21/12/07
年金保険料の未納を続けた人は末路が悲惨
自営業者等が払う国民年金保険料は月16,610円(令和3年度)。支払いが厳しいと感じることもあると思いますが、もし払わなかったらどうなるのでしょうか?
今回は、国民年金の未納者がどれくらいいるのか、また、未納を続けた場合にどうなるかを説明します。年金未納のデメリットを理解し、払えない場合には対策をとっておきましょう。
国民年金未納の人はどれくらいいるのか?
国民年金未納者になってしまうのは、主に自営業者やフリーランス(第1号被保険者)です。会社員(第2号被保険者)は給料から天引きされる厚生年金保険料に国民年金保険料も含まれているため、未納にはなりません。なお、会社員の配偶者である専業主婦等(第3号被保険者)は、国民年金保険料の支払義務を免除されています。
厚生労働省の「国民年金の加入・保険料納付状況」によると、令和2年度の公的年金加入者は約6,740万人で、このうち第1号被保険者は約1,449万人となっています。また、第1号被保険者のうち未納者(24か月以上未納)は約115万人です。未納者の割合は、公的年金加入者全体でみれば1.7%、第1号被保険者のうちでは7.9%で、決して多いわけではありません。
ただし、ここでいう未納者には、保険料免除・猶予されている人は含まれていません。第1号被保険者のうち保険料を免除されている人・一部払っている人は、次のグラフのとおり約4割です。
●国民年金第1号保険者の内訳
厚生労働省「国民年金の加入・保険料納付状況」(令和2年度)より筆者作成
ところで、国民年金保険料は納期限から2年は払うことができます。平成30年度分の保険料のうち、最終期限の令和2年度までに納付された保険料の割合(最終納付率)は77.16%というデータもあります。
年代別の最終納付率は以下のグラフのとおりで、概ね若い世代ほど納付率が低くなっています。
厚生労働省「国民年金の加入・保険料納付状況」(令和2年度)より抜粋
年金未納を続けたらどうなる?
第1号被保険者のうち1割弱が未納者で、本来納付されるべき保険料のうち2割強が払われていないことがわかりました。年金を払っていない人も一定数いますが、くれぐれも安心しないようにしましょう。年金未納を続けると、以下のようなデメリットがあります。
① 老後の年金が減ってしまう
国民年金からもらえる老齢基礎年金の年間の受給額は、納付した年金保険料に比例します。保険料の納付額が少ないと、受け取る年金も少なくなってしまいます。なお、老齢基礎年金を受給するには、少なくとも10年の納付済期間(※免除等の承認を受けた期間を含む)が必要です。納付済期間が10年に満たない場合には、全く年金がもらえません。
② 障害年金や遺族年金ももらえないかも
国民年金からもらえるのは老齢基礎年金だけではありません。障害者になったときに受給できる障害基礎年金や、亡くなったときに遺族に支払われる遺族基礎年金もあります。障害基礎年金、遺族基礎年金をもらうには、全加入期間の3分の2以上の納付済期間が必要です。未納期間があると、障害年金や遺族年金も受け取れない可能性があります。
③ 財産を差押される可能性も
国民年金保険料の支払いは任意ではなく、義務です。保険料を払えるだけの財産があるのに払わない人に対しては、強制徴収として最終的に差押が行われます。強制徴収は控除後所得 300 万円以上かつ未納月数7か月以上の滞納者を対象に行われており、平成30年度には約7千件、令和元年度には約9千件の差押が実施されています。
今からでも年金を払った方がいい?
年金未納を続けてしまった人の中には、「今から払っても遅いのでは?」「払い損になるのでは?」などと考える人も多いでしょう。しかし、年金を払うのに遅すぎるということはありません。納付可能な国民年金保険料は、今からでも納付することをおすすめします。
●老後の年金は増やせる
国民年金の加入期間は20歳から60歳までとなっており、保険料を納付できるのは原則として60歳までです。ただし、今から60歳まで払っても納付済期間が10年に届かない人も、あきらめる必要はありません。国民年金には任意加入制度が設けられており、納付済期間が足りていない場合には、最長70歳まで保険料を納められます。少なくとも60歳未満の人は、まだ年金をもらえるチャンスはあります。
●老後の年金は10年で元が取れる
老齢基礎年金は、10年程度受給すると元が取れる計算になります。日本人の平均寿命は男性も女性も80歳を超えていますから、払い損になる人は多くはありません。老齢基礎年金は一生涯受け取れる終身年金です。たとえ年金額が少なくても、長生きすれば十分得することになります。
●障害年金・遺族年金は1年継続して払えばOK
年金を払ってなくて、障害年金や遺族年金が受けられない人には、特例による救済制度があります。障害基礎年金は、初診日が2026年(令和8年)4月1日前の場合、初診日がある月の前々月まで直近1年間の保険料に未納がなければ受給できます。同様に遺族基礎年金も、死亡日が2026年(令和8年)3月末日までの場合には、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間の保険料に未納がなければ受給可能です。今からでもきちんと保険料を納付すれば、もしもの場合の安心も得られます。
国民年金の支払いが困難な場合には?
所得が少ないなどの理由で国民年金保険料の納付が厳しい場合、申請により保険料の免除や納付猶予が受けられます。免除等には要件がありますので、市町村役場の窓口や年金事務所で相談してみましょう。免除等の承認を受けると、次のようなメリットがあります。
●納付済期間にカウントされる
申請により免除等を受けた場合には、未納にはならず、納付済期間に算入されます。年金額は少なくなりますが、全額免除の場合でも全額納付した場合の2分の1の年金が受給できるので、未納のまま放置しておくよりよっぽどマシです。
●10年間追納が可能
国民年金保険料は、通常は納期限から2年の間しか納付できません。しかし、免除等の承認を受けている場合には、納期限から10年間追納ができます。今払えなくても、10年以内の余裕ができたタイミングで払うことが可能になります。
老後資金は年金プラスアルファの準備が必要
老齢基礎年金は、保険料を40年間払い続けた人でも年間78万900円(令和3年度)。自営業者・フリーランス等で厚生年金のない人は、年金がこれだけでは安心できません。まずは国民年金保険料をきちんと納めた上で、以下のような老後資金対策もあわせて検討しましょう。
●付加年金に入る
付加年金は、国民年金保険料に月400円の付加保険料を上乗せして払うことにより、老齢基礎年金の受給額を増やせる制度です。付加年金に加入していると、「200円×付加保険料納付月数」の年金額が一生涯もらえます。2年受給すれば払った保険料の元が取れるので、今からでも加入しておくのがおすすめです。
●国民年金基金に入る
国民年金基金は、自営業者等の年金を上乗せできる制度です。国民年金基金では、終身年金を基本に確定年金を組み合わせ、自由に年金を設計できます。なお、国民年金基金の保険料には付加年金が含まれているため、付加年金との併用はできません。
●iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)に入る
iDeCoは税制優遇を受けながら老後資金を積み立てできる制度です。iDeCoなら自分で運用して年金を増やすこともできます。iDeCoは付加年金や国民年金基金と併用できますが、毎月の掛金の上限は6万8000円となります。
まとめ
国民年金保険料の未納を続けると、老後にもらえる年金が少なくなるほか、もしもの場合の障害年金、遺族年金にも影響が出てしまいます。気付いた時点で年金保険料を納めれば、デメリットを最小限にできます。免除等の申請もできることも知っておきましょう。
【関連記事もチェック】
・年金額を年10万円増やすには、年収をどのくらい上げる必要があるのか
・年金を月30万円もらえる年収はいくら?
・生活保護と年金のダブル受給は可能だが、いくらもらえるのか
・30歳・40歳・50歳で早期リタイアしたら、将来の年金はいくら減る?
・離婚したら年金はどうなる? 分割でどのくらいもらえるのか
森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう