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24/11/30

相続・税金・年金

なぜか日本人の98%がやっていない…年金を確実に増やす「唯一」の方法

なぜか日本人の98%がやっていない…年金を確実に増やす「唯一」の方法

公的年金を確実に増額する方法を知っていますか。それは繰り下げ受給することです。公的年金制度は複雑で、将来もらえる老齢年金額はご自身の賃金実績や物価推移によるなど、不確定要素はありますが、繰り下げ受給を利用すると、年金受給を先送りした月数分、確実に年金を増やすことができます。今回は、繰り下げ受給についてみていきましょう。

公的年金の繰り下げ受給とは

公的年金の繰り下げ受給とは、65歳からの老齢年金の受給時期を66歳以降に遅らせることを言います。老齢年金を受給できるようになるのは原則として65歳からですが、ご自身の選択により最長で10年間、75歳まで(昭和27年4月1日以前生まれの方または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している方は70歳まで)先送りすることができます。

繰り下げ受給を行うと、将来受け取る老齢年金額を増やすことができます。繰り下げ受給の増額率は、以下の計算式で求められます。

●繰り下げ受給の増額率

増額率 = 0.7% × 65歳に達した月※1から繰り下げ申出月の前月までの月数※2
※1 65歳に達した日は、65歳の誕生日の前日。

※2 65歳以後に年金を受け取る権利が発生した場合は、年金を受け取る権利が発生した月から繰下げ申出月の前月までの月数。

最大で75歳まで繰り下げると、増額率は84%になります。

<繰り下げ増額早見表>

日本年金機構のウェブサイトより

なお、一度繰り下げ受給を選択すれば、増額率は一生涯変わりません。以後増額された年金を受け取ることができます。老齢年金には老齢基礎年金と老齢厚生年金がありますが、一方のみ選択しての繰り下げや、それぞれ違う時期に繰り下げ受給することもできます。

なぜ98%の人が繰り下げ受給しない?繰り下げ受給の注意点

年金額が増やせる繰り下げ受給ですが、これを選択する人は実は少ないのが現実です。
厚生労働省「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業年報」によれば、国民年金受給権者のうち繰り下げ受給者の割合は2%、老齢厚生年金の受給権者においてはわずか1.3%となっています。これでも、ここ数年は増加傾向にあるのですが、98%の人は繰り下げ受給をしていないのです。

少し前の調査ですが、厚生労働省「年金制度に関する総合調査」(2019年)では、「あなたは、いつから年金を受け取りたいと考えますか(または実際に受け取りましたか)」という問いに対し、60歳以上の約半数が「65歳よりも前から、受け取りたい(または実際に受け取っている)」と回答しています。
また、その理由を聞いた質問では「自分がいつまで生きられるかわからないので、受け取れる間に受け取りたいから」「年金以外の収入が無いから」が多くなっています。
老後の収入に対する不安が大きいことが、繰り下げ受給を選べない原因になっているようです。

また、繰り下げ受給には次のような注意点があります。

●繰り下げ受給の注意点1:加給年金がもらえなくなる

加給年金は年金版家族手当とも呼ばれ、厚生年金に20年以上加入した人が65歳になると、一定条件を満たせば年下の配偶者が65歳になるまで年間40万8100円(2024年度)を受け取ることができます。ただし、加給年金は厚生年金とセットで支給されるため、厚生年金を繰り下げている期間はもらえません。ただし、厚生年金額が大きい場合は、加給年金のマイナスを踏まえても繰り下げが有利となる場合があります。
なお、基礎年金のみ繰り下げる分には、加給年金は問題なくもらえます。

●繰り下げ受給の注意点2:遺族厚生年金の支給額は増額されない

遺族厚生年金は一家の稼ぎ手がなくなった場合、一定の要件を満たす扶養家族が受け取れる年金です。老後に配偶者に先立たれた場合は、配偶者が厚生年金に25年以上加入していた場合に、一定の要件を満たすことで受け取ることができます。ただ、遺族厚生年金は繰り下げによる増額の対象とはなりません。そのうえ、共働き夫婦の場合は、ご自身の年金繰り下げにより遺族厚生年金を受け取れなくなるケースもあります。

●繰り下げ受給の注意点3:在職老齢年金により停止された年金は繰り下げできない

在職老齢年金は65歳以降も厚生年金に加入して働きながら受け取る年金です。ただ、厚生年金と同時に受け取る給与の金額によっては年金の一部がカットされてしまうしくみがあります(2024年度は年金と月給や賞与の合計が50万円を超えると超えた額の半額の年金がカットされる)。在職老齢年金によりカットされた年金は、繰り下げによる増額の対象とはなりません。

自分の年金額を確認しておこう

繰り下げ受給には注意点もあるものの、年金を確実に増やす方法に違いありません。65歳からの年金額が仮に月15万円なら、70歳まで繰り下げると月21.3万円、75歳まで繰り下げると月27.6万円に増える計算です。そして、生涯にわたって増えた年金を受け取ることができます。繰り下げ受給は、年金額に不安があるならまず活用すべきでしょう。

もっとも、繰り下げ受給により、どの程度年金が増えるのかは、ご自身の年金額によって異なります。毎年の誕生月に届く「ねんきん定期便」のうち、50歳以降のねんきん定期便には、今のまま60歳まで加入して65歳からもらえる年金額や、それを70歳まで繰り下げたときの年金額が記載されていますので、ぜひチェックしてみましょう。ネット版の「ねんきんネット」でも確認できます。

また、ねんきん定期便にあるQRコードから「公的年金シミュレーター」を利用すると、生年月日を入力するだけで将来の年金見込み受給額がわかるほか、年収・就労完了年齢・受給開始年齢を変えて簡単に試算することもできます。

まずはご自身の年金見込み額を試算した上で、少ないと感じる場合はどれくらいの年金額ならご自身にとって望ましいのか、繰り下げ受給でもらえる年金額を試算してみるといいでしょう。ご自身にとって望ましい年金額の目処をたてておくことも大切です。
また、繰り下げ受給をしたことによるご自身の影響は個別に確認が必要です。年金事務所などで相談すると、自分の場合を教えてくれますので、ぜひ相談してみましょう。

内田英子 FPオフィスツクル 代表

教育費から保険、住宅、資産形成、キャリア、相続までライフプランと照らし合わせながら幅広い視点で家計を診る家計の総合医。ライフワークは金融教育。ライフプランシミュレーションで課題を整理し、望まない資金流出を避け、合理的な資産配置で生涯可処分所得を増やしながら望ましい未来をつくるお手伝いをしています。

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