17/03/02
確定拠出年金をもらうときの注意点
FPでありDCプランナーでもある筆者が、確定拠出年金(DC)の「企業型」にフォーカスして、初歩からわかりやすく説明していきます。
この連載を読めば、企業型DCを上手に活用できるようになります。
いよいよ最終回、確定拠出年金を受け取るときの注意点をお話します。
積み立てた年数で、もらい始めることができる年齢が違う
確定拠出年金は、「死亡したとき」「高度障害を負ったとき」以外は、60歳以降でなければ年金を受け取ることができません。
さらに、積み立てた年数によって受け取ることができる年齢が変わります。
具体的には次の表をご覧ください。
つまり、50歳を超えて積み立てを始めた場合は、60歳では資産を受け始めることができません。例えば、53歳から積み立てを始めたら、62歳以降しか受給が開始できないのです。
表にある受給開始年齢は、最も早く受給する場合で、その年齢以降であればいつからでも受給開始ができます。但し70歳までに受給開始手続きをしなければ、70歳になると自動的に一時金として支給されます。
また、60歳を超えても、年金受給している間も、運用を続けることができます。
一時金でも年金でも、または両方の併用でも受け取れる
資産の受け取りは、一時金として一括でもらうこともできますし、分割して年金として受取ることもできます。
また、一部を一時金で、一部を年金でというように併用もできます。
一時金でもらったときは、「退職所得」とみなされ、「退職所得控除」を受けることができる上に、もし控除額を上回っても、課税されるのはその2分の1となります。
計算式は以下となります。
退職所得 =(確定拠出年金一時金 - 退職所得控除額)× 1/2
退職所得控除額の計算式
積立年数 20年以下の部分:40万円 × 積立年数 [ただし最低80万円】
20年超の部分:800万円 + 70万円 ×(積立年数 - 20)
※1年未満の期間は1年に繰り上げる
例:30年間積み立てた場合、1500万円まで非課税
一方、年金でもらう場合は、「雑所得」の「公的年金等」となり、「公的年金等控除」を受けることができます。 公的年金等控除額は年齢で異なり以下となります。
例:60歳から年間70万円ずつ、資産を取り崩して年金としてもらったとしても、課税となる金額はありません。
一時金、年金、それぞれの受け取り時に注意すること
先ほど一時金は、「退職所得控除」が使えるといいましたが、前年以前14年以内に勤務先などから退職金をもらってこの控除を受けていたら、その額も合算して計算しなければなりません。
例:22歳入社、30歳から企業型確定拠出年金開始
60歳で退職金1500万円を受給(退職所得控除2060万円のため非課税)
65歳で確定拠出年金を一時金で800万円を受給した場合
1500万円 + 800万円 = 2300万円
2300万円 - 2060万円(退職所得控除) = 240万円
240万円 × 1/2 = 120万円(1000円未満切捨)
120万円が退職所得となり、以下の表から所得税が課税されます。
120万円 × 5% = 所得税6万円 + 復興特別所得税
120万円 × 10% ≒ 住民税12万円
確定拠出年金受給時に約18万円の税金がかかります。
また、分割して年金として受け取る場合は、国などからの公的年金との合算となるので、控除額の計算時には注意が必要です。加えて、確定拠出年金は振り込まれるごとに振込手数料が引かれますし、金融機関によって何回に分割できるかが異なるため、確認しなければなりません。
いつ、どのような形で受け取るかは、税金の面からいくつかシミュレーションしてみる必要があります。
まとめ
受給のタイミングと回数、他の制度とのかかわりで、税金のかかり方が大きく変わることをご理解いただけたでしょうか。
けれども、税金の制度も生き物ですから、将来もらうときの法律に左右されることは大いに考えられます。
とはいえ、この制度の一番の目的は、「老後資金の確保」だということを忘れずに、ぜひ確定拠出年金を賢く利用して、安心の老後生活を過ごしてください。
7回にわたっての「ゼロからわかる『企業型確定拠出年金』」は今回で終了です。
確定拠出年金は、「老後資金」「長期運用・少額積立」「自助努力」の3つがキーワードです。
老後は誰にでもやってきます。まだまだ先だと思わずに、早くから計画して資金を確保していくことはとても大切なことです。
もう一度、このシリーズを最初から読み返して頂いて、「確定拠出年金」を深く知ってもらえると嬉しいです。
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小野 みゆき 中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。
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