16/10/11
マッチング拠出、選択制DCって何?
FPでありDCプランナーでもある筆者が、確定拠出年金(DC)の「企業型」にフォーカスして、初歩からわかりやすく説明していきます。
この連載を読めば、企業型DCを上手に活用できるようになります。
今回は「マッチング拠出ってなに?」「選択制DCってなに?」を解説します。
マッチング拠出ってなに?
従来の退職金制度は、企業が給料とは別に退職金のための資金を積み立てて、企業全体として管理運用し、その資金から個別に退職従業員に支払うというものでした。
一方、企業型DCは、企業が掛け金全額を負担しますが、各従業員が自身で毎月運用先を指定します。つまり、各従業員が運用のリスクを負い、企業は運用のリスクを負う必要がありません。
企業の掛け金に加え、自分の給料から掛け金をさらに上乗せするのが「マッチング拠出」です。
マッチング拠出の額は、所得控除である「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、所得税・住民税が安くなります。月1万円のマッチング拠出をすると、所得税・住民税合計で税率が20%とすれば、年間2万4000円税金が安くなります。
マッチング拠出の金額と注意点
マッチング拠出をする場合、企業負担の掛け金との合計で上限額が設定されています。
(1) 企業年金が企業型DCのみの場合は5万5000円
(2) 確定給付型年金(厚生年金基金・確定給付年金など)との併用の場合は2万7500円
但し、企業負担の掛け金を超えてマッチング拠出はできません。
例えば、(1)の場合、企業負担が4万円であれば1万5000円まで拠出できますが、企業負担が1万円であれば、マッチング拠出の上限は1万円までとなります。
マッチング拠出は、DC規約に定められていないとできないので、マッチング拠出できるかわからない方は勤務先に問い合わせてください。
選択制DCってなに?
企業型DCの一種ではありますが、先ほどの企業負担とは大きく違います。
労働の対価の一部を、今までどおり給料としてもらうか、DC制度として積み立てていくかを従業員が選ぶという制度です。「生涯設計手当」という仕組みです。
例えば、選択制DC月2万円を選び、それに伴って標準報酬の等級が下がれば、月々3000円社会保険料の負担が減ります。所得税・住民税合計で税率が20%の人なら、税金は4000円安くなり、社会保険料と税金合計で月7000円の負担減です。
老後資金を確保しながら、税金や社会保険料の負担が減るのは大きな魅力です。
なお、標準報酬等級とは、毎年4月~6月の給与総額を3で割って平均を出し、その平均の額によって定めた等級のことです。等級によって、9月分から翌年8月分までの健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料が決まります。
社会保険料は会社負担がありますから、企業としても月3000円以上負担が減ることになり、多くの従業員が選択すれば、企業全体では大きな負担減額となります。
選択制DCはデメリットがある
しかし、従業員からみればデメリットもあります。
標準報酬の等級が下がれば、将来もらえる老齢厚生年金の額が少なくなりますし、障害厚生年金、遺族厚生年金の額も少なくなります。
例えば、月2万円を20年間選択制DCに振り分けると、480万円の老後資産が積み立てられ、税金や社会保険料の負担減合計は、168万円になりますが、一方で65歳からの老齢厚生年金は年約2万6000円減ります。
また、出産手当金・傷病手当金の給付日額も減額され、月1万3000円減額となります。
雇用保険関係の給付、失業時の基本手当・介護休業給付金・育児休業給付金も、給料総額が計算の基礎となるので、給料が下がることで支給日額も下がってしまいます。
例えば、育児休業給付金は選択制DCに2万円拠出の場合、最初の6ヶ月間は月1万3000円減ることになります。
以上のようなデメリットもあるということは、企業は説明する義務がありますが、選択する従業員側でも理解しておくことが必要です。
そして、自分にとって選択するメリットが大きいとわかれば、ぜひ活用するべきです。
次回は、確定拠出年金では重要な「運用」について解説していきます。
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小野 みゆき 中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP®・1級DCプランナー
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。
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