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24/11/10

家計・ライフ

定年後貧乏に陥りやすい、意外と大きい7つの出費

定年後貧乏に陥りやすい、意外と大きい7つの出費

定年後にはどのような暮らしをしたいか、早めに考えておくと何かと安心です。
なぜなら、第一に、心配なことがあれば早めに対策を取れるからです。

たいていの場合、定年後は収入が減りますが支出も減ります。
確かに、シニア世代になってくると食欲や物欲は少なくなり、生活費は抑えられるようになると言われています
ですから、定年後は家計をコンパクトにすればどうにかなる、と思う人は少なくないでしょう。

老後資金を考える場合、まずは必要最小限の費用を計算して、年金と貯蓄でやりくりできるか確認することが必要です。食費や光熱費、日用品代にも困る生活は避けたいものです。しかし、暮らしは食べて寝るだけではありません。定年後であっても、誰しもさまざまなイベントがあります。定年後もそうしたイベントを楽しみつつ、老後資金の心配は小さくしておきたいですね。

そこで今回は、定年後にかかる生活費以外の出費のうち、盲点になりがちなものについてお伝えします。

定年後の意外な出費1:かかり続ける教育費

子どもにかかる費用として、教育費は大きなウエイトを占めています。30代後半から40代で生まれた子どもなら、定年退職になった後も学生である可能性があります。また、定年が65歳だとしても、55歳ごろの役職定年以降に収入が減少傾向になるケースは少なくありません。そのため、老後のための資金を取り崩さざるを得ず、定年後のマネープランに影響が出てしまうことが懸念されます。

大学の年間授業料は、国立は53万5800円、私立文科系の平均は約82万7000円、私立理科系の平均は約116万3000円、私立医歯系の平均は286万3000円です。(文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」より)。

大学の授業料無償化を掲げている政治家もいますが、本当に無償になるかどうかはわかりません。一方で、少子化により大学の統廃合などが進み、入学しやすくなるとも言われています。
しかし、大学によっては競争率が下がることはなく、かえって塾や予備校の費用がかさむようになるかもしれません。

また、学部の卒業後、大学院に進学したいという希望を持つこともあるでしょう。
大学院は初年度納入金だけでも100万円前後かかります。教育費は、子どもの将来にもかかわることなので慎重に考えておきたい資金です。
預貯金をメインに、計画的に考えておきましょう。

預貯金で不足する分は、奨学金の利用を検討します。
日本学生支援機構の奨学金だけはなく、財団や企業のものもあります。
成績や、卒業後に何年か指定の地域で働くなどの条件がつくものもありますが、優秀な人材に投資をしたいのは、誰しも持つ思いなのではないでしょうか。
広く情報を集めておくことが大切です。

定年後の意外な出費2:子どもの結婚

子どもが結婚する際には、親からの援助をしてあげたいと思う方も多いのではないでしょうか。昨今は晩婚化がすすみ、40代で初婚も珍しくありません。そのくらいの年齢なら自分の貯蓄もあるでしょう。とはいえ、もともとは援助を考えていなくても、お相手の親御さんが援助をするなら、こちらも合わせて援助しないと…となるのもありがちなことです。子どもの門出には、マイナスにはたらきそうなことは避けたいものですね。

結婚すると、結婚式・披露宴だけではなく、ハネムーンや新生活準備にもお金がかかります。ゼクシィ「結婚トレンド調査2023」によると、結婚に関連する費用の合計は、全国平均で約470万円。首都圏では、その約1.1倍の約521.7万円です。

<結婚に関する費用の内訳>

ゼクシィ「結婚トレンド調査2023」より筆者作成

とはいえ、これは結納から新婚旅行のお土産まで、すべてに費用をかけた場合の合計です。
実際には、結納式ではなく両家の顔合わせのみにしたり、婚約指輪は作らなかったり、夫婦らしい選択をしています。

親や親族の援助については、「あった」が78.7%、「なかった」が21.3%です。
8割近くで、何らかの援助を親・親族から受けているとのことでした。

<結婚資金の親・親族からの援助>

ゼクシィ「結婚トレンド調査2023」より筆者作成

援助の金額は、全国平均で181.1万円、首都圏では200万円でした。
両家それぞれから援助するのであれば、半分くらいでもいいような気もしますが、あまり節約するのも気が引けますよね。

結婚については相手のあることなので、費用についてもなかなか予想がつきません。
平均的な金額を参考にして準備しておくと安心ですが、費用が子どもたちの貯蓄でまかなえれば、親(自分)たちの老後資金にすればよいと考えておくのが現実的ではないでしょうか。

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定年後の意外な出費3:孫の誕生

孫は子どもよりかわいいと言います。小さいうちはイベントも多いので、費用をかけようと思えばいくらでもかかります。お誕生のお祝いだけではなく、生後100日頃のお食い初め、初節句、七五三、入園、入学、と続きます。毎年お正月にはお年玉、誕生日やクリスマスにはプレゼントなど、きりがないですね。結婚資金と同様、お相手の親御さんに合わせることも考えられます。

孫の教育費に使う資金を援助することもあるでしょう。資金援助は贈与として、贈与税の対象となる場合がありますが、1年間(1.月1日から12月31日まで)で110万円までであれば、贈与税はかかりません。
また、非課税で1500万円まで贈与することができます(教育資金の一括贈与の特例・2026年3月31までの贈与に適用)が、その結果老後資金が不足してしまっては大変です。
いったんあげたお金を返してくれとは言えませんよね。孫のためであってもお金のことはシビアに考えましょう。

かわいい孫のためにはあまり節約したくない、と思うかもしれませんが、孫にかけるお金は年間の予算を決めておきましょう。計画的にすることで自分の老後資金を守ることができますから、結果的に子どもや孫の負担を避けられます。

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定年後の意外な出費4:親の介護

親の介護にもお金がかかります。介護保険だけではまかないきれず、貯蓄を取り崩すこともあるでしょう。生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」によれば、介護費用は、介護用の住宅改修や介護ベッドの購入などの一時的な費用が74万円かかり、その後も月額平均8万3000円の負担が生じています。

介護期間は平均61.1カ月(5年1カ月)ですから、決して少なくない金額です。しかも、介護費用も介護にかかる期間も増加傾向にあります。介護度によっても費用は変わりますが、介護費用は基本的に親のお金から出すようにしましょう。貯蓄を取り崩すのも、親の貯蓄からです。子どもが費用を出すと、自分の老後資金がなくなってしまいます。

介護費についても始めが肝心です。最初から親から出してもらうということは、金融機関口座の管理を少なくとも1つは任せてもらうことにつながります。
介護状態なのですから、老親が自分で口座からお金を引き出して渡してくれる、ということは現実的ではないからです。

自分の親とはいえ、「ひとのお金」。後々のトラブル防止のためにも、収支の記録はつけておきたいところです。
ノートに収支を書き込んで現金出納帳として記録してもいいですし、スマホの家計簿アプリを利用しても便利でしょう。
紙の通帳があるなら、記帳をして鉛筆で何に使ったのか書きこんでもOK。蛍光ペンで印をつけても大丈夫なので、負担の少ない方法で続けることが大切です。

そして、自治体などの介護サービスはしっかり活用しましょう。
インターネットでの情報収集は便利ですが、ケアマネージャーさんとのコミュニケーションを良好にしておくことも大切です。
介護状態に応じた地域ならではの情報などは、個別に対応してくれているケアマネさんが頼りになります。

できれば親が元気なうちに、貯蓄のことや加入している保険のこと、住宅やお墓のことなども確認しておけると安心です。あわせて、万が一の場合の治療方針の希望も聞いておきましょう。
そして、きょうだい間での情報共有も大切です。きょうだい・親族間の不公平感から生まれがちなトラブルを避けるためにも、親の介護の話は必ず共有しましょう。

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定年後の意外な出費5:墓じまい

近年、墓じまいが増えています。先祖代々のお墓が実家の近くあると、遠くてたびたび行かれないので墓じまいをして、自宅近くにお墓を移したいと思う、などの理由が多いようです。
墓じまいには、移転元でのお墓の撤去、遺骨の取り出し、お布施、離檀料のほか、移転先でも墓石を使うならその運搬費も必要です。

移転先では、埋葬費、お布施、入檀料などがかかります。子どもがいないなど、将来的にお墓を継ぐ人がいなくなるケースでは、樹木葬など合同葬を選ぶことも増えています。
費用は、50万~数百万円とも言われ、お布施や離檀料などが大きく影響するようです。

お墓のことは、自分ひとりで決められず、きょうだいや親族の意向も踏まえて決めることになるでしょう。つまり、お金も労力もかかるということ。できれば定年後まで持ち越さず、早めに対処しておけると安心です。
墓じまいの代行業者も多いので、複数の見積もりをとって納得できる墓じまいができるようにしましょう。

定年後の意外な出費6:住まいのリフォーム

住まいのリフォームは、家の老朽化だけでははく、介護予防や子ども世帯との同居などをきっかけに考える人も多くいます。
あるいは、転倒してケガをしたり、病気で手術をしたり、といったことがきっかけになることも。

その際は場合によって入院中に、病院側から自宅の状態を踏まえてアドバイスがあります。
たとえば浴室とトイレに手すりをつけることや、室内の段差を解消することなどのアドバイスがあれば、安全に暮らすため、退院前にリフォームする必要があります。
しかし、必要に迫られてから急いで行うリフォームは、十分な比較検討ができず割高になってしまいがち。リフォームについてもゆとりをもって早めに考え始めましょう。

介護保険を使えるのであれば、住宅改修費として最大20万円の支給を受けられます。
手すりの取り付け、段差の解消だけではなく、滑らないような床材にする、扉を引き戸に変えるなども対象ですので、要支援など状態が軽いうちに改修しておくことがオススメです。

ただし、申請には所定の用紙や、工事の見積書なども必要になります。
まずは自治体の窓口で条件や手順を確認してから、複数の業者を比較検討した上で実行に移します。
時間がかかるので、定年前後には済ませておきたいタスクですね。

バリアフリー、省エネ、同居対応といったリフォームは、一定の条件をクリアすると減税や給付金が受けられる制度もあります。
バリアフリーにしておけば自宅での転倒予防にもなります。転倒のケガは要介護のきっかけになることが多いので、対策をしておくと安心です。
また、省エネリフォームをすることで月々の電気・ガス代の節約ができれば、長い目でみてオトクになります。制度を上手に利用して、資金計画を立てておくことがポイントになります。

定年後の意外な出費7:自分の医療費

定年前後には、自分の健康にもより一層の注意が必要です。
健康をそこなえば、生活そのものへの影響はもちろんのこと、経済的にもダメージが避けられません。医療費は年齢とともに高額になる傾向です。

厚生労働省の調べによれば、60代前半では年間37.7万円だった医療費も、85歳を超えると100万円の大台を超えます。

●年齢階級別1人当たり医療費と自己負担額(年額)

厚生労働省資料より筆者作成

とはいえ、自己負担分は医療費の1~3割になり、さらに高額療養費制度もありますので、年額10万円以内におさまっていることがわかります。なお、この金額は保険診療の自己負担分です。差額ベッド代や、交通費、自由診療は含まれていません。

療養をすれば自分だけではなく、家族の仕事を含めた生活全体に影響があります。
収入が減って支出が増えれば、家計も厳しくならざるを得ないでしょう。
そんな時には、入院や手術をした場合に給付金が受け取れる、医療保険の備えがあると心強いですね。

最近の傾向として、入院は短期間になっています。退院後も自宅療養するのであれば、通院や投薬にも費用がかかりますので、その備えもしておきたいところ。
新しい医療保険は、入院日数に応じた給付だけではなく、入院すれば一時金が出るものもあります。
ずっと昔に加入したままの保険があれば、健康なうちに見直しておくと安心です。

予想外の出費にどう備える?

定年後におこる予想外の出費は、収入が限られるなか家計への影響が大きくなります。あらかじめ準備して、安心の老後をむかえましょう。
では、具体的にどのようにして備えていけばいいのでしょうか。

●年金記録を要チェック

誕生日ごろに届くねんきん定期便やねんきんネットなどを確認して、年金の記録漏れや記録ミスがないかしっかり確認しましょう。特に、会社が独自に行う企業年金は見逃しがちです。転職経験のある人は、それぞれの会社で加入していなかったかどうか確認してみてください。

特に女性は、結婚、退職、夫の転職などによって年金記録の変更が多くなりがちです。
また、年金記録は勤務する事業所ごとに管理するので、会社が変わっていなくても、転勤や出向があればその都度、加入記録が変更になり、把握しきれなくなることも。
これまでの職歴を振り返り、加入していたのに記録に反映されていなければ、しっかり調べてもらいましょう。

●国民年金の任意加入と付加年金を利用する

国民年金の加入期間は20~60歳までの40年間です。全期間にわたって保険料を払い込めば、年金は満額受け取ることができますが、納めていない期間があれば、その分年金の受け取れる金額は減ってしまいます。
しかし、そんな場合には60歳以降も国民年金に加入して年金額を増やすことができます。

仮に65歳まで5年間任意加入して、未納期間を5年間少なくできたら(加入期間を5年多くできたら)、もらえる国民年金(老齢基礎年金)は年額で10万円近く増えます。
さらに付加年金を組み合わせると、よりおトクです。付加年金の保険料は毎月400円ですが、納めた月数付加年金×200円、年金額がアップします。つまり、2年受け取れば元がとれる仕組み。5年間加入すれば年金が1万2000円増額され、一生涯変わりません。

●年金の繰り下げ受給をする

年金の受け取りを遅らせる「繰り下げ受給」をすると、1カ月につき0.7%ずつ年金が増額できます。繰り下げ受給は、2022年4月から最長で75歳(84%増)までできるようになりました。定年後も仕事を続ければ収入が得られ、老齢年金の必要度は少ないため、年金の繰下げをして将来に備えることもできます。

とはいえ、現役世代と同程度の収入というわけにいかないのであれば、年金の全額を繰下げると家計への影響が大きくなってしまうかもしれません。そんな時には、夫婦の年金で妻だけ繰り下げることや、老齢基礎年金だけ繰り下げることもできるので、家計の状況に合わせて決められます。

●iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)に加入する

iDeCoは、節税しながら老後資金が貯められるおトクな制度。iDeCoの掛金は全額所得控除できるので、所得税や住民税も安くできます。また、資金を運用して利益が出ても非課税、受け取り時にも税制優遇があります。
とはいえ、iDeCoは公的年金の上乗せですから、国民年金もしくは厚生年金に加入していないとiDeCoにも加入できません。

従来はiDeCoに加入できるのは60歳まででしたが、2022年5月の法改正以降は、会社員・公務員として働く(国民年金の第2号被保険者になる)か、国民年金の任意加入をしていれば65歳になるまでiDeCoにも加入できるようになりました(その他の方は60歳になるまでiDeCoに加入可能)。

●NISA(ニーサ、少額投資非課税制度)で資産運用する

NISAは、個人投資家のための税制優遇制度。投資信託などで資金を運用して得られた利益が非課税になります。2024年からの新NISAでは、利益を一生涯にわたって非課税にできるようになりました。

新NISAのつみたて投資枠では、金融庁の基準を満たした投資信託やETF(上場投資信託)に年120万円まで投資が可能。投資初心者でも、長期・積立・分散投資によってじっくりとお金を増やす期待ができます。リスクをおさえて運用したい、老後資金準備に適していると言えるでしょう。
また成長投資枠は、上場株式・投資信託・ETF・REIT(不動産投資信託)に年240万円まで投資ができます。つみたて投資枠よりも多くの商品に投資できるうえ、積立投資だけでなく一括投資もできます。 なお、つみたて投資枠と成長投資枠は併用もできます。

●定年後も働く

定年後も働いて収入を得れば、その分貯蓄にまわせる資金も増えます。また、厚生年金に加入すれば、老齢厚生年金も増やすことができます。
厚生年金は、週の所定労働時間が20時間以上の短時間勤務でも加入できます。今までは従業員501人以上の企業が対象でしたが、2024年10月からは51人以上の企業も対象になりました。今後、さらに従業員の要件を撤廃する動きもあります。

せっかく働くのであれば、社会保険に加入できる働き方を選ぶ視点も持っていただきたいと思います。
万が一、障害状態になった場合には障害年金が受け取れますが、初診日が厚生年金加入中であれば、国民年金の障害年金に上乗せされた金額を受け取ることが可能です。

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お金の準備は早めに始めよう

超高齢化が進み、老後の期間はますます長くなっています。
充実したシニアライフを送るためには、健康とともに資金の準備が大切です。早めに準備をはじめて、理想の暮らしを実現させてください。

タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)

36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー

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