24/01/30
遺族年金をもらえない人5選
遺族年金は、家計を経済的に支えていた人が亡くなったとき、その方によって生計を維持されていた遺族がもらえる年金です。
「一家の大黒柱が亡くなった…」という不安を拭ってくれる保障は大変ありがたいものです。しかし、遺族年金をもらうには、亡くなった方の年金の納付状況・遺族年金をもらう方の年齢・優先順位などの条件をすべて満たす必要があります。そのため、場合によってはもらえないケースがあります。今回はそんな、遺族年金をもらえない人5選を紹介します。
遺族年金とはそもそもどんな年金?
遺族年金とは、国民年金や厚生年金に加入している人(または加入していた人)が亡くなったとき、遺族に対して生活を保障する目的で支給される公的年金です。
亡くなった方が「自営業者」の場合は、国民年金を財源として遺族基礎年金が遺族に支払われます。一方、亡くなった方が「会社員や公務員」の場合は、厚生年金を財源として遺族基礎年金と遺族厚生年金が支払われます。つまり、遺族年金は、国民年金に加入する自営業者よりも厚生年金に加入する会社員や公務員の方が、手厚いといえます。
とはいえ、今は自営業者であっても、過去に会社員等であったということがあるかもしれません。そのような場合であれば、条件を満たしていれば遺族厚生年金が受給可能となるケースがあります。
ただ、次の5つの人については、遺族年金をもらえない場合があります。
遺族年金をもらえない人1:保険料が未納の人
亡くなった方が会社員や公務員であれば、厚生年金保険料が毎月の給料から控除されるので、保険料が未納になることはないでしょう。しかし、自営業者などの方であれば、国民年金保険料を未納にすることがあるかもしれません。そうなると、遺族年金をもらうための「保険料の納付要件」を満たさなくなり、もらえないということが起こります。
保険料の納付要件は、次のとおりです。
・亡くなった日の前々月までの保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること
・亡くなった日が2026(令和8)年3月末日までのとき、亡くなった方が65歳未満の場合、亡くなった日の前々月までの直近1年間に保険料未納がないこと
上記の保険料の納付要件が満たせない場合、遺族年金の受給はできません。
遺族年金をもらえない人2:年収850万円(所得が655万5000円)以上の人
遺族年金を受給する要件として「遺族は亡くなられた方によって、生計を維持されていた」があります。「生計維持」というのは、亡くなった方と同居していること。または別居をしていても生活費を仕送りしていたり、健康保険の扶養に入っていたりすることをいいます。
さらに、遺族が生計維持されていると認められるには、遺族の前年の収入が「850万円未満(所得が655万5000円未満)」という要件を満たす必要があります。そのため、もし遺族の年収が850万円以上であれば、生計維持の対象から外れるため、遺族年金はもらえなくなります。
遺族年金をもらえない人3:子どもがいない人
亡くなった方が、自営業であれば国民年金に加入していたことになります。その場合、遺族は遺族基礎年金(国民年金)がもらえます。また、亡くなった人が会社員や公務員であれば厚生年金に加入していたため、遺族は遺族基礎年金と遺族厚生年金がもらえます。
しかし、遺族基礎年金の受給対象になるのは「亡くなった方に生計を維持されていた子のある配偶者または子」です。子に該当するのは、18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態であるなどの条件があります。
遺族基礎年金は、一定の条件を持つ子どもを育てることを目的にしている年金です。そのため、対象となる子どもがいない場合は支給されません。
もし、亡くなった方が自営業者で、その遺族に受給対象の子どもがいない場合、遺族基礎年金はもらえません。また、亡くなった方が会社員や公務員で、その遺族に受給対象の子どもがいない場合、遺族厚生年金だけ支給されますので注意しましょう。
遺族年金をもらえない人4:55歳未満の子のない配偶者(夫)
もし、亡くなった方が会社員や公務員で、厚生年金に加入していた場合、子のない配偶者(夫)が遺族厚生年金をもらう場合は注意が必要です。
というのも、遺族厚生年金の受給対象者は、
・第1位:子のある配偶者
・第2位:子※
・第3位:子のない配偶者
・第4位:父母
・第5位:孫※
・第6位:祖父母
という順番になっています。
※子や孫は、18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方が該当します。
<遺族厚生年金の受給対象者>
日本年金機構のウェブサイトより
子のない配偶者(夫)は「第3位」の受給対象者です。しかし、子のない配偶者(夫)が遺族厚生年金をもらえるのは、厚生年金に加入していた妻が亡くなった時点で「55歳以上」である場合に限られています。しかも、遺族厚生年金の受給開始は60歳から。55歳以上という条件を満たしても、55~60歳の間はもらえませんので、注意が必要です。
ただし、夫に子どもがあり遺族基礎年金を受給できる場合、「55歳以上」であれば60歳を待たずに遺族厚生年金を受給できます。
遺族年金をもらえない人5:65歳以上の人
遺族厚生年金の受給権者が65歳以上で自身の老齢厚生年金をもらっている方が、遺族厚生年金の受給権利も持つ場合、どちらも合わせて受給できます。ただし、遺族厚生年金が全額もらえるわけではありません。遺族厚生年金から自身の老齢厚生年金に相当する額を差し引いた金額だけ支給されます。
「保険料納付」はコントロールできる
遺族年金は亡くなった方の保険料納付状況や遺族との関係により、受給できる場合、できない場合があることを認識しておきましょう。
年金の受給にはさまざまな要件がありますが、その中でも「保険料を納めてあること」については、自分でコントロールができます。もし、自営業者の方で「保険料を納めることが困難…」という場合は、未納のままにせず「国民年金保険料免除・納付猶予制度」の手続きを行いましょう。
【関連記事もチェック】
・年金受給者が確定申告した方がよい7つのケース
・お金をかけずに楽しめる「老後の趣味」10選
・定年後、年金以外の5つの収入源
・「ねんきん定期便久々に見たら大幅増額」年金額が数十万円増えている驚きの理由
・年金収入のみの場合、所得税がかからないのはいくらまで?
舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
この記事が気に入ったら
いいね!しよう