23/06/18
「年収300万円世帯」が国からもらえるお金はけっこう多い
国や自治体が用意している給付金や支援制度はいろんなものがあります。「年収300万円世帯」であれば、子育て向けの給付金をはじめ、もらえる給付金が意外と多いことに気づくはずです。せっかくの給付金ですから、うっかり申請漏れのないよう、制度について目を光らせておきましょう。今回は年収300万円世帯がもらえるお金を7つ紹介します。
年収300万円世帯が国からもらえるお金①:児童手当
児童手当は、中学校卒業までの子どもを養育する人に支給される手当です。手続きは、居住する市区町村で行うことになりますが、全国一律の国の制度です。
児童手当は年に3回(毎年6月、10月、2月)支給されます。児童手当で実際に支給される月額は子どもの年齢によって以下のように決まっています。
・0~3歳未満:1万5000円
・3歳以上小学校修了前:1万円(第3子以降は1万5000円)
・中学生:1万円
なお、「第〇子」という子どもを数える場合、高校卒業まで(18歳に達してから最初の3月31日まで)の子どものみ上から数えます。
たとえば、子どもが高校生(17歳)・中学生(12歳)・小学生(8歳)の場合、支給対象は中学生(第2子・月額1万円)、小学生(第3子・月額1万5000円)となります。
しかし2年後、大学生(19歳)・中学生(14歳)・小学生(10歳)となった場合には、大学生は子どもにカウントしません。支給対象は中学生(第1子・月額1万円)・小学生(第2子・月額1万円)となります。間違いやすいところなので注意しましょう。
●児童手当支給金額の総額
児童手当の支給金額は、受け取る人の所得によって異なります。仮に、出生から中学卒業まですべて受け取った場合の1人あたりの総額はおおよそ以下のとおりとなります。
① 0歳~3歳未満:1万5000円✕36か月=54万円
② 3歳~小学校修了前:1万円✕108か月=108万円
③ 中学生:1万円×36か月=36万円
上記①+②+③=198万円
(誕生月により総額は多少前後します)
●児童手当を受け取る条件
児童手当を受け取るには、受け取る人の所得が一定金額以下であることが条件となります。両親2人のうち、「生計を維持する程度が高い人」の所得が、児童手当を受け取れるかどうかの判定基準になります。
●所得制限と所得上限限度額
内閣府のウェブサイトより
児童を養育している人の年収が300万円であれば、上記表の①(所得制限限度額)未満に該当するので、前述の支給額が支払われます。
所得が上記表の①以上②(所得上限限度額)未満の場合、特例給付となり、児童手当の金額は児童1人当たり月額一律5000円が支給されます。
また、2022年(令和4年)10月支給分から、児童を養育している人の所得が②以上となる場合、児童手当等は支給されません。
なお、児童手当の年齢制限や所得制限については見直される方針が示されています。
年収300万円世帯が国からもらえるお金②:就学援助
就学援助とは、経済的な理由で就学が困難な子のいる保護者に対して、学校で支払うさまざまな費用の一部を援助する制度です。支給の対象になる費用は、学用品費、通学用品費、学校給食費、新入学児童生徒学用品費、部活動費、校外活動費など、多岐にわたります。
●就学援助の対象となる人
就学援助の対象となる基準は、各市区町村によって多少の違いがあります。たとえば東京都中央区では、以下のいずれかに該当すれば、就学援助の対象になります。
①現在、生活保護を受けている方
②現在、生活保護を受けていないが、前年度または当該年度において生活保護が停止又は廃止された方
③現在、生活保護を受けていないが、当該年度において次のいずれかに該当する方
ア 区民税が非課税又は減免された方
イ 個人事業税が減免された方
ウ 国民年金の掛金が減免された方
エ 国民健康保険の保険料の減免又は徴収の猶予がされた方
オ 児童扶養手当を受給している方(児童手当ではありません)
カ 世帯の総所得額(給与所得控除後の金額)が基準額未満の方
(基準額は、世帯人員、世帯構成等により異なりますが、目安は以下のとおりです)
・父(35歳)、母(30歳)、子(小1)の場合:約380.4万円
・父(35歳)、母(30歳)、子(小1)、子(3歳)の場合:約434.8万円
・父(45歳)、母(40歳)、子(中3)、子(小6)、子(小3)の場合:約544.9万円
中央区のウェブサイトより
年収300万円の場合、子どもが1人であっても、就学援助の対象になります。というのも、就学援助の基準となるのは、給与所得控除後の世帯の総所得額だからです。ひとり親家庭や生活保護を受けている方だけでなく、小学生・中学生がいるご家庭なら対象になりえる制度です。
細かな要件はお住まいの地域や家族構成などにより異なりますので、対象になるかどうか、お住まいの市町村で確認しましょう。
年収300万円世帯が国からもらえるお金③:児童扶養手当
児童扶養手当は、父母が離婚したり、死亡したり、一定以上の障害を持っていたりする場合に、ひとり親世帯で子どもを育てる家庭に対して支給される手当です。対象になるのは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子ども(障害児の場合は20歳未満)で、手当がもらえるのは、子どもを世話する父母または祖父母等です。
児童扶養手当の支給額は児童の数によって異なっていますが、支給されるのは、年に6回(1月、3月、5月、7月、9月、11月)です。
児童扶養手当の支給額は、以下のとおりです。
《子ども1人あたりの月額》
・全部支給:4万3070円
・一部支給:4万3060円~1万160円
《子ども2人目からの加算額》
・全部支給:1万170円
・一部支給:1万160円~5090円
《子ども3人目からの加算額》
・全部支給:6100円
・一部支給:6090円~3050円
また、児童扶養手当の支給に該当する世帯かどうかは、扶養人数ごとの所得制限があります。また、自治体ごとで、支給額が多くなる場合、少なくなる場合があります。
●児童扶養手当の所得制限限度額
大阪市のウェブサイトより
大阪市の場合、上記の表より、年収300万円の場合は、「全部支給の所得制限限度額」に該当するのは、扶養家族が4人以上のときですが、「一部支給の所得制限限度額」には、扶養家族に関係なく該当します。
なお、児童扶養手当を受給するには、自治体の窓口での申請が必要です。請求理由ごとに書類などが異なるので、詳しくは窓口に確認しましょう。
年収300万円世帯が国からもらえるお金④:3~5歳の子どもが通う幼稚園・保育所などの無償化
年収300万円世帯が、子ども・子育て支援新制度のうち確実に対象になるのは、子どもが3~5歳の場合です。
子どもが3~5歳で通う幼稚園が子ども・子育て支援新制度の対象、保育所・認定こども園であれば、利用料が無料になります。もし、子ども・子育て支援新制度の対象外の幼稚園という場合は、月額2.57万円までが無償になります。
子どもが0~2歳の場合は、年収300万円世帯のうち、住民税非課税世帯のみが、幼稚園・保育所・認定こども園等の保育料が無償化となります。
住民税非課税世帯に該当しなくても、2人以上子どもを持つ世帯の子育て負担を軽減のため、保育所等を利用する最年長の子供を第1子とカウントして、0歳から2歳までの第2子は半額、第3子以降は無償になります。ただし、年収360万円未満相当世帯については、第1子の年齢は問いません。
保育料無償化を利用するには、お住まいの市町村から「保育の必要性の認定」を受ける必要があります。申請は、原則、通っている幼稚園・保育所・認定こども園等を経由して行います。
年収300万円世帯が国からもらえるお金⑤:高等学校等就学支援金
高校へ進学すると、高等学校等就学支援金がもらえます。高等学校等就学支援金は、国が高校などの授業料を支援してくれる制度です。支給される年額は、通う高校に応じて違いがあり、以下のとおりです。
・公立高校:11万8800円
・私立高校:39万6000円
【高等学校等就学支援金の支給額のイメージ】
文部科学省の資料より
●高等学校等就学支援金の対象となる人
高等学校等就学支援金には所得制限があります。上の図は両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合の目安で、年収が590万円以下であれば最大39万6000円、910万円以下であれば11万8800円となることを示しています。もし、年収300万円の世帯であれば、公立・私立ともに満額もらえます。
年収300万円世帯が国からもらえるお金⑥:給付型奨学金と授業料の免除
奨学金は、経済的理由で進学を諦めることのないように、学費などを支援する制度。一定の基準を満たした大学や専門学校へ通う場合に利用できます。たとえば、日本学生支援機構が行う奨学金の制度には、返済義務のない給付型の奨学金や、返済義務のある貸与型の奨学金(第一種は無利子、第二種は利子がつく)があります。
このうち、給付型の奨学金には、現金で支払われる奨学金と、授業料が減免される2つの制度があり、両方を同時に受けることもできます。支援を受けられる金額は世帯年収や家族構成により異なります。
対象となる世帯の世帯年収は、世帯で支払う住民税の金額が基準となり、3つの区分にわけられます。
・第I区分(満額支援):住民税非課税世帯の学生
・第II区分(満額の2/3支援):「市町村民税の課税標準額×6%−調整控除及び調整額」で算出した住民税額が2万5600円未満となる世帯の学生
・第III区分(満額の1/3支援):第II区分と同じ住民税の計算額が5万1300円未満となる世帯の学生
支援を受けられる年収の目安と支援額は、次の表のとおりです。
●支援を受けられる年収の目安と支援額
政府広報オンラインのウェブサイトより
上記の表より、年収300万円の世帯は、両親と子ども(高校生以上2人)の4人世帯の場合、満額の支援が受けられます。また、両親と子ども(中学生、18歳以上2人)の4人世帯の場合、満額の2/3の支援が受けられます。
家族には多様な形態があり、実際に支援が受けられるかどうかは、世帯年収だけでなく、家族構成や構成員の年齢等により異なります。
支援の対象となるか、どれくらいの支援が受けられるかは、日本学生支援機構「進学資金シミュレーター」で調べることができます。
申し込み・受給にあたっては、学校の成績が一定以上であることに加えて、面接やレポートなどによる審査なども行われます。年収の要件だけでなく、本人の「勉強しよう」という意思なども条件となります。
年収300万円世帯が国からもらえるお金⑦:高額療養費制度
高額療養費制度は、医療費の自己負担額が一定の金額を超えたとき、その超えた分が支給される制度です。70歳未満の場合、5つの所得区分ごとに、自己負担額の上限が異なります。また、直近1年間で3回以上(3か月以上)高額療養費の支給を受けている場合、4回目(4か月目)からは「多数回該当」となり、自己負担限度額がさらに減額されます。以下は、70歳未満の高額療養費一覧です。
●高額療養費制度の自己負担額(70歳未満)
厚生労働省の資料より
たとえば、年収300万円世帯では、1か月の医療費の自己負担限度額は5万7600円になります。実際に、1か月の医療費が100万円かかった場合でも、高額療養費制度があるおかげで、医療費の最終的な負担は「5万7600円」だけです。
まとめ
年収300万円世帯で子育てをしているの場合であれば、さまざまな給付金が該当します。申請については、行政から案内のあるものもあれば、自己申告が必要なものもあります。詳しくは自治体の窓口や、ホームページなどで確認しましょう。
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舟本美子 ファイナンシャルプランナー
「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」
会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。あなたに合ったお金との付き合い方を伝え、心豊かに暮らすための情報を発信します。3匹の保護猫と暮らしています。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。FP Cafe登録パートナー
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