25/06/14
年金機構「赤い封筒」放置で起こる「深刻な事態」

国民年金保険料を払わず放置していると、いくつかの段階を経た後に「赤い封筒」が届きます。この赤い封筒を甘く見てはいけません。これを無視して国民年金保険料の滞納を続けていると、財産の差押えになるかもしれないのです。
今回は国民年金保険料を未納のまま放置した末の深刻な事態について、どのようなことが起こるのか順を追って解説します。
20歳以上60歳未満は国民年金の加入が義務
日本に住む20歳以上60歳未満の人はすべて国民年金に加入することが義務になっています。就職すれば厚生年金に加入しますが、厚生年金の加入者は国民年金の第2号被保険者となり、厚生年金保険料を支払います。厚生年金保険料には、国民年金保険料が含まれています。
第2号被保険者に扶養されている専業主婦やパート勤めの人は第3号被保険者となりますが、国民年金保険料は支払う必要がありません。
そして、自営業者や個人事業主、フリーランス、無職、学生は第1号被保険者となり、国民年金保険料を支払う必要があります。
会社員や公務員は厚生年金保険料が給与天引きされるので未納はほぼ発生しません。しかし、第1号被保険者は自分で国民年金保険料を納める必要があるため、滞納するとペナルティーを受けることになります。
国民年金保険料を払わないとどうなる?
国民年金保険料を滞納すると公的年金に影響を与えます。老後の生活を支える老齢基礎年金は、国民年金保険料の未納が続き受給資格期間が10年に満たないと受給できなくなります。さらに障害年金や遺族年金も受け取れない場合があるので注意が必要です。
また、国民年金保険料には納付期限があります。その期限は納付対象月の翌月末日です。納付期限までに国民年金保険料を支払う必要がありますが、滞納者にはペナルティーが発生します。その場合、どのような扱いになるのか順を追って見ていきましょう。
(1)納付勧奨の実施
国民年金保険料を納付期限までに支払わない人には「納付勧奨」を行います。納付勧奨では、日本年金機構や委託された民間事業者が電話や文書により納付の案内を行います。
(2)催告状の送付
納付勧奨を実施してもなお国民年金保険料を支払わない人には「催告状」を送ります。催告状とは「国民年金未納保険料納付勧奨通知書」のことで、圧着はがきで届く通知書です。
(3)特別催告状の送付
催告状を送っても国民年金保険料を支払わない人には「特別催告状」が送られます。特別催告状は、最初は青い封筒、次は黄色い封筒、なおも滞納していると赤色(ピンク)の封筒で届きます。この段階まで来ると滞納はかなり深刻な状況になっています。
(4)最終催告状の送付
特別催告状が届いても無視して国民年金保険料を支払わない場合、「最終催告状」が送られます。最終催告状に記載された期限までに国民年金保険料を支払わない場合、強制徴収を行う旨が記載されています。
(5)督促状の送付
最終催告状に記載された期限を過ぎても無視していると、今度は「督促状」が届きます。督促状は本人のほか、連帯納付義務者にあたる世帯主や配偶者にも届きます。
督促状にも納付期限が記載されていますが、その期限までに納付がない場合、国民年金保険料には延滞金が上乗せされます。それだけでなく、財産の差押えの準備に入ります。
(6)差押予告通知書が届く
督促状を無視していると最終段階の財産差押えが実施されますが、差押えの前に「差押予告通知書」が届きます。この段階まで来たら早急に年金事務所へ相談しましょう。
(7)財産の差押えの執行
差押予告通知書が届くと財産調査が行われ、その後、差押えが執行されます。差押えは本人だけでなく連帯納付義務者も対象となります。
日本年金機構による令和6年度(2024年9月末時点)の「国民年金保険料強制徴収の実施状況」によると、(4)の最終催告状の送付件数が10万3194件、(5)の督促状の送付件数が5万8666件、そして(7)差押えの執行件数は1万909件となっています。
最終催告状が送られているのは約10万件ですが、その中の約1万件が差押えに至っています。ただ、差押えに至るまでに何度も対処するタイミングはあります。赤い封筒は決して放置してはいけません。
赤い封筒が来る前にやるべきこと
国民年金保険料が払えず放置して赤い封筒を受け取るまでになると、財産の差押えが待っていますが、そうなる前にできることがあります。
●国民年金保険料の免除または猶予の手続きをしよう
国民年金保険料が払えなくなった場合、放置するのではなく役所の国民年金担当窓口か年金事務所で免除または猶予の手続きをしましょう。経済的事情などで国民年金保険料が払えない人のために、保険料免除制度・納付猶予制度が用意されています。
「保険料免除制度」には全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4種類があり、申請すると前年所得に応じて免除される国民年金保険料の金額が決まります。
「納付猶予制度」は20歳以上50歳未満の人が利用できる制度で、前年所得が一定額以下のときに承認されると利用できます。
免除の場合、免除期間も年金額に反映され、年金の一部を受け取れますが、猶予の場合は年金額に反映されません。とはいえ、免除期間と猶予期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれます。また10年以内であれば追納も可能です。
●学生は学生納付特例制度を利用しよう
学生でも20歳になれば国民年金保険料を納めなければなりません。しかし、十分な収入がないと納付は厳しいでしょう。その場合、役所の国民年金担当窓口または年金事務所で「学生納付特例制度」の手続きをしましょう。必要書類の郵送や「ねんきんネット」でも申請できます。申請して承認されると、在学中は国民年金保険料の納付が猶予されます。
国民年金保険料の未納・放置はNG
国民年金保険料を支払わず放置していると特別催告状が届きます。中でも赤い封筒が届いたときはかなり深刻な状況で、なおも放置していると最終的には財産の差押えが執行されます。保険料が払えないときは放置せず、保険料免除制度または納付猶予制度、学生は学生納付特例制度の申請をしましょう。
特別催告状や最終催告状、督促状が届いたときは決して放置してはいけません。必ず免除や猶予の手続きをするか、年金事務所へ相談しましょう。
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前佛 朋子 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2006年よりライターとして活動。節約関連のメルマガ執筆を担当した際、お金の使い方を整える大切さに気付き、ファイナンシャル・プランナーとなる。マネー関連記事を執筆するかたわら、不安を安心に変えるサポートを行うため、家計見直し、お金の整理、ライフプラン、遠距離介護などの相談を受けている。

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