支援事業。しかし、ベビーシッターを利用した場合に地方時自体から受けられる助成は「雑所得」にあたり、その年の所得税や住民税の税額が増えてしまう可能性があります。これでは子育て世代は利用をためらってしまうことになりかねません。
このため、政府はこの助成については非課税とする方向で検討を進めています。
この他にも地方自治が提供する「産後ケア事業」を利用した場合の料金には、消費税を課税しない方向で検討しています。非課税とすることで、育児に悩む母親が気兼ねなく利用できるようにするねらいがあります。
まとめ
ここ数年は時代の変化が速くなってきています。加えて新型コロナウィルス感染症が長引き、激変する社会に柔軟に対応していく力が企業にも個人にも求められています。変化の荒波に飲み込まれぬよう、税制や法律を上手に活用して賢く、そしてたくましく生活していきたいですね。
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小河由紀子 「発達障害がある子」を育てる親御さんを元気にするFP
神奈川県出身。結婚・出産後に産婦人科で医療事務に従事。一念発起してCFP®と日商簿記2級の資格を取得。お金の勉強と数字の楽しさに目覚める。その後保険代理店勤務などを経て、2018年に独立系FPのためのプラットフォーム会社に所属。翌2019年に「FPオフィスOgawa」を開業。顧客がお金に振り回されず、自らコントロールする力を身に着けてもらえるよう、分かりやすい言葉で現実的なアドバイスを行っている。FP Cafe登録パートナー
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