21/11/30
離婚したら年金はどうなる? 分割でどのくらいもらえるのか
離婚するときには、老後の年金のことも考えておきましょう。専業主婦やパートなどで仕事をセーブしていた人は、そのままでは年金が少なくなります。しかし、配偶者から年金分割してもらうと、年金を増やせます。今回は離婚時の年金分割について説明しますので、参考にしてください。
離婚時の年金分割とは?
年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金記録(保険料の納付実績)を、離婚時に夫婦で分け合う制度です。
●年金分割が必要な理由
たとえば、会社員の夫に扶養されている妻は、厚生年金に加入していないため、老後の年金が少なくなってしまいます。老後も夫婦が一緒に生活する前提なら、妻の年金が少なくても問題ないかもしれません。しかし、離婚して別々に生活するとなると、年金の少ない妻は困るでしょう。このような理由から、離婚時に年金分割ができるようになっています。
●年金分割している夫婦の割合
厚生労働省年金局がまとめた「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2019年度(令和元年度)の離婚件数が21万3349件であるのに対し、年金分割の件数は2万9391件です。離婚する夫婦の約14%が年金分割をしています。
●年金分割の種類
年金分割には、3号分割と合意分割の2種類があります。
筆者作成
3号分割と合意分割は、どちらか一方しか請求できないものではなく、両方を請求可能です。3号分割ができるのは主に専業主婦(夫)やパートの人ですが、共働きでも収入に差があれば、合意分割ができます。
●年金分割の手続き方法
年金分割を行う場合は、離婚してから2年以内に、年金事務所での手続きが必要です。3号分割の場合には、分割してもらう側のみで手続きできます。合意分割の場合には、合意を証明できる書面(公正証書、公証人の認証付きの年金分割合意書、調停調書、審判書など)を用意するか、もしくは夫婦一緒に年金事務所に行く必要があります。
年金分割で年金はどれくらい増える?
公的年金は国民年金と厚生年金の2階建てですが、年金分割により分割できるのは厚生年金のみです。厳密に言うと、厚生年金のうち婚姻期間中に保険料を払った部分のみが分割対象になります。相手の年金を半分もらえるわけではありません。
●年金分割で増える年金は月3万円程度
「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金分割を受ける側の年金分割前後の受給額(老齢基礎年金含む)の月額平均は、分割前が5万3405円、分割後が8万4056円です。平均で1か月あたり約3万円増加しています。
ちなみに、令和元年度の厚生年金保険(第1号) 受給権者平均年金月額は14万4268円です。婚姻期間中ずっと夫に扶養されていた妻は、たとえ離婚時に年金分割をしても、平均レベルの年金額には届かないケースが多くなります。
年金分割の注意点
年金分割する際、特に気を付けておきたいのは、以下のような点です。
●離婚後2年以内に年金事務所に行かなければならない
年金の受給開始がまだかなり先であっても、離婚後2年以内に年金事務所に行って手続きしておく必要があります。夫婦間で年金分割の合意をしていても、年金事務所で手続きしていなければ、年金分割は受けられません。
●相手の死亡後は1か月以内に手続きが必要
離婚後2年経過していなくても、年金分割する側が死亡して1か月を経過したら、年金分割の手続きができなくなります。別れた配偶者が亡くなっても、すぐに連絡が来ない可能性もあるでしょう。2年の猶予期間があるとはいえ、離婚後速やかに手続きしておくのがおすすめです。
●振替加算が停止になることも
65歳以上の妻で、会社員だった夫がいる人は、老齢基礎年金に振替加算が上乗せされているケースがあります。振替加算は離婚しても継続して受けられます。ただし、年金分割で厚生年金記録を分けてもらうと、振替加算の要件となっている厚生年金被保険者期間(240か月未満)を超えてしまい、加算が停止されることがあります。該当する人は、振替加算と年金分割のどちらが有利になるか確認してから手続きするのがおすすめです。
まとめ
離婚するときに年金分割をすれば、老齢厚生年金を増やすことができます。ただし、年金分割をしても、年金はそれほど増えません。老後の安心のためには、自分の年金を増やすことも考えましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
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