24/12/20
億超え資産家でも「住民税非課税世帯への給付金がもらえる」のは本当か
所得が少ない住民税非課税世帯には、さまざまな社会的な支援があります。所得が少なくとも安心して生活できるサポート体制が敷かれています。給付金もそのひとつで、支給対象が住民税非課税世帯となっていることがよくあります。
住民税は前年の所得にかかるものなので、貯蓄があっても所得がなければ住民税非課税世帯になります。では、億を超える資産があっても、所得がなければ住民税非課税世帯として、給付金はもらえるのでしょうか。
そもそも住民税非課税世帯とは?
住民税非課税世帯とは、住んでいる自治体に対する住民税が課税されない世帯のことです。
住民税は、前年の所得に対して、個人ごとにかかります。前年の所得が一定水準を下回るなどの条件を満たした場合は、住民税はかかりません。つまり住民税非課税です。
そして、世帯のメンバー全員が非課税なら、その世帯は、住民税非課税世帯というわけです。
住民税が非課税になる条件は、世帯の家族構成や地域によっても異なりますが、単身世帯の場合、1年間の給与収入が約100万円以下。たとえば、一人暮らしで収入はパート勤務の月8万円だけ、といった場合などです。
しかし、多額の貯蓄があれば、貯蓄を取り崩しながらゆとりの生活ができますよね。住民税非課税世帯のイメージとは異なる暮らしぶりかもしれませんが、もしも仕事をしていなければ給与収入はゼロです。そして、前年の所得がゼロになったり、少なかったりすれば、住民税非課税世帯になりえます。
SNSでは、ある億超え資産家が話題になりました。資産が40億円以上もあり、羽振りのいい暮らしをしているにもかかわらず、住民税非課税世帯に対する給付金が支払われるというのです。もちろん、給付金の支給条件は「住民税非課税世帯」ですから、ルール上は間違ってはいません。給付金をもらうことができます。
しかし、当の本人も「本当にこれでいいの?」とSNSに投稿しています。
住民税非課税世帯の優遇措置
住民税非課税世帯の優遇措置には、以下のようなものがあります。
●給付金がもらえる
令和6年度分の住民税において、新たに住民税非課税となった方のみの世帯に対して、10万円の給付金が支給されました。また、18歳以下の子どもがいる場合には、1人あたり5万円が追加で給付されました。
さらに、2024年11月22日に閣議決定された総合経済対策では、住民税非課税世帯一世帯あたり3万円、子ども1人あたり2万円の給付金を支給することが盛り込まれています。
●2歳未満の保育が無償化される
幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する3〜5歳児の保育は無料ですが、住民税非課税世帯の場合はさらに0〜2歳児の保育も無料になります。
●高等教育無償化の対象になる
大学等に進学する際の費用の給付・減免を受けることができます。金額は通う学校の種類やどこから通うか(自宅か自宅外か)で異なりますが、住民税非課税世帯は第I区分といって、給付・減免が手厚くなります。
●国民年金保険料や国民健康保険料の負担が減る
国民年金保険料は申請すれば免除が受けられます。保険料の全額を免除された期間は、老齢年金を受け取る際に、保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1(税金分)を受け取れます。また、国民健康保険料の負担も2割〜7割軽減されます。
●高額療養費制度の自己負担額が減る
1か月の医療費が高額になった場合の自己負担を一定額に抑えることができる高額療養費制度の自己負担額は所得水準で異なります。住民税非課税世帯は、この自己負担額も少なくて済みます。一般的な所得の人(年収約370万円〜770万円)の1か月の医療費が100万円だった場合、自己負担額は8万7430円ですが、住民税非課税世帯の1か月の自己負担は3万5400円と、半額以下で済みます。
●介護サービス利用料の減額
介護保険の自己負担は、所得に応じて1~3割のいずれかです。
負担の上限額は、住民税非課税世帯の場合には月4万4400円です。
また、医療費と合算して、1年間で34万円超えた場合には払い戻しが受けられます(70歳未満)。
住民税非課税世帯はトクなのか
住民税非課税世帯にはさまざまな優遇措置があるので、なんだかお得なように思われるかもしれません。しかし、住民税非課税世帯は、何らかの理由で収入が少ないために住民税が非課税になっているということを忘れないようにしましょう。そうした人たちを支援する必要があることは間違いありません。少なくとも、「トクだから住民税非課税世帯になる」ために収入を減らす…といったことは、本末転倒です。
しかし、貯蓄がたくさんあっても前年の所得がないために住民税非課税世帯になるという状況は、おそらく想定外なのではないでしょうか。
先の億超え投資家も、「生活ギリギリの働いてる世帯には1円も給付されず、生活費を毎月1000万円使ってる資産40億円の口座に生活支援金10万円が勝手に入金される」(原文ママ)と投稿しています。
ルール上は正しいとはいえ、なんらかの是正が行われる日が来るかもしれません。
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タケイ 啓子 ファイナンシャルプランナー(AFP)
36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー
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