24/01/14
ねんきん定期便「放置」は絶対ダメ!放置した人が辿る悲しい末路
毎年、誕生日ごろに送られてくる「ねんきん定期便」。きちんとチェックしていますか?「そういえば来ていたような気がするけど、見ないままどこかにいっちゃった」「数字がたくさんあって、どこを見ればいいのかわからない」などという声がよく聞かれます。
今回は、ねんきん定期便をチェックせず放置した結果起こる3つの不都合なことと、ねんきん定期便が届いたらとるべきたった1つの行動をご紹介いたします。
年に1回のことですので、手元に届いている方は今すぐ、ない方は次回届いたときに、ぜひチェックしてみてください。
年金の状況が確認できるねんきん定期便
ねんきん定期便は、これまでの年金加入期間や加入実績に応じた年金額、保険料納付額、最近の月別納付状況などが確認できる書類です。日本年金機構が毎年1回、誕生月に国民年金および厚生年金の加入者の方に対して、年金加入記録の確認と年金制度について理解を深めてもらうことを目的として送付しています。
<ねんきん定期便の区分と内容>
筆者作成
通常、ねんきん定期便はハガキで届きますが、35歳、45歳、59歳の誕生月には封書のねんきん定期便が届きます。また封書のねんきん定期便には、年金加入記録の確認方法を記載したパンフレットや、年金加入記録に「もれ」や「誤り」があった場合に提出する年金加入記録回答票が同封されています。もれや誤りがない場合には、回答する必要はありません。
封書のねんきん定期便は、毎年送られてくるねんきん定期便の中でも特に重要な通知となるので、必ず手元に保管するようにしましょう。
ねんきん定期便、放置で起こる残念な3つのこと
重要なねんきん定期便とはいえ、複雑な書類を見るのは少し面倒に感じるという方も多いでしょう。とはいえ、放置すると不都合なことが起きる可能性があります。それを防ぐためのねんきん定期便のチェックポイントと対処法を3つ紹介します。
<ねんきん定期便(50歳未満・表面>
筆者作成
●ねんきん定期便、放置で起こる残念なポイント1:「もれ」や「誤り」の原因に
→住所・氏名が一致しているかチェックしよう
ねんきん定期便が届いたら、上の①の宛名の住所氏名が現在の住所氏名と一致しているか、必ず確認するようにしましょう。特に直近で結婚や離婚した場合、変更手続きがなされておらず、以前の名義や旧住所のままになっている場合もあります。誕生月になってもねんきん定期便が届かない場合も同様です。
厚生年金に加入している会社員は勤務先の年金担当部署に、国民年金に加入している自営業者は役所や年金事務所の窓口に問い合わせてみましょう。
【表示されている氏名が異なっている場合の対処法】
厚生年金保険に加入している方は勤務先の事業所へ、国民年金に加入している方はお住まいの市区町村役場へ、厚生年金保険・共済組合等に加入している方の配偶者は、配偶者の勤務先の事業所へ変更の申し出をします。
●ねんきん定期便、放置で起こる残念なポイント2:うっかり「未納」に気づかない
→未納となっている期間がないかをチェックしよう
「最近の月別状況です」の部分を開いて未納の有無を確認しましょう。未納の有無は②の「国民年金(第1号・第3号)納付状況」の部分で確認できます。ここには年金の加入や変更履歴などの記録が記載されていて、会社を辞めて国民年金に切り替わった時期や、専業主婦になって夫の扶養に入った時期などを確認することができます。
転職や離職経験がある人は、年金が切り替わるタイミングでうっかり国民年金が未納になっているケースもあります。未納の場合、将来の年金額が減ってしまうばかりか、老齢年金だけでなく、遺族年金や障害年金の受給にも支障をきたすことがあるので、いざというときにこれらの年金を受給できるよう、できるだけ支払っておくことをおすすめします。
【未納があった場合の対処法】
年金の未納が続いた場合、まず納付督励といって、封書やはがきで保険料支払いの案内が届きます。通常は2年前までの分であればさかのぼって納めることができます。案内にしたがってすみやかに納付をしてください。
年金保険料はできるだけ全額支払うことをおすすめしますが、やむを得ない場合は放置せず、免除や猶予申請を行いましょう。免除や猶予から10年以内であれば、保険料を後から納める(追納する)ことも可能です。
●ねんきん定期便、放置で起こる残念なポイント3:手続きの不備がある場合も
→標準報酬月額や標準賞与額の部分をチェックしよう
「最近の月別状況です」の③にある「厚生年金保険」の部分で、内容に「もれ」や「誤り」がないか確認します。具体的には、記載されている標準報酬月額や標準賞与額の部分を確認して下さい。実際に保険料を支払ったのに記載がなかったり、給与の大きな変動があったのにそのままになっていたりしないかをチェックしましょう。
一時期勤務していた企業が手続きをちゃんとしておらず、加入がない時期がある、といったケースが考えられます。昔のことになると覚えてないことが多いため、転職などがあった際には、できるだけわすれずチェックをしましょう。
【年金加入記録にもれや誤りがある場合の対処法】
年金加入記録回答票に必要事項を記入して、同封の返信用封筒で返送するか、お近くの年金事務所に提出して下さい。最寄りの年金事務所は、日本年金機構のホームページで場所を確認することができます。
50歳未満のねんきん定期便では将来もらえる年金額は分からない
以上3つのポイントを確認すれば、年金保険料をきちんと払っているのに年金額にちゃんと反映されないといった最悪の事態は免れます。では、肝心の将来もらえる年金額はどこを見ればよいのでしょう。
50歳以降の方に送られるねんきん定期便には、このまま60歳まで払い込みを続けた場合の「老齢年金の種類と見込み額」がハガキの裏面に記載されるようになります。途中で仕事を辞めたり、保険料の払い込みが停止になったりしなければ、ほぼ記載通りの年金をもらえることになるので、これをもとに老後の生活設計を立てることが可能になります。
しかしながら、50歳未満の方に送られるねんきん定期便の場合、現時点での保険料の払い込み期間に応じた金額しか記載されていません。年齢が若い20代~30代の人は年金加入期間が短いため「これまでの加入実績に応じた年金額」の少なさに驚くかもしれません。つまり、50歳未満の場合、今後の加入が全く考慮されていないため、実際の年金額とはかけはなれた金額になってしまうのです。
<ねんきん定期便(50歳未満・裏面)>
筆者作成
ねんきん定期便が来たら、とるべきたった1つの行動
そこで、筆者は50歳以下の方に向けては、ねんきん定期便が送られてきたら、たった1つだけアクションを起こすことをおすすめしております。
それは、「ねんきんネット」に登録すること、たったこれだけです。
ねんきん定期便はとても重要な書類なのですが、なにしろハガキなので、記載できる情報量に限りがあります。あなたが本当に知りたい情報を補完してくれる強い味方が、ねんきんネットなのです。また、一定期間(1年間以上)ログインしていないと日本年金機構から定期的に確認を促すメールが送られてきますので、うっかり年金加入履歴を見ないまま数年間放置してしまうという事態も防げます。
ここでは、ねんきんネットで活用したい3つの機能をご紹介します。
●ねんきんネットの便利な機能①:情報量と更新頻度が格段に違う[年金記録照会]
例えば、はがきで届くねんきん定期便の年金記録は直近1年間のみの記載しかありませんが、ねんきんネットにアクセスすれば、あなたの20歳からのすべての年金記録が確認できます。また、年金記録照会も以下のようにより詳細な情報が確認できます。
【ねんきんネットの[年金記録照会]で確認できること】
・これまでの年金加入履歴
・厚生年金加入記録
資格取得/喪失年月日・お勤め先の名称・標準報酬月額/標準賞与額 など
・国民年金加入記録
各月の納付状況 など
国民年金保険料を納付していない期間や厚生年金保険の標準報酬月額に大幅な変更がある場合など、特に注意して確認すべき年金記録がアイコンで分かりやすく表示されるため確認も簡単です。
<ねんきんネットの[年金記録照会]画面イメージ>
日本年金機構のウェブサイトより
また、更新頻度についても、ねんきんネットが圧倒的に有利です。ねんきん定期便のはがきが届くのは年に1回のみですが、ねんきんネットは自動的に最新の情報に更新され、いつでもアクセスして情報を確認できます。
●便利な機能②:充実したシミュレーションがうれしい[年金見込額試算]
さらにおすすめなのが、シミュレーション機能です。50歳未満の方であれば特に、この先ずっと定年まで今の会社に勤めるという前提条件は通用しないかもしれません。ねんきんネットの優れた点は、これからの働き方によって将来もらえる年金がいくらになるのかを簡単にシミュレーションできるところです。
将来もらう年金見込み額は、60歳までに会社員で働くのか、自営業者として働くのか、また保険料はいくら納めるのかによって金額が異なります。そこで、今後の職業や収入についての質問に答えるだけで、それぞれのケースで年金見込額試算ができます。また繰上げ受給や繰下げ受給を選択した場合の年金見込額の試算も可能です。そのため、年金受給開始年齢によってもらえる金額がどのように変動するかを実際の数字を目で見て確認できます。
●便利な機能③:年金記録の管理・保存が簡単[電子版ねんきん定期便]
「電子版 ねんきん定期便」は、毎年はがきで送られてくるねんきん定期便の内容をインターネットで確認することができるサービスです。電子版ねんきん定期便の閲覧・PDFファイルのダウンロードをすることで、年金記録の管理・保存が簡単にできるようになります。
電子版のねんきん定期便ははがきで送られてくるレイアウトがそのまま採用されているため、いままでハガキで確認することに慣れている方でも違和感なく利用できるものになっています。
一度、ねんきんネットに登録さえ完了すれば、ねんきんネット利用者へは、誕生月に電子版のねんきん定期便のお知らせが届くようになります。このお知らせメールは、郵送されるねんきん定期便よりも1~2カ月ほど早く内容を確認できるのもありがたいですね。
なお、ねんきんネット内で、はがき版のねんきん定期便の郵送を停止することもできます。郵便物をチェックするのが億劫な人や、紛失してしまうといった懸念がある人は電子版ねんきん定期便を利用するのもおすすめです。
マイナポータルを連携することでさらにできることが広がる
ねんきんネットは、日本年金機構のウェブサイトからアクセスができます。上記のようにそれだけでも大変便利なのですが、「マイナポータル」を連携することでさらにできることが広がります。
マイナポータルとは、マイナンバーカードを使って、行政に関する手続きや自分自身の情報の確認を必要な時に行える仕組みです。マイナンバーカードと利用者証明用電子証明書パスワードさえあれば簡単に登録が可能です。
マイナポータルは「ねんきんネット」とも連携できます。ねんきんネットとマイナポータルを連携すると、以下の3つのメリットがあります。
①「社会保険料控除証明書」「公的年金等の源泉徴収票」の入手ができる
ねんきんネットとマイナポータルを連携することで、「社会保険料控除証明書」や「公的年金等の源泉徴収票」が入手できます。これにより、確定申告などの申告書作成時に必要な情報を手間なく取得することができるため、確定申告をする方にとっては特に便利な機能と言えるでしょう。
「社会保険料控除証明書」や「公的年金等の源泉徴収票」は所定の時期がくれば自宅に郵送されますが、郵送時期が遅かったり、紛失してしまったりする心配もあります。その点、マイナポータルと連携しておけば、いつでもこれらの書類が印刷できるため紛失のリスクや保管の必要がありません。
②e-Taxによる確定申告もできる
マイナポータルの「もっとつながる」機能を利用することで、マイナポータルとe-Taxとをつなげられます。e-Taxを使うことで、確定申告も可能で、年金保険料は自動で入力されるので入力の手間を省くことができます。確定申告をe-Taxで行っている場合は、ぜひ連携することをおすすめします。マイナポータルとe-Taxを連携することで、マイナポータル経由でログインすることができるようになります。
③免除・納付猶予のネット申請ができる
ねんきんネットとマイナポータルを連携することで、年金保険料の免除や納付猶予の申請も容易になります。従来は、免除や納付猶予の申請は郵送で行うのが通常でしたが、マイナポータルと連携すればネット上で申請することができるためです。
学生納付特例の申請も可能ですので、学生がご家庭にいる方にとっては、便利な機能と言えるでしょう。郵送だとどうしても申請手続きを後回しになりがちです。その結果、免除申請を忘れてしまったり、書類を無くしてしまったりする可能性もあります。
ネットであればすぐに申請できるため、書類の紛失や申請忘れなどのトラブルも減らすことができるでしょう。
ねんきんネットとマイナポータルの連携方法は簡単
ねんきんネットとマイナポータルを連携するためには、マイナポータルへの登録が必要です。スマホでもパソコンでも登録できますが、パソコンで登録する場合でもスマホが必要なので、スマホの方が簡単です。
マイナポータルに登録するためには、マイナンバーカードと利用者証明用電子証明書パスワードが必要になりますので、スマホとともに準備しておきましょう。もし利用者証明用電子証明書パスワードを忘れてしまった場合は、再設定が必要です。
再設定は住民票がある市区町村の窓口でしか行えません。その際、免許証などの顔写真付き公的証明書が必要になるので、忘れずに持参しましょう。
マイナンバーカードと利用者証明用電子証明書パスワードが準備できたら、ご自身のスマートフォンに「マイナポータルアプリ」をダウンロードします。
ダウンロードが終わったら、マイナンバーカードの読み取りと利用者証明用電子証明書パスワードを入力します。読み取りが終わったら、利用者情報を入力し、入力内容の確認をして終了します。ここまででマイナポータルの登録は終了です。
マイナポータルの登録が完了したら、次はねんきんネットと連携します。まずマイナポータルの注目の情報から「年金記録・見込額を見る(ねんきんネット)」をクリックします。次にねんきんネットの利用規約等に同意して連携ボタンを押せば完了です。
ねんきんネットが表示されたら、最後にメールアドレスを登録すると利用開始となります。
ねんきんネットとマイナポータルの連携は以上です。マイナンバーカードをお持ちの方であれば、マイナポータル経由の方が比較的簡単に連携することができるのでおすすめです。
ねんきんネットとマイナポータルを連携する際の注意点
ねんきんネットとマイナポータルは簡単に連携できますが、注意すべき点もあります。それは、初回利用登録可能な時間帯が、平日8時から23時までということです。初回利用に限り、平日に行うようにしましょう。
ねんきんネットとマイナポータルの連携は初回だけでOKです。一度連携すると「年金記録・見込額を見る(ねんきんネット)」をクリックするだけで見られます。ただしマイナポータルへのログインは毎回「マイナンバーカード」と「利用者証明用電子証明書パスワード」の入力が必要です。
前述したように「利用者証明用電子証明書パスワード」を忘れてしまうと、再設定が必要になるので忘れないようにこちらも注意しましょう。
ねんきんネットへの登録は、ねんきん定期便からもできる
ねんきんネットには、ねんきん定期便を利用して登録する方法もあります。ねんきん定期便に記載されている「お客様のアクセスキー」と基礎年金番号(年金手帳に記載)を利用すれば、その日のうちにねんきんネットへの登録が完了します。マイナンバーカードをお持ちでない場合は、この方法を利用するのが簡単でしょう。
なお、ねんきん定期便に記載されているアクセスキーを使用できる期間は3カ月間なのでご注意ください。
<ねんきん定期便のアクセスキー(50歳未満・裏面)>
筆者作成
マイナンバーカードがなく、アクセスキーもない(あるいは、期限が切れてしまった)場合でも、ねんきんネットへの登録は可能です。ねんきんネットの「新規登録」から「アクセスキーなし」を選び、指示にしたがって手続きすると、後日ユーザーIDが郵送で届きます。これを利用することでねんきんネットへの登録ができます。
利用手続きが面倒な方には、手軽な「公的年金シミュレーター」がおすすめ
年金の見込み受給額は、日本年金機構が運用している「ねんきんネット」が一番正確ですが、上記の通り、利用登録が必要で、本人確認のための手続きがネックという声もあります。
そこで、厚生労働省は「公的年金シミュレーター」を開発し、2022年4月25日から試験運用を開始しています。「公的年金シミュレーター」は、スマートフォンで簡単に年金額の試算ができるツールです。
2022年4月以降、ねんきん定期便の表面の右下には、二次元コードが付いています。この二次元コードをスマートフォンで読み取り、生年月日を入力すると将来の年金見込額を試算できるというものです。
<公的年金シミュレーターの二次元バーコード>
筆者作成
ねんきん定期便の二次元コードを読み取り、生年月日を入力すると、自動的に現在の働き方を続けた場合の年金見込み額がグラフで表示されるようになっています。さらに、年金受け取り開始年齢や就業完了年齢などの諸条件を変えたいときには、スライドバーやプラスマイナスボタンを操作するだけで将来もらえる年金額の試算が変わり、その都度グラフで再表示されるようになっています。
ただし、公的年金シミュレーターの資産額はあくまで参考の金額です。公的年金シミュレーターでは自分の過去の納付状況等の確認まではできません。また、より詳細に条件を設定して年金見込み受給額を把握したい場合にも、前述の日本年金機構「ねんきんネット」を利用することをおすすめします。
ねんきんネットを利用しよう!
ねんきん定期便が届いたら、「ねんきんネット」に登録する!これこそが、ねんきん定期便、放置で起こる悲しい末路を防ぎ、老後の不安を解消するためにとるべき、たった1つのアクションです。
老後の備えは現実を知ることから始まります。自分の年金がいくらもらえるのかを「ねんきんネット」を使って把握することは、現実に即した働き方のシフトチェンジや老後の生活設計にとても役立つはずです。ねんきん定期便が届いたら、ねんきんネットを始めるきっかけと捉えてみるのはいかがでしょうか
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KIWI ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士
長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。プライベートでは2児の母。地域の子どもたちに「おかねの役割」や「はたらく意義」を伝える職育アドバイザー活動を行っている。
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