22/11/03
年金「早くもらいすぎ」に注意!繰り上げ受給の注意点を全部解説

老齢年金は原則65歳から支給開始となりますが、希望すれば60歳以降前倒しでもらう「繰り上げ受給」が可能です。年金を早く受け取れるのは嬉しいかもしれませんが、繰り上げ受給には注意しておかなければならない点が多々あります。今回は、繰り上げ受給の13の注意点について説明しますので、参考にしてください。
年金繰り上げ受給の注意点1: 一生涯減額された年金が支給される
繰り上げ受給では、1か月繰り上げることに年金が0.4%減額になります。仮に60歳まで繰り上げると、減額率は24%です。一度繰り上げすると、減額した年金額が確定し、一生涯その金額が支給されることになります。長生きした場合には、65歳から受給する場合と比べて、トータルでもらえる年金額が少なくなる可能性があります。
年金繰り上げ受給の注意点2:繰り上げした年金の支給は請求の翌月分から
繰り上げ受給をするには、年金事務所または年金相談センターで「老齢厚生年金・老齢基礎年金支給繰上げ請求書」を提出して手続きする必要があります。年金の支給が始まるのは、請求の翌月分からです。
年金繰り上げ受給の注意点3:年金は一度繰り上げすると取り消しできない
年金の繰り上げは、一度請求すると取り消しできません。年金は減額された額で確定するので、やはりもっと多くもらいたかったと思っても後の祭りです。
年金繰り上げ受給の注意点4:年金を繰り上げすると国民年金の任意加入・追納は不可
480か月分の国民年金保険料を払いきっていない場合、60歳以降国民年金に任意加入したり、未納分を追納したりして年金を増やせます。ただし、年金の繰上げ請求をした場合には、それ以降国民年金の任意加入や保険料の追納はできません。
年金繰り上げ受給の注意点5:共済組合の年金も一緒に繰り上げになる
老齢基礎年金と老齢厚生年金は原則として同時に繰り上げする必要があります。公務員等で共済組合からもらえる老齢厚生年金がある人は、共済組合の老齢厚生年金も同時に繰り上げになります。
年金繰り上げ受給の注意点6:厚生年金基金からの年金も減額になるかも
厚生年金は企業年金の一種で、公的年金に上乗せする給付を行うものです。厚生年金基金からもらえる年金がある場合、年金繰り上げにより厚生年金基金からの年金も減額される可能性があります。
年金繰り上げ受給の注意点7:雇用保険の給付と調整がある
60代前半には、雇用保険からの給付と年金の両方を同時にもらうことはできません。雇用保険から基本手当(失業給付)や高年齢雇用継続給付をもらっている場合、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になります。
年金繰り上げ受給の注意点8:厚生年金に加入したら老齢厚生年金が減るかも
厚生年金に加入している人や国会議員・地方議員になった人が年金繰り上げ請求した場合、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になる可能性があります。
年金繰り上げ受給の注意点9:65歳までは遺族厚生年金がもらえなくなる
60代前半では、遺族厚生年金と繰り上げした老齢基礎年金は同時に受給できません。どちらかを選ぶ必要があります。なお、65歳以降では減額率に応じた老齢基礎年金と遺族厚生年金を併給できます。
年金繰り上げ受給の注意点10:寡婦年金をもらえなくなる
寡婦年金とは、国民年金第1号被保険者として25年以上保険料を納めた夫が亡くなった場合に、妻が60代前半でもらえる年金です。繰り上げ受給をすると、寡婦年金はもらえなくなります。
年金繰り上げ受給の注意点11:障害年金がもらえなくなることも
病気やケガで障害を負った場合、初診日が65歳までなら障害年金をもらえる可能性があります。ただし、老齢年金の繰り上げ受給を請求した場合、それ以降は障害基礎年金を受給できません。障害基礎年金は老齢基礎年金よりも金額が大きくなることが多いので、病気治療中の人などは注意しておきましょう。
年金繰り上げ受給の注意点12:特別支給の老齢厚生年金の長期加入者特例、障害者特例が適用されなくなる
60代前半で特別支給の老齢厚生年金をもらっている人が、長期加入者特例(厚生年金に44年以上加入)や障害者特例(障害等級1~3級)に該当した場合、年金に加算される部分(定額部分)があります。しかし、繰り上げ受給を請求した場合には、これらの特例措置が受けられません。
年金繰り上げ受給の注意点13:特別支給の老齢厚生年金の定額部分が支給停止になる
特別支給の老齢厚生年金には報酬比例部分と定額部分があり、一部の人のみ定額部分が受け取れます。定額部分をもらっている人が繰り上げ請求した場合、定額部分が支給停止になります。
まとめ
年金繰り上げには年金受給額が減る以外のデメリットもあります。生活に困っておらず、必要性が高くない場合には、安易に繰り上げしないのがおすすめです。自分の健康状態やライフスタイルを考えて、いつから年金をもらうかを決めるようにしましょう。
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森本 由紀 ファイナンシャルプランナー(AFP)・行政書士・離婚カウンセラー
Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。法律事務所でパラリーガルとして経験を積んだ後、2012年に独立。メイン業務の離婚カウンセリングでは、自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、離婚してもお金に困らないマインド作りや生活設計のアドバイスに力を入れている。

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