23/07/12
もらえる年金額、62歳と68歳でいくら変わる?
定年が60歳の企業が多い中で、年金の受給は原則65歳からと、5年間の空白の期間があります。この5年間の過ごし方を考える方は多いのではないでしょうか。また、年金は繰り上げ受給・繰り下げ受給することで毎月のもらえる金額が変わります。今回は老後の家計に大きな影響のある年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給と、仮に62歳・68歳からもらった場合の年金月額の違いを紹介します。
繰り上げ受給と繰り下げ受給について解説
年金は原則65歳から受給できますが、受け取る時期を60歳から75歳までの間で選べます。65歳より前(後)に受け取ると、年金額にも影響があります。
65歳を起点として、それよりも早くもらうことを繰り上げ受給といいます。繰り上げ受給をすると、1カ月繰り上げるごとに年金額は0.4%ずつ減額されます。それに対して、66歳から75歳までの間に遅らせてもらうことを繰り下げ受給といいます。繰り下げ受給をすると、1カ月繰り下げるごとに0.7%ずつ増額されます。つまり、もし60歳から受け取ると65歳の受給額から24%減、75歳から受け取ると84%増の年金がもらえます。
会社員や公務員など、老齢厚生年金と老齢国民年金がもらえる人が繰り上げ受給する場合は、原則として老齢厚生年金と老齢基礎年金を同時に繰り上げなくてはなりません。繰り下げ受給は老齢厚生年金と老齢基礎年金のどちらか片方だけを繰り下げることができます。
なお、年金の受給開始時期の変更は1度のみ。そして、年金をもらう手続きをしたら、取り消すことはできません。ですから、あらかじめ計画を立てておくことが大切です。
年金額180万円の場合、3年繰り上げ・繰り下げするとどう変わる?
では、具体的にどのくらい年金額に変化があるのでしょうか。65歳からもらえる老齢厚生年金と老齢基礎年金の合計額が180万円(月15万円)の場合で計算したいと思います。
●年齢別、年金受給額の累積金額
筆者作成
●62歳から繰り上げ受給した場合の損益分岐点は83歳
年金の受給を3歳繰り上げて、62歳から受給する場合、0.4%×36カ月=14.4%分減額になります。年金額にすると年180万円(月15万円)が154.08万円(月12.84万円)に減ってしまいます。つまり65歳からの受給に比べて、毎年25.92万円、ひと月にすると2.16万円年金額が減るのです。年金受給額の累計額を比較すると、83歳以降は、65歳から受給した時の方が、生涯で受け取れる年金額が多くなります。
●68歳から繰り下げ受給した場合の損益分岐点は80歳
一方、年金の受給を3歳繰り下げて、68歳から受給する場合、0.7%×36カ月=25.2%増額されます。年金額は年180万円(月15万円)が225.36万円(月18.78万円)に増えます。これは65歳から年金を受給する場合と比べて、年間で45.36万円、ひと月あたり3.78万円増えています。80歳以降は、68歳から受給した場合の方が、生涯で受け取れる年金額が多くなります。
年金にも税金や社会保険料がかかるため、手取りの年金額はこれよりも減ってしまいます。しかし、年金を3年繰り上げた場合と3年繰り下げた場合では、年金額がずいぶん違うことがわかるでしょう。
受給開始時期の考え方は?
年金を3年繰り上げ・繰り下げ受給した場合の年金額を具体的に見ていきました。最後にご自身の年金の受給時期を決める時に確認するポイントを3つご紹介します。
●年金受給時期のポイント①:余命
厚生労働省「簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は男性81.47歳、女性87.57歳(2021年)です。あくまでも統計情報ではありますが、今後も長生きする人が増えることを考えれば、繰り下げ受給を選んだ方がいいでしょう。何よりも、長生きできるよう健康的な生活を心掛けていきましょう。
●年金受給時期のポイント②:就労状況
60歳以降も勤務する場合、毎月の給与が入ってきます。そのため、年金をあえて繰り上げ受給する必要性が低くなります。しかも、厚生年金は最長で70歳まで加入できますので、60歳以降も働いて厚生年金に加入すれば将来もらえる年金額がさらに増やせます。65歳以降も長く働く方は積極的に年金の繰り下げ受給を視野に入れていいでしょう。
●年金受給時期のポイント③:金融資産と老後の生活費のバランス
年金の繰り上げ受給は、早くお金が受け取れる一方、生涯にわたってもらえる年金額が減額されてしまいます。それによって将来資産が底を尽きることがないように、事前に60歳時点での金融資産と生活費の概算を把握しておきましょう。金融資産にゆとりがあるならば、繰り下げ受給を検討するのがよいでしょう。
なお、年金の繰り下げ受給はあらかじめ「いつまで繰り下げ受給する」と決めておく必要はありません。そのうえ、お金が必要になったときには、最長5年分の年金をさかのぼって一度にもらうこともできます。ですから、ひとまず繰り下げておいて、お金が必要になったり、仕事を辞めたりしたときに受け取りを開始するようにすればよいでしょう。
まとめ
年金を1年間繰り下げ受給した場合、年金の受給率は8.4%増加します。投資で年利8.4%の利益を出すと考えるとリスクが高いですが、年金の繰り下げ受給ならば年金額を堅実に増やせます。上手に活用して安心して長生きできる家計を作りたいですね。
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金子圭都 ファイナンシャルプランナー(CFP︎®︎)
学生の頃、親族の死をきっかけにお金について学び、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。お金の勉強をする女性コミュニティでイベントの企画・運営に3年間携わり、のべ200人以上のお金の悩みに寄り添う。その後独立し、お金の不安を安心に変えるマネー相談を中心に活動中。FP Cafe登録パートナー。
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