20/11/20
2020年導入「所得金額調整控除」でいくら税金が安くなるのか。対象と年末調整の手続きを徹底解説
2020年から新しく「所得金額調整控除」という制度ができました。所得金額調整控除は「控除」なので、税金の対象となる所得を減らしてくれるものです。対象なら税金が安くなるので、ぜひ詳細を知っておきたいですね。
所得金額調整控除はどんな人が対象となって、いくら税金が安くなるのか、ご紹介しましょう。
所得金額調整控除はなぜできたのか?
2020年は税金に関して、多くの人が関係する3つの改正がありました。
1.基礎控除が一律10万円増額された
2.給与所得控除が10万円減額された。加えて給与収入が850万円を超える人は給与所得控除の上限額減額によりさらに控除額が減額となる
3.公的年金等控除が10万円減額された
基礎控除はすべての人が対象となるので、昨年と収入が同じなら、
① 給与収入が850万円以下の人:基礎控除増額の10万円と給与所得控除減額の10万円で所得は変わらず、
② 給与収入が850万円を超える人:給与所得控除の上限額の減額分だけ所得が増加、
③ 給与収入と公的年金等の収入のどちらもある人:①、②に加えて公的年金等控除の10万円減額分だけ所得が増加、
となってしまいます。
この②・③のように、改正によって所得が増えてしまう人がいるのです。
しかし、その中でも
・子育て中の人
・重い障害を持っている人
・重い障害を持っている人を扶養している人
・給与も公的年金等もあるがどちらも高額ではない人
という一定の事情がある人については、負担が大きくならないよう救済する措置が取られました。それが、2020年から新しくできた所得金額調整控除です。
対象となるのは2つのケース
所得金額調整控除の対象となる可能性があるのは、以下の2つのケースです。
① 給与収入が850万円を超える
② 給与収入と公的年金等の収入がどちらもある(公的年金等には、企業年金やiDeCoの年金なども含みます)
ケースごとに詳しく説明します。
① 給与収入が850万円を超える
給与収入が850万円を超えることに加えて、以下のどれかに該当する場合、控除の対象となります。
(1)本人が特別障害者
(2)同一生計の配偶者または扶養親族が特別障害者
(3)扶養親族が23歳未満(0歳~22歳)
・特別障害者とは、身体障害者手帳1級または2級を持っているなど、重い障害をお持ちの人
・同一生計の配偶者、扶養親族とは、合計所得金額が48万円(給与収入だけの人なら103万円)以下の人
所得金額調整控除の対象になった場合の控除額は、以下のとおりです。
・給与収入が1000万円超の人:15万円
・給与収入が850万円超1000万円以下の人:(実際の給与収入-850万円)×10%
この控除を受けることができる人で勘違いが生じやすいと思われるのが、世帯に二人以上850万円を超える給与収入がある人がいる場合です。
例えば夫婦ともに給与収入が850万円超で、23歳未満の子どもを扶養している場合、二人とも年末調整時に対象となる子どもを記入し、所得金額調整控除を受けることができます。ただし、扶養親族欄にはどちらか一人の申告書のみ記入します。
国税庁「所得金額調整控除申告書裏面」を筆者加工
年末調整のときに記入が必要なのは、収入が給与のみの人だけです。給与以外の収入がある場合は、確定申告をして控除を受けることになります。
申告書への記載方法は次の項目で説明します。
② 給与収入と公的年金等収入のどちらもある
その年分の給与所得控除後の給与所得と、公的年金等控除後の公的年金による雑所得がある人で、その合計額が10万円を超える場合が対象となります。
所得金額調整控除の対象になった場合の控除額は、以下のとおりです。
{給与所得控除後の給与所得の金額(10万円超の場合は10万円) + 公的年金等の雑所得の金額(10万円超の場合は10万円)}-10万円
この場合は年末調整で控除を受けることができないので、必ず確定申告をしましょう。
所得が低くなると、所得税だけでなく住民税も安くなり、市町村が実施するサービスの自己負担額も安くなることもあります。控除を受けるために必ず確定申告をしましょう。
所得金額調整控除を受けることで安くなる税金の額は、基本的には概算で、
控除額×所得税率(総所得金額によって異なる)+控除額×住民税率(10%)
となります。
例えば、所得金額調整控除が10万円、所得税率が20%の人なら、
10万円×20%+10万円×10%=3万円
所得税と住民税を合わせて3万円税金が安くなります。
年末調整提出書類の書き方
給与所得のみの方は、年末調整時に提出する「令和2年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」の中の、「所得金額調整控除申告書」に記載すれば完了します。
国税庁「令和2年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」を筆者加工
具体的な書き方は以下となります。
国税庁「令和2年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」を筆者加工
① 4つの選択肢から該当するところにチェックを入れます(1つだけ)
② 特別障害者(自分以外の場合)または23歳未満の扶養親族の名前
③ ②の個人番号(勤務先より記入不要とされている場合は書かない)
④ ②の住所(自分と異なる場合は記入)
⑤ ②の生年月日
⑥ 自分との続柄
⑦ ②の所得見積額
⑧ 本人または扶養親族が特別障害者の場合、その内容
(例)・身体障害者手帳1級 ○年○月○日交付
・常に寝たきりで複雑な介護が必要である など
まとめ
新しいことは理解するのが面倒で避けたくなりますが、「控除」なので記載しないと本来払わなくてもいい所得税・住民税を払うことになってしまいます。
給料を受け取っている人で、年末調整の時に所得金額調整控除欄に記載が必要になるのは、年収が850万円を超える人だけです。
年収が850万円を超えるかどうかは、12月の給料の額が決まらないとわからないと思いますが、書いていないと超えたときに控除を受けることができません。超えるかもしれないという人は記入しておきましょう。
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小野 みゆき 中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。
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