22/09/04
【図解】年金が年100万から500万円まで年10万円増えるごとに手取り額はいくら増える?
老後にもらえる年金からは、税金や社会保険料を納める必要があります。税金や社会保険料の額は、もらえる年金の額によって変わるため、それに合わせて年金の手取り額も変わってきます。では、年金額面が年100万円から500万円まで年10万円増えるごとに、年金の手取り額はいくら増えるのでしょうか。計算結果をご紹介します。
年金額面が年100万円から500万円まで増えると手取りはどうなる?
年金額面が増えることによる手取り額の変化をグラフでみてみましょう。試算の条件は次のとおりです。
【条件】
・東京都文京区在住・65歳・独身のモデルケース
・所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみで計算
※税金・社会保険料は他の所得・年齢・家族構成・お住まいによって変わりますので、あくまでご参考です。
●年金年100万円〜500万円までの手取り額の推移
(株)Money&You作成
年金額面が増えるほど、年金の手取り額も増えます。しかし、手取り額は年金額面ほどには増えていません。年金額面が増えると、税金や社会保険料の控除額も増えていくからです。
控除される税金・社会保険料の内訳を示したのが、次のグラフです。
●年金年100万円〜500万円までの手取り額と控除額の内訳
(株)Money&You作成
「所得税や住民税が多い」というイメージがあるかもしれませんが、年金から控除される金額でもっとも多いのは、国民健康保険料です。
●年金、手取り、税金、社会保険料の推移
(株)Money&You作成
控除額の内訳をみても、国民健康保険料が圧倒的に高いことがわかります。次いで住民税です。なお、今回の試算の条件になっている文京区の場合、扶養親族等のいない方は、年金額面155万円までは住民税非課税世帯です。
今回、年金が年500万円の場合まで計算しましたが、厚生労働省「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金額が年300万円未満(月25万円未満)の年金受給者が98.2%となっています。したがって、年金額面の85%〜90%程度が手取りになる人がほとんど、というわけです。
手取りの年金を増やす節税3選
年金生活をするにあたっても、手取りはなるべく増やしたいもの。そのために取り入れたい3つの節税方法を紹介します。節税することで所得税や住民税を減らすことができれば、その分手取りが増えます。
●年金を増やす節税1:医療費控除
医療費控除は、1年間に負担した医療費が多くなったときに、確定申告することで所得を減らし、所得税や住民税を節税できる制度です。
医療費控除の控除額は、次の計算式で求めます。
【医療費控除の計算式】
・所得200万円以上の場合
(1年間の医療費の合計額-保険金や公的給付の補てん金額)-10万円
・所得200万円未満の場合
(1年間の医療費の合計額-保険金や公的給付の補てん金額)-所得額の5%
※上限200万円
1年間の医療費の合計から、医療保険や健康保険などから受け取ったお金を引いた額が10万円超(所得200万円以上)・所得額の5%超(所得200万円未満)の場合、医療費控除が受けられます。
「医療費控除は10万円から」などと覚えている人も多いでしょう。しかし、「所得200万円未満の場合」に注目してください。年金生活者の場合、所得200万円未満の場合が多いので、10万円ではなく「所得額の5%」が適用される方が多いのです。
たとえば、所得が140万円ならば、その5%は7万円。つまり年間7万円を超えて医療費がかかっていれば医療費控除が活用できるのです。年金生活者の場合、年間の医療費が10万円以下だったとしても、医療費控除で節税できる可能性がありますので、ぜひチェックしてください。
●年金を増やす節税2:セルフメディケーション税制
セルフメディケーション税制は、薬局やドラッグストアで対象の市販薬(OTC医薬品)を購入したときに、確定申告することで税金が節税できる制度です。
セルフメディケーション税制の控除額は、次の計算式で求めます。
【セルフメディケーション税制の控除額】
年間の対象市販薬の購入額−1万2000円
※上限8万8000円
つまり、年間で最大10万円分まで対象市販薬を購入した場合に控除が受けられるというわけです。対象の市販薬には、外箱に「税控除対象」などとマークが記されているほか、レシートなどにも記載されます。
また、セルフメディケーション税制を利用するには、所定の健康診断を受診する必要があります。以前は健康診断の証明書を確定申告の際に提出する必要がありましたが、2021年分の確定申告からは提出不要になっています。
なお、医療費控除とセルフメディケーション税制は、併用することができません。税金がより減らせる制度を選んで確定申告しましょう。
●年金を増やす節税3:ふるさと納税
ふるさと「納税」とありますが、実際には寄付をする制度です。自分で選んだ自治体に寄付をすると、2000円を超える金額を所得税・住民税から控除できます。そのうえ、寄付金の3割を上限とする返礼品(お礼の品)がもらえます。返礼品は食料品、日用品、雑貨など実にさまざまあります。
また、ふるさと納税では、「子育て」「医療」「農業」など、寄付金の使い道を選ぶことができます。自分の納めた寄付金が社会に役立っていることが実感できるでしょう。
もっとも、ふるさと納税の自己負担が2000円で済む寄付額には、上限があります。
●自己負担2000円となる寄付金上限額の目安
(株)Money&You作成
自己負担2000円となる寄付金上限額は、年収や家族構成によって変わります。
たとえば、年金額面が250万円の65歳以上の独身の方の場合、ふるさと納税の上限額は2万4000円で、その3割、7200円相当の返礼品がもらえます。自己負担2000円で7200円相当ですから、ふるさと納税は利用した方がお得だとわかります。寄付金の使い道も選べて政治にも参加できますので、ぜひ活用しましょう。
まとめ
年金額面が年100万円から500万円まで年10万円増えるごとに、手取り額はいくら増えるかを紹介してきました。年金額面から控除される税金・社会保険料のうち、もっとも負担が大きいのは国民健康保険料でした。医療費控除やセルフメディケーション税制、ふるさと納税を利用することで節税し、手取りを増やすことができますので、ぜひ活用していきましょう。
今回の内容は動画でも紹介しています。ぜひご覧ください。
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頼藤 太希 マネーコンサルタント
(株)Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、など書籍100冊、累計170万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。X(旧Twitter)→@yorifujitaiki
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