25/06/19
会社員「遺族厚生年金」にはないが、公務員「遺族共済年金」には加算があるってほんと?

大切な家族が亡くなった後の生活を支える遺族年金。みなさんは、家族のもしもの事態に際して、もらえる金額を知っていますか。実は、国家公務員や地方公務員および私立学校の教職員としての職歴がある人の家族は、遺族厚生年金のほかにもう一つ、見落としている年金があるかもしれません。
被用者年金制度は2015年10月から「厚生年金」に一元化
日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は全員、公的年金制度に加入することで、保険料を納付した期間に応じた「基礎年金」を将来受け取ることができます。
さらに、会社員や公務員等の被用者は、2階部分の「厚生年金」を受け取ることができますが、2015年9月以前はこの被用者年金制度は4つ(国家公務員共済組合、地方公務員等共済組合、私立学校教職員共済、厚生年金)に分かれて運営が行われてきました。
<公的年金制度の仕組み>

国家公務員共済組合連合会「共済年金は厚生年金に統一されます」より
2015年10月1日以降に亡くなった場合には遺族厚生年金が支給
「遺族厚生年金」は、厚生年金保険の被保険者もしくは被保険者だった人が亡くなった場合に、故人によって生計を維持されていた遺族に支給されるものです。一元化前の共済加入期間がある国家公務員や地方公務員および私立学校の教職員が、2015年10月以降に亡くなった場合もまた、遺族厚生年金が支給されます。
●遺族厚生年金の支給要件
遺族厚生年金を受け取るためには、次のいずれかの支給要件を満たさなければなりません。
1. 厚生年金保険の被保険者である間に死亡した
2. 厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡した
3. 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている人が死亡した
4. 老齢厚生年金の受給権者であった人(保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある人に限る)が死亡した
5. 保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある人が死亡した
●遺族厚生年金の年金額
遺族厚生年金の額は、原則として、故人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3です。在職中に亡くなった場合等においては、最低保障として300月(25年)とみなして計算が行われます。
なお、65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある人が、配偶者の死亡で遺族厚生年金を受け取るケースでは、次の2つを比較して高い方の金額です。遺族配偶者の老齢厚生年金の額に相当する部分は支給されません(支給停止)。
①死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額
②死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生(退職共済)年金の額の2分の1の額を合算した額
一元化前に公務員等の期間がある人には「職域部分」が加算
2015年10月の一元化にあたっては、「職域部分」と呼ばれる共済年金独自の3階部分の給付が廃止され、新たに「年金払い退職給付」と呼ばれる制度が設けられました。
●遺族共済年金(経過的職域加算額)とは?
年金払い退職給付は、将来の自分の年金給付に必要な原資を自分の保険料で積み立てる、企業年金的な性格を有するものであり、その半分は有期年金となります。一方、公的年金(共済年金)の一部だった職域部分は、すべて終身年金です。
そこで、一元化前の共済加入期間がある人が2015年10月以降に亡くなった場合、遺族厚生年金に加えて、従来の職域部分に相当する「遺族共済年金(経過的職域加算額)」が経過措置として支給されています。
なお、公務災害(通勤災害を除く)による死亡の場合には、終身年金の「公務遺族年金(年金払い退職給付)」が支給されるため、遺族共済年金(経過的職域加算額)の支給は行われません。
●支給対象の遺族は遺族厚生年金と同じ
遺族共済年金(経過的職域加算額)がもらえる遺族の範囲は、故人に生計を維持されていた配偶者および子、父母、孫、祖父母の順で、遺族厚生年金と同じです。
子および孫については、故人の死亡当時、18歳に達した日以後の最初の3月31日までの間にあって未婚、または20歳未満で障害等級が1級または2級の障害の状態にあって未婚である必要があります。
また、夫や父母、祖父母は、故人の死亡当時に55歳以上でなければならず、(遺族基礎年金の受給権を有する夫を除いて)60歳に到達するまで支給は行われません。
遺族共済年金(経過的職域加算額)の年金額はいくら?
遺族共済年金(経過的職域加算額)は、原則として、退職共済年金(経過的職域加算額)もしくは障害共済年金(経過的職域加算額)の4分の3(2025年5月時点)の金額です。在職中に加入期間が300月未満で亡くなった場合には、300月とみなして計算が行われます。
「退職共済年金(経過的職域加算額)」の金額は、「ねんきん定期便」のほか、年金受給者であれば「年金証書」や「年金額改定通知書/年金支払通知書」にも記載されているので、家族で一度確認をしてみるとよいでしょう。
<59歳を除く50歳以上のねんきん定期便(裏面)>

日本年金機構「「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド」より
2015年10月から遺族共済年金(経過的職域加算額)は縮小
遺族共済年金(経過的職域加算額)を算出する際に用いられる「4分の3(75.0%)」の乗率は、2025年9月30日までに死亡(給付事由が発生)した場合に適用されます。2025年10月1日以降は、「2分の1(50.0%)」となる2034年10月1日に向けて、段階的に縮小される点に注意してください。
<給付事由発生日別の支給割合>

筆者作成
遺族年金を反映した家計収支の見通しを立ててみよう
今回は、2015年9月以前に、国家公務員や地方公務員および私立学校の教職員として共済加入期間のある人や、家族が知っておきたい遺族年金の話を解説しました。会社員にはない、旧3階部分の遺族共済年金(経過的職域加算額)の手続きは、2階部分の遺族厚生年金の請求手続きをもって行われるため、その存在を見落としている人も多いようです。大切な家族が亡くなった後の家計に不安を抱いている人は、ファイナンシャルプランナーとともに、遺族年金を適切に反映した家計収支の見通しを一度作成してみませんか。
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神中 智博 ファイナンシャルプランナー(CFP®)
1992年宮崎県生まれ。関西学院大学会計大学院を修了後、NTTビジネスアソシエ西日本で、NTT西日本グループの財務や内部統制等の業務に従事。2022年10月に兵庫県神戸市で独立系FP事務所ライフホーカーを開業し、現在に至る。家計相談に加えて、公的年金や確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)を活用した資産形成に関するテーマを中心に、執筆・講演活動も展開。「老後不安バスター」として、だれもが老後に向けて自信を持てる社会を目指して奮闘している。CFP®(日本FP協会認定)の他、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、1級DCプランナー、企業年金管理士(確定拠出年金)、一種外務員資格等を保有。
X(旧Twitter)→https://twitter.com/lifehawker

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