25/01/03
【2025年版】住宅ローン金利「固定」と「変動」どちらで借りるべきか プロがタイプ別に指南
物価の上昇とともに、住宅の建設費も増えています。それに加えて土地の価格も上昇してきました。マイホームの購入を急いだ方がいいのではと思っている 人も多いと思います。金利の上昇圧力が懸念されてきて、住宅ローンを選ぶ際に固定金利と変動金利、どちらを選べばいいか今まで以上に悩みますね。
2024年からは金利のある世界に突入し、日銀の金融政策の動向が気になるところです。
今回は、固定金利と変動金利のしくみや違い、選ぶときのポイントについて解説します。
固定金利と変動金利の違い
住宅ローンの金利の種類は、大きく分けると「固定金利」と「変動金利」の2つです。
固定金利の場合、文字通り返済期間中の金利が固定されており、変わらないということです。長期の固定金利型のローンは、10年国債金利が指標になっています。
固定金利の住宅ローンには、返済期間中ずっと金利が固定されている「全期間固定型」や、金利が固定される期間が2年、3年、5年、10年などと決まっている「固定金利期間選択型」があります。
固定金利期間選択型では、たとえば金利の固定期間を10年とした場合、この10年が終わったら以後の金利を変動金利にするか、その時点の金利水準で再計算された固定金利にするかを選択することができます。
一方、変動金利の場合には、その時点での金融情勢に応じた水準の金利で借り入れができます。変動金利型のローンは、日銀の政策金利の影響を受けます。ほとんどの住宅ローンでは半年ごとに金利が見直されます。
ただ、金利が急に上がった、もしくは下がったからといって毎月の返済額まで半年ごとに上下すると大変ですから、返済額自体は5年ごとに見直されるのが一般的です。その際に残りの返済期間や残高、金利水準で返済額が再計算されるということになります。
さらに、返済額が急に何倍にもなってしまわないように、前回の返済額の1.25倍を上限とすることも決まっています。
たとえば返済額が10万円だった場合、どんなに急激な金利上昇を受けたとしても、5年ごとの見直しの際には12.5万円が返済額の上限となるということです。この場合、元本と利息の割合を調整することによって返済額が5年間据え置かれます。そのため元本の未払いが発生し、予定どおりに返済が進まず完済時に未払利息が発生することもあります。
基本的には、変動金利よりも固定金利のほうが金利は高い傾向にあります。変動金利の場合は、短期のプライムレート(最優遇金利)を基準にしています。お金を貸す金融機関は、世の中の金利が高くなると、変動金利ならそのときの情勢に応じて金利を上げることができます。
しかし、固定金利の場合はそうはいきません。どんなに金利が上がっても約束した金利を維持しなければならないので、金利が上がった分の利息を取り損ねてしまいます。そうした将来の金利上昇のリスクがあるため、基本的には固定金利のほうが金利は高くなっているのです。
新規住宅ローン契約、「変動金利型」「固定金利期間選択型」「固定金利型」どれを選ぶべき?
国土交通省住宅局が発表した「令和5年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」によると、新規貸出額において2021年度(令和3年度)は変動金利型を選んだ人の割合が76.2%、2022年度(令和4年度)は77.9%と年々増えています。固定金利期間選択型が前年より減って11.9%で、年々減少傾向にあります。一方、全期間固定金利型とフラット35などの証券化ローンは合わせて10.2%となっており、金利の低さに魅力を感じるためか変動金利型に人気が集まっていることがうかがえます。
変動金利型の金利は年0.3%台の金融機関もあり、金利が前年より低くなって借りやすいということが影響しています。
<変動金利を選んだ人の割合>
国土交通省「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」より
変動金利は、低金利時代の中で最も金利が低く、毎月の返済額が少なくて済み魅力的に映ります。住宅金融支援機構の調査においても、利用した住宅ローンを選んだ理由として、金利が低いことが挙げられています。金利水準も固定金利が徐々に上昇し始めているのに対し、変動金利は横ばいなので金利差が拡大しています。今後金利が上昇しても小幅にとどまれば、変動金利は固定金利よりも返済総額が少なくなるメリットがあります。
一方で、返済中に金利が上昇した場合は、返済額が多くなる、返済額が変動するのでライフプランが立てづらいというデメリットもあります。ですから資金的な余裕を持っておく必要があります。
変動金利型の金利が上がってきた場合には、固定金利型に変更すればいいと考えがちです。しかし、その場合には切り替えに手数料が必要だったり、変動金利型よりも金利が高かったりするなど切り替えが難しくなっています。特に金利上昇局面では、変動金利型よりも固定金利型の金利が先行して上がるという特徴があります。変動金利が上がってからでは、固定金利が上昇してしまった後で手遅れということになってしまうのです。
固定金利期間選択型は、ローンの借入れ当初の負担を押さえたい人に向いています。このタイプでは、固定期間10年を選ぶ人が多く約5割になっていますが、近年は減少傾向。固定期間2年・3年の割合が少しずつ伸びています。
固定期間の終了後は、固定金利型にするのか変動金利型にするのか決めます。ただし、当初の期間だけ金利を大きく引き下げる優遇金利の場合、固定期間終了後に、金利と返済額がアップするので、金利上昇時には注意が必要です。
固定金利型の金利は変動金利より高いものの、金利が上昇した場合の返済額アップのリスクを取らずに済みます。住宅ローンの返済は長期間におよぶので、返済完了までの金利が決まっていると安心ですし、計画的な返済ができます。これから将来の教育費の負担が大きくなる子育て世代に向いています。
ただし、金利水準が上がらなかった場合には変動金利と比較して高めの金利設定なので、返済額が大きくなるのがデメリットになります。また借入金利が変動金利型にくらべて金利が高めなので、借りられる額が減り、住宅購入の予算が制限されることになります。
住宅ローンの借入金が少ない場合や、5年ごとの返済額の見直しで上限の1.25倍に返済額が膨れ上がった場合にも対応できるくらいの経済的な余裕がある場合、また今後収入が上がる見込みがある場合などは変動金利で借り入れを検討することも可能です。
逆に、経済的に当初の返済額から1.25倍に増えてしまったときに支払いが困難になったり、家計を大きく圧迫したりすることが予想される場合には、固定金利型を選んだほうがいいでしょう。
今後は金利が上昇する局面が予想されるので、変動金利を選ぶ場合には金利が上昇した場合のシミュレーションをしておきましょう。変動金利を借りても固定金利を借りたと思ってその差額を繰り上げ返済するなど、金利上昇のリスク管理も大切になります。
<変動金利を選んだ方がいい人>
・金利が上がっても対応できる資金的に余裕がある人
・住宅ローンの借入金が少ない人
・返済期間が短い人
<固定金利を選んだ方がいい人>
・金利が上がらない安心感を重視したい人
・子育て世代などの返済額アップに家計が対応しにくい人
・余裕資金があまり多くない人
<固定金利期間選択型がいい人>
・住宅ローンの借入れ当初の負担を抑えたい人
・固定金利と変動金利のメリットを両方受けたい人
<固定金利と変動金利を併用した方がいい人>
・1つの金利タイプに決められない人
・金利が上下するリスクを分散させたい人
なお、民間住宅ローンでは、「金利ミックスプラン」を選ぶことができます。「ミックス金利」と呼ばれることもあります。
固定金利か変動金利かに迷ったときの選択肢
金利ミックスプランは、固定金利(あるいは固定金利選択型)や変動金利を一定の割合で組み合わせて借りる方法です。大手銀行やネット銀行、一部の地方銀行などで利用できます。金利タイプのほか、「当初優遇型」や「通期優遇型」といった金利プランを組み合わせることもできます。
金利ミックスプランは、家計のことを考えると金利の低い変動金利にしたいけれど、金利が上昇していくと返済が心配だといった場合には、選択肢の1つになります。
たとえば、変動金利のメリットを受けながら、金利上昇時の負担を抑えるために、固定金利を50%、変動金利を50%とするバランス重視の組み合わせにしたり、金利上昇リスクに備えるために超長期固定金利の比率を高めたりすることが可能。自由に設定することができます。ただし、金融機関によっては、それぞれの借入金額の最低ラインが設けられている場合もあります。
ミックスプランのメリットは、固定金利だけの場合にくらべて、当初の返済額が少なくてすむことが挙げられます。金利上昇局面では、変動金利だけで借りるよりは負担が少なくて済みます。
一方、デメリットは、金利水準によっては固定金利・変動金利のほうが有利になる場合があることです。たとえば、金利水準が一定以上の上昇になると、固定金利だけで借りている方が有利になります。また、金利があまり上がらない場合は、変動金利だけで借りた方が有利になります。
金利ミックスプランは、固定か変動かの1つの金利タイプに決められないという場合には、無難な選択肢になります。しかし、固定金利と変動金利の2本の住宅ローンを組むことになるため、諸費用が割高になることに留意しておきましょう。
ライフプランによる住宅ローンの選び方
将来金利が上がるだろうと感じても、いつどんなタイミングで、どれくらいの水準まで上がるのかは、予想することができません。不確定要素が多い中では、「固定と変動、どちらが得か」という発想よりも、将来にわたって支払いが可能な金利タイプなのかを重視すべきだと考えます。すべての人に当てはまる正解ではありませんが、家計の状況をもとに住宅ローンの金利プランを選ぶことも一つです。
金利が変わらない安定さを求める人や、子育て中の家庭、他にも返済中のローンがある人は、全期間固定金利型がいいでしょう。借入金額が少ない人や年収が多い人、貯蓄が多い人は、変動金利型が向いています。金利が上昇して毎月の返済額がアップしても、家計にゆとりがあるかがポイントになります。
また、固定金利か変動金利かを悩む場合や、金利上昇のリスクを軽減したい場合には、ミックス金利が向いています。
いずれの金利タイプも借入額や借入期間などでローンの選び方は変わってきます。長期間の返済や借入額が大きいとブレ幅が大きくなります。将来的な家庭状態を踏まえて住宅ローンを選びましょう。
借り換えは、「固定金利」と「変動金利」、どちらを選ぶのが正解か
契約している住宅ローンよりも低い金利で借り換えができる住宅ローンを見ると、借り換えを検討したくなります。借り換えとは、条件の有利なローンを新たに借りて、現在返済中の住宅ローンを一括返済することです。
確かに、いまの住宅ローンよりも低金利のローンに切り替えれば返済額自体は少なくなるでしょう。しかし、借り換えの場合は、現在の抵当権を抹消して、設定する手続きに新規契約のときと同じくらいの費用がかかります。
住宅ローンを提供している多くの金融機関では、借り換えをした場合のシミュレーションができるようになっていますが、そのシミュレーションに借り換え手続きに必要な諸費用というのは含まれていないことが多く、非常に見えづらいコストになっています。
借り換えにかかるコストは主に、融資に関する事務手数料、抵当権設定費用や登記にかかる費用、保証料などがあり、金融機関や借入金額などによりますが総額30~80万円ほどかかるといわれています。
この30~80万円という金額を支払っても、借り換えしたほうが返済額を減らせるという人は、ローン残高が多く、残りの返済期間が長い人です。
一般的には、
・ローン残高が1000万円以上
・残りの返済期間が10年以上
・借り換えを検討しているローンの金利差が0.3%以上
という3つの条件を全て満たした人が借り換えのメリットを享受できると言われています。もし借り換えに興味がある場合は、借り換えするときの手数料やコストと、借り換え後の返済額を試算してみましょう。
住宅ローンの借り換えでは、金利のほか団体信用生命保険(団信)の充実を求める場合もあります。返済が始まると、病気やケガのほか、失業といった想定外のことに対応できるのか不安になることもあるでしょう。しかし、団信は住宅ローンの契約時にしか入ることができません。わずかな金利上乗せで、さまざまなリスク軽減ができるのなら、団信をもっとよく検討しておけばよかったと後悔する人が多いようです。
ただし、借り換えによってメリットが出るとしても、借り換え自体にも審査が必要となります。新規借り入れの時に審査を通過したからと言って、借り換えでも審査に通るとも限りません。健康状態の悪化や収入の減少、不動産価値の下落などが理由で審査に通らないというケースもあるのです。
また、転職によって勤続年数が短くなった場合やほかのローンを組んだ場合などは審査に不利になる可能性もあるので、注意が必要です。
前出の「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」にある他の住宅ローンからの借り換えの実績をみると、年を追うごとに借り換えが減ってきています。202年度の新規貸出額に占める借り換えの割合は5.6%で前年度より0.3ポイント減少しています。借り換え需要も一巡したといえるでしょう。
借り換えは、金利上昇が意識される局面なので、安心感を得るために毎月の返済額が1~2万円増える程度なら変動金利型から固定金利型に借り換えを検討してもよいのではないかと思います。
一方、変動金利型から変動金利型への借り換えは、たとえ金利差があったとしても、今後の金利上昇のリスクヘッジにはつながりません。金利上昇直面では、変動金利型は借り換えではなく、繰り上げ返済で対応すべきです。
住宅ローン減税の注意点
住宅ローン減税は、ローンを組んで住宅の購入などを行った場合に、年末のローン残高の0.7%を所得税や住民税の税額から差し引ける制度です。
2022年住宅ローン減税改正では、
・控除期間が10年から13年へ延長(中古住宅は10年)
・借入限度額が住宅の性能や種類で分かれる
・控除率が0.7%に引き下げ
・所得要件を3000万円以下から2000万円以下に
などが改正されました。
基準となる借入残高の上限は、住宅の種類により異なります。環境性能に適合しないと、限度額が下がるしくみになっています。
2024年1月以降に建築確認をした新築住宅については、省エネ基準を満たす住宅でない場合には住宅ローン減税を受けることができません。特に「その他の住宅」については、2023年までに新築の建築確認を受けていないと住宅ローン控除を受けることができないので注意が必要です。
また2024年の改正では、少子化対策の一環として2024年入居分を対象に、19歳未満の子どもがいるか夫婦いずれかが40歳未満の世帯に限って、省エネ性能が高い住宅の場合に借入限度額の上限を維持することとなりました。2025年においても、子育て世代の優遇は継続されることになりました。また、子育て世代のリフォームした際の特例措置も2025年末まで延長されます。
【住宅の種類】
・認定住宅…高度な省エネ性や耐震性を備えた住宅
・ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準省エネ住宅…断熱性を高めて年間のエネルギー収支をゼロ以下にした住宅
・省エネ基準適合住宅…国の省エネ基準を満たした住宅
・その他の住宅…省エネ基準を満たさない住宅
●借入残高の上限
筆者作成
2025年の住宅ローン金利の見通し
2022年、ウクライナ侵攻の影響や海外諸国の利上げにより、急激な円安が進行しました。そのため長期金利については、12月に日銀が政策転換して実質的な金利引き上げの方向に舵を切ることになりました。また、2023年には日銀が金融政策を2度修正したため、徐々に固定金利型の金利が上昇しました。
一方、変動金利型は、マイナス金利解除を受けて少しずつ金利が上がっています。日銀は2024年3月と7月の2回利上げを行いました。7月31日の日銀決定会合では、政策金利を0.25%に誘導することが決まったので、2024年10月分から新規借入れや借り換えの住宅ローンに影響が出ています。
2024年12月27日の決定会合では追加利上げは見送られましたが、「利上げ判断に至るには、もう一段ほしい」と日銀総裁は発言しています。利上げをするには、2025年の春闘の賃上げ動向や景気動向のデータを見極めて判断するとしています。
2025年も2024年のように年2回のペースで利上げを進め、利上げ幅を0.25%とすると、2025年中に0.75%に達することになります。過去30年には政策金利の最高水準は0.5%でした。ただし、次期トランプ政権の不安定さとリスクに向き合う必要性から、注意深く景気の状況を見ていく必要があるとし、金利が上がる可能性は大きくなっています。
今後は2025年中の金利の上昇が予想されるので、返済期間が長い場合に安心感を重視する場合には、全期間固定金利型を選ぶとよいでしょう。また返済期間が短い場合や借入金額が少ない場合などは、変動金利型か短期の固定金利期間選択型を選ぶこともできますが、貯蓄して金利上昇に備える、繰り上げ返済をするなどの対策を取っていきましょう。
変動金利型は目先の金利は低くても、長期返済の場合にはブレが大きくなるので、特に注意しなくてはなりません。
住宅ローンは大きな金額を借り入れ、長く付き合っていくものです。その住宅ローン選びは、金利がより低いものをと金利の比較から考えてしまいがちですが、返済期間やライフプランなども考えて、リスク許容度に応じてどの金利のタイプが向いているか検討してみるところから始めてみましょう。
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池田 幸代 株式会社ブリエ 代表取締役 本気の家計プロ®
証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不動産賃貸業経営。「お客様の夢と希望とともに」をキャッチフレーズに2016年に会社設立。福岡を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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